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O
plus E誌 2012年8月号掲載 |
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（注：本映画時評の評点は，上から ，，， の順で，その中間に をつけています。） |
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今月はCG，アニマトロニクスに加えて，本物も登場 |
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| | 当初は予定になかったが，映画を観てからメイン欄に格上げする気になった作品，今月はこの映画である。アラスカの極寒の地が舞台という点では，先月号の『だれもがクジラを愛してる。』と同じであるが，今回のCG造形の対象はクジラではなく，オオカミである。『トワイライト』シリーズでもお馴染みの存在ゆえ，CG/VFX技術が扱う対象としては新味に欠ける。それでも，どこまで実写で，どこまでがCGかという点が気になり，サンプルDVDを借り直して，細部を再点検したというのが，この記事の舞台裏である。
時代は特に断っていないが，現代なのだろう。舞台はアラスカのツンドラ地帯で，石油掘削現場で勤務する荒くれ男たちを乗せた飛行機が，大嵐に巻き込まれて墜落し，わずか７人の男たちだけが生き残る。墜落事故からのサバイバル物語としては，『生きてこそ』(93)を思い出す。あちらが南米のアンデス山脈が舞台の実話であったが，こちらは全くのフィクション（原作は「Ghost Walker」なる短編小説）ながら，極寒の地で過酷な大自然と向かいあう上に，野生のオオカミの襲撃にも悩まされるという設定である。
主人公は，作業員たちを野獣の攻撃から守るために雇われた狙撃手で，リーアム・ニーソンが演じている。オスカー作品『シンドラーのリスト』(93)でのシリアスな役が印象深かったが，アクション作品『96時間』（09年8月号）でのイメージチェンジが奏功し，『アンノウン』（11年5月号）でも同様に小気味良いアクション・サスペンスの主役を演じた。いま新しい主演作が来れば，必ず観てみたくなる主演男優の１人である。本作では，射撃の名手という設定なので，オオカミ相手の快刀乱麻の射撃アクションを期待したのだが，それは実現しなかった。飛行機事故とともに銃は失われてしまったからである（写真1）。後は，ほぼ徒手空拳に近い形で，自然の猛威やオオカミたちと闘うことになる……。
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| 写真1 折角の狙撃の名手も，既に銃はなし |
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| | 製作はリドリー・スコット，トニー・スコット兄弟で，監督はジョー・カーナハン。それで主演がリーアム・ニーソンとなると，『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』（10年9月号）と同じ組み合わせである。当初，別の主演男優を考えていたというが，同作のヒットから，再度リーアム・ニーソンを選ぶことになったのだろう。大作らしく「Aチーム」にはリーダーの他にも個性的な人気俳優が揃っていたが，残念ながら本作の助演陣は，ほぼ無名の俳優たちばかりである。サバイバル物語で人生模様を語るなら，女性も入れた方が物語の深みが増したと思うのだが，残る生存者6名は訳ありの荒くれ作業員だけだった。原作小説にはなくても，この点は脚色段階で変更すべきだったかと思う。
さて，問題は野生のオオカミの表現である。題名からは「灰色オオカミ」かと思うが，そうではなかった。中盤以降，かなり出番は多い。遠景で走り回る姿は，CGではなく，オオカミに似た犬を使ったのかと思った。アップの場面（写真2）は，質感からすると，CGには見えず，今月もパペットやアニマトロニクスかと想像したが，実際にその通りだったようだ。このパートの担当社は，K.N.B. EFX Groupである。
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| 写真2 これは，アニマトロニクス製の頭部か？ |
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当然CGも併用していると見てとれたが，CG/VFXの担当はDigital Dimensionである。参加人数からして，単なるオオカミ像の補強だけでなく，カナダのブリティッシュ・コロンビア州スミザースでの撮影をアラスカに見せるための加工にも，VFXはかなり駆使されたと思われる。メジャー系の大作でなく，さほど製作費もかけられなかった割に，リアルなオオカミがしっかり登場するなと思ったら，何と何といくつかのシーンでは，本物のオオカミを使ったという（写真3）。参った，そこまでは気付かなかった。せいぜい良く似た犬だと思っていた。さすが，このリアリズムはハリウッドだ。
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写真3 CGでなく，何と，これは本物の狼！
(C) 2011 The Grey Film Holdings, LLC. |
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（画像は，O plus E誌掲載分に追加しています） |
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