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O plus E誌 2009年4月号掲載
 
 
『トワイライト〜初恋〜
(サミット・エンタテインメ ント
/アスミック・エース
&角川エンタテインメント配給)
      (C) 2008 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月4日より新宿ピカデリー他全国松竹・東急系にて公開予定]   2009年2月3日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]
 
         
   
 
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ベッドタイム・ストーリー』

(ウォルト・ディズニー映画)

      (C) Disney Enterprises, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月20日より新宿ピカデリー他全国松竹・東急系にて公開中]   2009年2月25日 角川映画試写室(大阪)
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  セールスポイントは,VFXよりイケメン男優の眼差し
 
 

 老若男女が楽しめる歴史活劇から一転して,次は少し対象観客層が狭い洋画2本である。とはいえ,いずれも米国では興収1億ドルを超えるヒット作で,青少年向きのファンタジーだ。VFXの使い方,日本で受け容れられるかなど,いくつかの視点から比較して論じてみよう。
 まず,昨年の感謝祭週末に全米No.1ヒットとなった『トワイライト〜初恋〜』だが,日本での完成披露試写会では,若い女性の姿が目立った。およそマスコミ関係者には見えなかったが,筆者には手渡されなかったアンケート用紙らしきものに記入していたから,特別招待した想定観客年代層の代表なのだろう。なるほど,題名からしていかにも女性観客向きである。ヴァンパイアが登場するVFX多用作というので,ダーク・ファンタジー系かと思ったが,ずっとシンプルな男女の恋物語だった。
 原作は,新人女性作家ステファニー・メイヤーが2005年に出版したデビュー作である。既に全4部作が刊行され,累計4,200万部の大ベストセラーらしい。「ハリー・ポッター」シリーズのJ・K・ローリング同様の専業主婦だというから,日本でもカルチャーセンターに通い,お茶の間作家をめざす奥さま族が増えても不思議はない。監督は,美術出身のキャサリン・ハードウィック。インディペンデント系のデビュー作『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』(03)ほか数作品の監督歴があるらしいが,まだまだ無名の女性映画作家である。そういう予備知識なしで観始めたが,すぐに女性監督の作品だと分かった。王子様役の描き方が,男性監督とはまるで違うのである。
 主人公の内気な女子高生ベラを演じるのは,『パニック・ルーム』(02年5月号)でジョディ・フォスターの娘役でデビューしたクリステン・スチュアート。本欄の読者には,『ザスーラ』(05年12月号)で腕白兄弟のお姉ちゃん役だった少女といった方が分かりやすいだろうか。随分大人になり,魅力的になったものだ。対する吸血鬼一家の青年エドワードを演じるのは,ロバート・パティンソン。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(05年12月号)の三大魔法学校対抗試合でホグワーツ校の代表セドリック役だった青年である。香取慎吾ばりのエラが張った顔立ちだが,なかなかのイケメンだ。上目遣いの眼差しは,エルヴィス・プレスリーのデビュー当時の強烈な印象を想い出す。
 吸血鬼一族でありながら,人間は襲わないという種族は,何やらミュータントのX-Menのような描き方だ。ならば,なぜ彼らが高校に通っているのか,全く理解できないが,要するに,彼と彼女が禁断の恋に陥る機会があればいいだけである。話は単純で分かりやすく,演出も演技も素朴だ。それでも,いやそれゆえ,クライマックスの善悪対決シーン,彼女の危機を救う下りは素直に面白かった。まさに方程式通りの展開で,映画サークルの仲間でも,文字通り女子供でも作れそうに思えるシンプルな構造だ(実際には,作れっこないが)。
 低予算映画なのに,VFX利用シーンも250に達したので,品質もそれなりだ。主担当はCIS Vancouverだが,ヴァンパイアの目が光る様,口から火を吹いたり,木から木への高速移動(写真1),野球のシーンもいかにもVFXの産物だし,狼もCG製だとすぐ分かる。空や森の景観の加工もしかりだ(写真2)。アクションも控えめで,最近のハリウッド映画にしては物足りない。デート・ムービーとして同伴の彼氏を満足させるには,もう少し派手なアクションが欲しいところだ。最後はいかにも女性趣味のエンディングだ。同じ題材でも,ディズニーならもっと上手く作っただろうと感じられた。
 で,日本ではどうかといえば,これは宣伝次第で結構な入場者がありそうだ。本作で大いに稼いだようだから,続編ではもっと贅沢な作りになることを期待したい。

   
 
 
 

写真1 木々への高速移動は,後でワイヤーを消去

 
   
 
 
 

写真2 空の加工,生成した木々の合成,不都合な事物の除去等は定番のVFX。
今や珍しくもないが……。
(C) 2008 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 
   
  ディズニー・マジックを満喫できるファミリー映画
 
 

 もう1本は,そのディズニー映画であり,米国ではクリスマス休暇での公開作品である。「ベッドタイム・ストーリー」とは,子供たちを安らかに眠らせるために語る寝物語で,正しく洋風お伽噺のファンタジー・アクションだ。日本では春休み公開だが,ディズニー・ブランドでどこまでの集客力があるかが見ものだ。
 監督は,ミュージカル『ヘアスプレー』(07年10月号)でジョン・トラヴォルタを女装させたアダム・シャンクマン。元はダンサーで,数々のミュージック・ビデオに出演していたというから,ビジュアル面よりもリズム感がウリの監督だ。主演は,人気曲者俳優だが,日本ではさっぱり売れないアダム・サンドラー。前作『再会の街で』(08年1月号)での好演は,当欄でも高く評価したのだが,やっぱり日本ではヒットしなかった。
 子守役を引き受けた中年独身男のスキーターが甥と姪に語った作り話を,子供たちが勝手にその続きを創り上げたところ,それが翌日スキーターに現実に起こってしまうという設定である。随所にワナをしかける子供たちの自由な発想により,物語はスキーターには過酷なサバイバル・ゲームとなる。荒唐無稽なイマジネーションの世界だが,歴史ロマンあり,西部劇あり,SFありのアドベンチャーだ。それをことごとくビジュアル化して見せてくれるのが映画の醍醐味であり,最新のCG/VFXの出番である。かつて『フラバー』や『ラブ・バッグ』を生み出したディズニー流実写ファミリー映画ならではのマジックだ。最近では『魔法にかけられて』(08年3月号)が記憶に新しい。
 この映画の最も印象的な登場キャラは,子供たちが飼っているモルモットのバグジーだ(写真3)。当然,CGだと思ったが,何とこれが調教をつけた動物だという。この特徴的な大きな目玉の動物が実在すると思えなかったが,その通り,目玉だけをCGで描いたらしい。空から降ってくる大量のゴムのボールも,大半はCGでの描き加えだ(写真4)。話の展開により,主人公はローマ帝国の競技場(写真5)にも,無重力の宇宙空間にも登場する。その背景映像として登場するスケールの大きい映像が嬉しい。言うまでもなく,視覚効果ならではの表現だが,リアル過ぎずに,お伽噺らしいタッチで描いている。VFXカットは全体で500以上に及び,Hydraux,Tippett Studioなどが参加している。贅沢な製作費を投じられるディズニーならではのマジックだ。
 『トワイライト〜初恋〜』とは対照的な作風だが,アメリカ人好みの少しクサい演技がまたも嫌われるか,ディズニー・ブランドが勝るかが興味の的だ。

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写真3 愛くるしいバグジーは,大きな目だけがCG製
写真4 大量のボールが降ってくる様はなかなかの見もの
 

 
 
 
 

写真5 こんな恰好で登場するが,周りのコロシアムもしっかりCGで描かれている
(C) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

 
     
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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