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O plus E誌 2010年9月号掲載
 
 
 
 
『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [8月20日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開中]   2010年7月15日 角川試写室(大阪)   
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  TVシリーズの味を残した上でのスケールアップ作品  
   何とも古めかしい大時代的な題名だ。1980年代に放映された人気TVシリーズの映画化だが,原題は単なる『The A-Team』である。「THE MOVIE」と付して,いかにも「私の責任じゃありません。元の題名を引き継いだだけで…」と言い訳している感じだ。60年代から70年代にかけての大ヒットシリーズ『スパイ大作戦』は,原題をカタカナにして『ミッション:インポッシブル』だけで現代風に変身できたが,本作は『ザ・Aチーム』では様にならなかったのだろう。
 実を言うと,筆者は題名ははっきり覚えているが,このTVシリーズの記憶がほとんどない。既にTVをあまり観ない年齢に達していた上に,毎週土曜日午後3時からという放映枠のせいもあったのだろう。一部2時間版が「日曜洋画劇場」で放映されていたというから,それを何本か観たのだろうか。
 米軍特殊コマンド部隊出身の4人組が,各々の特技を生かし,依頼に応じて悪と戦うという設定だ。メンバー中3名がベトナム戦争の従軍経験があり,あらぬ略奪行為の疑いで逮捕・収監されたが,脱獄して無実を証明できる関係者探しをするという背景になっている。頭脳明晰なリーダーの作戦の下,個性あるメンバーの能力を最大限に発揮するという構図は『スパイ大作戦』の影響が大きいが,ベトナム戦争の後遺症を払拭したいという設定も米国で大ヒットした要因の1つと考えられている。
 さて,そうした人気シリーズのリメイク映画化には何を期待するだろうか? 当然,俳優は違えど,4人組の構成は同じで,オリジナル版のイメージを残してオールドファンの集客を当てにしつつ,新しいファンの開拓もめざすことだろう。特攻作戦は大幅にスケールアップし,ハリウッド作品らしいスペクタクル活劇で,ワクワクする展開に手に汗を握り,大いに溜飲が下がるエンディングに違いない。そこには政治的メッセージも環境問題への警鐘も要らない。ただただ痛快であることが要求され,1作目がヒットすれば直ちに続編を出せる態勢が期待されていることだろう。
 監督・脚本は,『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(07)のジョー・カーナハン。製作総指揮にリドリー・スコット,製作の中にトニー・スコットの兄弟監督の名前があることが目立つ。本作も15年前に兄弟で設立した製作会社の作品だが,最近はバックアップに回り,中堅・若手の発掘に精を出しているようだ。
 4人組のメンバー構成や名前は全くオリジナルと同じだ。予想通りイラク戦争で特殊部隊を務めたが,無実の罪で収監され,脱獄する設定になっていた。主役のスミス大佐を演じるのは,『シンドラーのリスト』(93)のリーアム・ニーソン。知的で物静かな役柄が多いが,『96時間』(09年8月号)では,スピーディなアクションをこなす父親役で新境地を見せてくれた。本作でのリーダーは正にその延長線上にあるキャスティングだ。残る3人も,写真で見る限り,かなりオリジナル版を忠実に再現しようとしたキャスティングだと感じられる。
 映画の中身は,ほぼ予想通りの出来映えだった。映画史には残らないし,映画祭の賞獲りレースにも無縁の存在であるが,当欄のCG/VFXの観点からは結構な力作であった。以下,その見どころである。
 ■ 激しいアクションの連続で,VFX抜きで考えられないシーンが多々あったが,Rhythm & Hues,Digital, Domain, Weta Digitalといった大手に加え,Hydraulx,Prime Focus,Soho VFX等の中堅スタジオも参加している。前半ではヘリのチェイス・シーン,コンボイ・トラックがクラッシュし,川に落ちるシーンが印象に残っている。ビルを伝って落ちるシーンなど,デジタル・ダブルの活躍シーンも目立った。
 ■ 最大の見ものは,ロングビーチ港の埠頭での攻防戦だろう。爆発が起こり,多数のコンテナが崩れ落ちるシーンは圧巻だ(写真1)。これが現地で実現できる訳はないから,この波止場自体がデジタル技術で構築されていると考えざるを得ない。となると,海面やそこに停泊する多数の船もCGだということか。実際,600個のコンテナがCGで表現されている。
 
   
 
写真1 港湾シーンには600個のCGコンテナが登場する
 
   
   ■ もう1つの見せ場は,C-130輸送機(ハーキュリーズ)の空中戦のシーンである(写真2)。そもそもの離陸シーンからCG/VFXの出番であり,ミサイル攻撃を受け,戦車をパラシュートで吊るして降下するシーン(写真3)などもVFXの面目躍如である。少しやり過ぎかとも思うが,この荒唐無稽ぶりも娯楽映画の役目の1つだ。  
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写真2 もう1つの見どころは,この空中戦のシーン
 
   
 
 
 
写真3 勿論CGだが,戦車を吊るして降下させる発想に驚く
(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
 
   
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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