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O plus E誌 2010年7月号掲載
 
 
 
 
アデル/ファラオと復活の秘薬』
(ヨーロッパ・コープ
/アスミック・エース配給)
 
 
      (C) EUROPACORP-APIPOULAI PROD-TF1 FILMS PRODUCTION
Photos:Magali BRAGARD
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [7月3日より丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー公開予定]   2010年5月25日 角川試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  本家顔負け,サービス精神たっぷりの仏流娯楽作品  
   リュック・ベッソンといえば,『レオン』(94)『ジャンヌ・ダルク』(99)で名をはせたフランスきっての人気監督であり,最近は『TAXi』シリーズ,『トランスポーター』シリーズ等を生み出す辣腕プロデューサーでもある。ハリウッドでいえば,監督としてはスティーブン・スピルバーグ,プロデューサーとしてはジェリー・ブラッカイマーやジョエル・シルバーに匹敵する大きな存在だ。ハリウッドと対等に渡りあえる欧州一の映画人だと言える。いや,最もハリウッド的な映画を生み出せるフランス人監督と言った方が正確だろうか。
 その彼の監督作品『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』とプロデュース作品『パリより愛をこめて』は,ともに5月号の短評欄で取り上げた。後者はまずまず平均レベルのデキだったが,前者はお粗末極まりない駄作だった。このエネルギッシュなフィルムメーカーも,量産体制の中でさすがに少し息切れ気味かと感じた次第だ。そこに立て続けに,新たな監督・脚本作品を送り込んできた。全く疲れを知らない驚くべき人物だ。では,とくとその出来映えを拝見しよう。
 主人公のアデルは,予告編の最初を少し観ただけで,誰もが「女インディ・ジョーンズ」だと分かるコスチュームで登場する。本作には原作があり,1976年にジャック・タルディが発表したバンド・デシネ(フランスのコミック)「アデル・ブラン=セックの素晴らしい冒険」だという。それならば,『インディ・ジョーンズ』シリーズ(81, 84, 89, 08)の公開よりも前だから,こちらが元祖冒険家なのだろうか? いや,リュック・ベッソン流映画企画を理解していれば,意図的に「女インディ・ジョーンズ」に見えるよう,舞台も衣装も味付けし直したと考える方が自然だろう。
 アデルは美人ジャーナリストであり,ミステリーハンターとして世界中の「不思議」と「秘宝」を追い求め,その冒険を出版しているという人物設定だ(写真1)。時代設定は1911年で,エジプトとパリが舞台となっている。インディ・ジョーンズ』3部作よりも,四半世紀前の設定だ。ヒロインのアデルは,不慮の事故で意識不明となり,死に瀕している妹アガットを救うため,古代エジプトのミイラを甦らせ,「復活の秘薬」を手に入れることを計画する。この秘薬を巡って宿敵のマッドサイエンティストが登場したり,博物館の卵の化石から翼竜が誕生してパリの街を襲ったりと,盛り沢山でサービス精神に溢れる楽しい冒険映画となっている。
 
   
 
写真1 なるほど,これは女インディ・ジョーンズ
 
   
   アデル役に抜擢されたのは,期待の若手女優のルイーズ・ブルゴワン。元はTVの「ミス天気予報」で,毎回趣向を凝らしたファッションで登場し,人気を博したという。なかなかキュートな女性で,「『アメリ』でブレイクする前のオドレイ・トトゥ,『エディット・ピアフ』でブレイクする前のマリオン・コティヤール」という監督の形容がぴったり来る存在だ。宿敵デュールヴー役には,『潜水服は蝶の夢を見る』(08年2月号)の演技派マチュー・アマルリック。敵役としては『007/慰めの報酬』(09年1月号)でもお馴染みだが,特殊メイクの個性的な顔立ちで登場するので,最初は分からなかった。
 さて,CG大好きのベッソン監督ゆえに,BUF社が主担当のVFXにも大いに期待したが,これも上々の仕上げで,正しく楽しい使い方になっている。
 ■ エジプトでの本格ロケ(写真2)も充実しているが,VFX的には1911年のパリの街の再現の方が見ものだ。現在のままでも十分歴史を感じるパリの光景であるが,フランス人が観ても100年前と感じるように加工されている。建設後20余年のエッフェル塔はまだ新しいし,勿論ルーヴル美術館前にピラミッドはない。背景に見えるモンマルトルの丘,夜のオペラ座やコンコルド広場の光景等は,デジタル的に足したり,消したりの産物だ。アデルの豪華な帽子(写真3)やファッションと一緒に,このパリの光景も堪能できるように作られている。
 
   
 
写真2 前半はエジプト・ロケの贅沢な映像
 
   
 
写真3 本家のフェドーラ帽より,こちらはぐっとお洒落
 
   
   ■ 続いては,自然史博物館の化石展示室,卵から甦った翼竜プテロダクティルスの描写が注目の的だ。少し誇張したマンガ的な表現だが,アデルが翼竜の背に乗って飛翔するシーンは圧巻だ。『アバター』には少し負けていても,『タイタンの戦い』でペルセウスを背にしたペガサスの動きには十分勝っている。
 ■ 終盤の見どころは,ルーヴル美術館に収納されているミイラ(写真4)の復活だ。MoCapデータをフル活用していることは言うまでもないが,ルックも動きのデザインも素晴らしい。そのスチル写真を掲載できないのだけが残念だ。出し惜しみしなければいいのに……。
 ■ 事件が解決し,翌年アデルは豪華客船でアメリカ大陸への旅に出かけるが……。いやぁ,エンドロール後のこのパロディ・シーンには笑った。
 
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写真4 このミイラが生き返って縦横無尽の活躍をする
(C) EUROPACORP-APIPOULAI PROD-TF1 FILMS PRODUCTION
Photos:Magali BRAGARD
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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