head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
 
title
 
O plus E誌 2010年7月号掲載
 
 
 
 
エルム街の悪夢』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (C) 2010 Warner Bros. Entertainment Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月26日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー公開予定]   2010年5月24日 角川試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  伝説のフレディは,顔面の醜さを強化して登場  
   ホラー映画ファンなら,「やっぱり,やって来たか!」という感じでの再登場だろう。ウェス・クレイヴン監督が1984年に生み出した同名映画のリメイク作品である。3大人気シリーズのうち,ライバルの『ハロウィン』『13日の金曜日』が,それぞれ2007年,2009年にリメイクされているので,そろそろ本作が登場するはずだと予想していたファンも少なくないことだろう。
 ホラー映画に詳しくない本欄の読者のために,少しその背景を語っておこう。ホラー作品のうち,殺害シーンに生々しい描写があるものは「スプラッター映画」と呼ばれ,アメリカ映画界では,1970年代末から1980年代にかけてスタイルが確立された。低予算のB級作品ながら,麻薬的な魅力があるらしく,人気作品は次々とシリーズ化され,マニアックなファンを有している。上記3大シリーズ以外にも,『悪魔のいけにえ』『死霊のはらわた』『悪魔の棲む家』など,題だけでもおぞましい作品群が続々と登場した(もっとも,原題はさほどでもないのに,配給会社が邦題をこのようにつけただけだが)。
『エルム街の悪夢』シリーズは,1994年までに番外編を含む計7作が製作された。殺人鬼フレディ・クルーガーという存在がユニークだった。若者たちの夢の中に登場し,そこで彼が起こす殺害が現実のものとなる。赤と緑のストライプのセーター,顔の火傷痕を隠すフェドーラ帽,凶器と化す鉄の爪をもつ姿が印象的で,『13日の金曜日』のジェイソン・ボーヒーズと並び称せられる存在である。2003年には,この2人が対決する『フレディVSジェイソン』も登場している。
 製作は,マイケル・ベイ,アンドリュー・フォーム,ブラッド・フーラーのトリオで,この数年間,著名作品のリメイクで成功を収めている。監督は,CM界の出身で,本作が長編デビューとなるサミュエル・ベイヤー。過去の全作品でフレディ役を演じたロバート・イングランドが高齢のため,新たなフレディには『ウォッチメン』(09年4月号)で顔が変化するロールシャッハを演じたジャッキー・アール・ヘイリーが起用された。これは,なかなかいいキャスティングだと思う。
 この種のリメイク作品は,旧作のファンを満足させつつ,新しいファンを開拓することを目的としている。当然,映像的にも音響的にもスケールアップし,スピード感も増す必要があるが,あまりゴージャスにしたのでは,ホラーの持ち味が死んでしまう。第1作の完全なリメイクでは,旧作の熱烈なファンから細部のアラ探しをされるだけだ。そこで,原点復帰して新生フレディを登場させつつ,新シリーズの幕開けとなる新しい物語を用意することになる。
 さほどホラー好きではない筆者は,かなり昔に旧作をTVで一度観ただけであるので,新しい観客の視点で本作を観た。勿論当欄としては,どれだけのVFXが駆使されているかを点検する目的も含まれている。
 凶器となる鉄の爪は,予想通り少し豪華になり,質感が増していた。このシンボル的存在が画面にいきなり登場するだけで結構怖い(写真1)。爪自体はCGでなく実物だが,壁やパイプと接触して発する火花はCG製だろう(写真2)。火傷でただれたフレディの顔はメイクを施した上に,VFXで加工されている。頬が抉れている表現は,メイクだけではできない代物だ(写真3)。既に他作品でミイラやゾンビの顔面で試されている方法なので,新味はないが,新生フレディの顔として悪くはない。
 
   
 
写真1 バスルームでの怖がらせ方などは一級品
 
   
 
写真2 顔面も火花も本作ではVFXの産物
 
   
 
写真3 アップになると頬がえぐれていることが分かる
 
   
   VFX的に最も印象的で優れていたのは,少女の寝室がいきなり雪に覆われるシーンだ(写真4)写真5で,フレディに襲われ,身体が宙に舞う様はワイヤーアクションで,カーテンやベットのシーツが人型に盛り上がる表現はCG製だろう。炎の表現の大半も,最近ならCGで作っていると思われる(写真6)。VFXの主担当はMethod Studiosで,低予算のリメイク作品としては,映像表現も怖がらせ方も,ギリギリ合格点というところだろうか。  
  ()  
   
 
写真4 部屋の中に積もった雪も結構いい出来
 
   
 
写真5 ワイヤーアクションとVFXの併せ技
 
   
 
 
 
写真6 炎の大半は今やCGで描くのが普通
(C) MMX NEW LINE PRODUCTIONS, INC.
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
   
<>br