head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
 
title
 
O plus E誌 2010年3月号掲載予定
 
 
 
ダレン・シャン』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
      (C) 2009 Universal Studios  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [3月19日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開予定]   2010年1月26日 TOHOシネマズ梅田 アネックス[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  昔懐かしい紙芝居タッチのダーク・ファンタジー  
   この映画もニューオリンズが舞台だが,こちらはファンタジー小説の映画化作品である。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの成功以来,一体,何作が映画化されたことだろう。『ハリー・ポッター』シリーズは別格として,それほど興行成績が良いとも思えないのだが,毎年のように何作かは登場し,大半は続編も作られている。確実に世界市場を相手にできるので,小説版の増刷,TV放映権,ビデオゲーム版や関連グッズまで含めると,結構いいビジネスになるのかもしれない。これは,アメコミの映画化の場合も同じだ。CG/VFX業界にとっては良いお得意先であり,腕を磨いたり,新技術を試すには恰好のターゲットである。かくして,本欄もそれを評価せざるを得ない破目になる。2月26日公開の『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』と一緒に評したかったのだが,同作品の試写が間に合わなかったので,本作品を単独で取り上げる。
 毒グモに噛まれた親友を救うためにバンパイアと取引きした少年ダレン・シャンが,半バンパイアとなり,想像もしなかった体験をするダーク・ファンタジーだ。バンパイアものも数多いが,本作では半分人間のままで,純化作用とやらで,徐々に本物のバンパイアに近づいて行く。毒グモに噛まれた親友スティーブは,スパイダーマンになる訳ではなく,こちらはバンパイアと対立するバンパニーズとなり,ダレン・シャンとは敵対関係になる……という設定だ。原作は,主人公と同名の作家がおふざけで書き始めた小説らしいが,人気を博し,全12巻(外伝を含むと全13巻)が刊行されている。我が国では,邦訳本,その文庫判の他に,コミック版もあり(いずれも小学館刊),これがなかなかの人気のようだ。「あなたは,友人のために死ねますか?」というのが,読者層の少年たちのハートをくすぐるらしい。
 監督・脚本は,『アバウト・ア・ボーイ』(02)のポール・ワイツ。主人公のダレン・シャンを演じるのは,新星のクリス・マッソグリアだが,親友スティーブには,『テラビシアに架ける橋』(08年1月号)『センター・オブ・ジ・アース』(同11月号)のジョシュ・ハッチャーソンが起用された。憎らしげな敵役の方が演技力が要るから,妥当なキャスティングだ。助演陣では,バンパイアのクレプスリー役に『シカゴ』(03年4月号)のジョン・C・ライリー,サーカス団の団長ミスター・トール役に我らが渡辺謙らの実力派が登場する。
 VFXの見どころは,まず前半の奇妙なサーカス団「シルク・ド・フリーク」に登場する人物達だ。瞬く間に髭が生えてくる女性,今にも折れそうな細身の肉体の男。身体が鱗で覆われたヘビ男など,奇形とも言えるキャラは,特殊メイクとVFXの併用で描かれている。巨大な毒グモのマダム・オクタやヨーダ風のローブをまとった小人たち(写真1)は,当然CGの産物だ。毒グモの赤と青の極彩色は「スパイダーマン」を思い出してしまう(写真2)。いずれも,今や技術的には特筆すべきものではないが,少し誇張した滑稽な味付けになっている。その典型は,バンパイアとバンパニーズの戦いでのスーパーパワーによる高速移動の描写だ(写真3)。静止画で観るとさほどでもないが,動画だとかなり個性的な表現だった。VFXの主担当はRhythm & Huesで,全体で300カットという(写真4)。印象的にはもっと多い感じがする。
 
   
 
写真1 ちょっと不気味なスモール・ピープル
 
   
 
写真2 この赤と青は,別のヒーローを思い出してしまう
 
     
 
写真3 誇張された高速移動の表現がユニークで面白い
 
 
 
 
 
 
写真4 VFXに負けず,この人物も出番が多い
(C) 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
   幅広い年齢層に愛される作品との触れ込みだが,さほど格調は高くなく,低年齢層を主対象とした分かりやすい物語展開である。筆者は,この映画に昔懐かしい紙芝居を感じてしまった。稚拙な静止画とVFXを駆使した動画では相当違うはずだが,全体のトーンが似ているのである。まだTVが普及する前,毎日回ってきた紙芝居屋は,子供たちが僅かな小遣いをもって集まる路上の小劇場であった。その語り部は,講談師や活動弁士の流れをくむ話術をもち,身振り手振りまで交えた熱演で,子供心を捉えようとしていた。物語も単純明快で,明日はどうなるのか,ワクワクさせる展開だった。なるほど,この映画はそのシンプルさを持ち合わせている。音楽もかなり騒々しく,お世辞にも上品とは言えないが,それが映像とマッチしているのである。21世紀の今,冒険を演出する誇張した映像,その演出・描写にCG/VFXが大きな貢献を果たしていることだけは間違いない。  
  ()  
     
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
   
<>br