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O plus E誌 2009年4月号掲載
 
 
 
釣りキチ三平』
(東映配給)
 
  (C) 2009「釣りキチ三平」製作委員会
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [3月20日より丸の内TOEI 1ほか全国東映系にて公開中]   2009年2月25日 東映試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  映画は平凡だが,CG製巨大岩魚の描写は非凡  
 

 まずは,派手なポーズで決めるポスター(写真1)から観て頂こう。「釣りキチ三平」ファンなら,矢口高雄ファンなら,この独特の誇張した釣りポーズの再現に痺れるはずだ。麦わら帽で,遠目にも三平君だと分かる。「幻の魚」を日本一のVFX集団・白組がCGで描き,監督は『おくりびと』でオスカーを得たばかりの滝田洋二郎とあっては,本欄で語らざるを得ないではないか。

 
 
 
 
 

写真1 矢口高雄流の誇張したこのポーズが懐かしい!
  時の人・滝田洋二郎監督の名前もしっかり登場

   
   題名を聞いて,「釣りバカ日誌」と間違える人が多い。そちらは,1979年から現在も続く「ビッグコミックオリジナル」の連載漫画で,映画化され,昨年秋までに19作が作られている。釣りがネタではあるが,「釣りバカ」のダメ社員「ハマちゃん」(浜崎伝助)と釣りの弟子の「スーさん」(鈴木社長)を巡るサラリーマン・コミックだ。映画版の長寿化は,西田敏行と三国連太郎の絶妙な掛け合いによるところが大きい。
 一方こちらは,1973年から10年間「週刊少年マガジン」に連載された人気作品であり,元祖釣り漫画である。ちなみに,筆者は創刊から約45年間,海外留学中も同誌を欠かさず愛読していたので,往時のこの作品をよく覚えている。5年前に同誌の購読止めたのは,お目当ての「ちばてつや」作品が載らなくなったからである。「釣りキチ三平」連載当時のちばてつや作品は「おれは鉄平」だったと記憶している。実を言うと,釣りに全く興味のない筆者が,「釣りキチ三平」にも目を通していたのは,矢口高雄の画風が白土三平とよく似ていたからである。実際,主人公の「三平」の名は,矢口が尊敬する白土三平から取ったものだ。作風は自然派漫画と言われ始めたジャンルで,新しさを感じる作品だった。
 主演の三平三平(みひらさんぺい)役は,『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年11月号) 『花田少年史』(06年9月号) の名子役・須賀健太が演じる。すっかり背が高くなり,スチルを一見しただけでは誰だか分からなかった。芸達者なのは言うまでもないが,この映画では余り熱演風でなく,さらりと明るい三平を演じている。脇を固める釣竿作りの名人・一平じいさん役には,渡瀬恒彦。原作とはイメージが違うが,悪くない役作りだ。他では,三平が兄と慕う「風来坊釣り師」鮎川魚紳は,アメリカ在住のバスプロとして描かれ,塚本高史が演じている。また,映画のオリジナル・キャラクターとして三平の姉・愛子が登場し,香椎由宇が配されている。この若い2人の演技は,予想通りの低レベルだった。
 さて,『おくりびと』(08年9月号) の滝田洋二郎監督である。アカデミー賞受賞以前に撮り終えていた本作品を,東映が受賞第1作として宣伝しまくるのは,ちとずるい。現場叩き上げで,昔はピンク映画まで撮っていたこの監督は,根っからの職人である。もともと脚本なり,予算なりに作る監督というイメージだ。『陰陽師』(01年10月号) は軽い和風オカルト時代劇,『壬生義士伝』(03)は正統派感動系ドラマとして描くなど,監督の個性を前面に出さない玄人である。『おくりびと』は素材そのものが素晴らしかっただけで,平凡な脚本のこの映画に多くを求める方が酷というものだ。原作のテイストを損なわず,自然景観を明るく素朴に,無理なく撮った映画である。地方の長閑な農家の風情もいい。
 さてさて,もう1つのウリの白組のCG/VFXである。前半で登場する鳥や鬼ヤンマなどの描写もCGだろうが,特段述べるほどのものでもない。待ちに待った「幻の魚」が登場するのは終盤20分程度である。体長1.5mの巨大岩魚の描写は,さすがに圧巻だった(写真2)。白組スタジオ内に岩魚やヤマメを飼育して観察したというだけあって,動きや体表面テクスチャーもよく観察されている(写真3)。水中も水面上に飛び上がった際のライティングも見事だ(写真4)。水飛沫の描き加えや三平が抱き上げた際の表現も破綻はない。実を言うと,三平がこの巨大魚を川にリリースする下りは,岩魚のすべてがCGなのか,アニマトロニクス風のものも併用していたのか,筆者には識別できなかった。DVDでの種明かしを待つとしよう。   
 
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写真2 さすが白組,1.5mの巨大岩魚を見事に表現   写真3 これがCGモデルにマッピングするテクスチャー画像
 

 
 
 
写真4 水中も空中もライティングには配慮
(C) 2009「釣りキチ三平」製作委員会
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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