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O plus E誌 1999年12月号掲載
 
 
『ファイト・クラブ』
(20世紀フォックス映画)
 
(c)2001 TWENTIETH CENTURY FOX
       
      (1999/11/1 20世紀フォックス試写室)  
         
     
  ブラッド・ピットは陰の主役  
   本場アメリカには,「Cinefex」という特撮専門雑誌がある。American Cinematographer誌が月刊で撮影監督,キャメラマン向きで,特撮以外のカメラや照明の話題も含まれるのに対して,Cinefexは季刊のFX専門誌である。
 99年7月発行の第78号は丸ごと『SW エピソード1』で,10月発行の第79号では『ワイルド・ワイルド・ウエスト』『ホーンティング』『マトリックス』シックスの4作品の記事が載っている。最近VFX作品が急増しているため,同誌が取り上げる率も低くなり,時期も遅れ気味である。ということは,同誌に掲載される作品こそ,SFX/VFX作品の一級品ということになる。
 そのCinefex誌が次号(2000年1月号)で取り上げるというので,早速『ファイト・クラブ』を観に行ったのだが,期待に反してSFXのウェイトは大きくなかった。メインタイトル,主人公の住むコンドミニアムの家具レイアウト・シーン,その爆発炎上,夢に出てくる北極のペンギン,エンディングのビルの崩壊シーン等々はディジタル処理の産物だろうが,この映画の中で大きな意味は持っていない。監督のデイビッド・フィンチャーは,マット・ペインティング出身というから,どこかでディジタル・マット画を多用していたのかもしれないが,気が付かなかった。
 『セブン』のブラッド・ピットとデイビッド・フィンチャー監督のコンビの再現という触れ込みだが,主演兼ナレーターはエドワード・ノートンである。ブラッド・ピットは汚れ役の脇役,いや陰の主役と言うべきかもしれない。映画を見終わった時,この意味が判っていただけるだろう。
 エドワード・ノートンは,デビュー作『真実の行方』での二重人格の殺人犯少年役が強烈だった。『ラウンダーズ』で主役のマット・デーモンに絡む小悪党ワーム役も印象的で,初めはブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデン役と逆の方が良かったのにと思った。しかし,主人公ジャックは,E・ノートンの恐ろしいまでの演技力なしでは描けなかっただろう。
 この好演にもかかわらず,全体としては妙な映画である。機中で知り合った2人が一緒に住み,素手で殴り合うようになる。次第に見物人が増え,暴力と苦痛で精神の浄化を図る「ファイト・クラブ」が結成される。全国各地に生まれたこのクラブが,やがてテロリスト集団化していく,というストーリー展開である。ファイトといっても,爽やかなスポーツものでなく,この暴力と狂気は見ていて気持ちがいいものではない。ダラダラと2時間19分も長すぎる。
 主人公ジャックが,ある疑問をいだいたところからストーリーは急旋回するが,あまり話すとネタバレになるのでここらで止めておこう。
 
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  刺激的だが,後味は良くない  
 
こちらはアメリカで10月15日公開なのに,もう日本でもやるんですね。
ブラッド・ピット人気を当て込んで,正月映画に入れたかったんでしょう。でも,汚れ役で女性ファンにとっては期待外れだったかな?
役柄にはそう違和感がありませんでしたが,これは完全にエドワード・ノートンの映画ですね。この人はうまいけれど,コワイですね。
『シックス・センス』ほどではないけど,最後はちょっと驚いたでしょ。
ええ。でも,こちらはあまり後味の良くない映画でした。
一部の批評家好みかもしれませんが,一般 観客には受けないでしょう。デイビッド・フィンチャーは,スタンリー・キューブリックの後継者という人もいるように,やや難解なところは似てなくもないですね。
映像的には,同じ監督の『セブン』や『ゲーム』に似てると感じました。カメラの動きが早いというか...。
撮影監督のJ・クローネンウェスも同じだからでしょう。パンフレットと補足資料に,「刺激的で挑発的」「どんな映画よりもシャープで知的」とありましたが,当たってませんか?
あんなに暴力だらけで,どこが知的なんですか! 刺激的だけど,あんまりいい刺激じゃありません。
実は,私はこの映画は先にアメリカで観たんです。ハーバード大学のCOOPの裏手の映画館でね。私のヒアリング力じゃ,ナレーションも会話もよく分からなかったので,もう一度日本の試写会で観たのです。でも,日本語字幕が付いてても,やっぱりよく分かりませんでした(笑)。
で,アメリカを代表する知性のハーバードの学生さん達の評価はどうでしたか?
あんまり受けてなかったみたいですよ。お客はいっぱいいましたけどね。ハーバードは東部エリートの代表だけど,ヒッピーの多いバークレーだったら反応は違ったかもしれませんが...。
この映画もナレーション部分は字幕に苦労していたように感じました。英語はベラベラしゃべっているのに,字幕には字数が沢山使えなくて,それもスッキリ入って行けなかった原因かと思います。
でも,さすが第一人者の戸田奈津子さん,肝心なところはちゃんと訳していましたよ。「バイアグラ」など薬の名前がズラズラ出てくるところで,英語では「ロゲイン」(Rogaine)と言ってるのに,日本語では「リアップ」と訳していました。きめ細かです。
何ですか,それは?
話題の壮年男性用発毛剤です。アメリカの「ロゲイン」を,日本では大正製薬がライセンス生産して「リアップ」と名付けたのです。オジサンは皆知っています(笑)。ブラッド・ピットも愛用しているのかな?
ハハハ。ブラピ様に発毛剤だなんて,失礼です!(笑)。
それ以外は,あまり感情移入できないし,何がメッセージで何を問題提起したいのか,よく分からない映画でした。
 
   
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