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O plus E誌 2008年9月号掲載
 
 
 
ハムナプトラ3
 呪われた皇帝の秘宝』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給 )
 
      (C) 2008 Universal Studios  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [8月16日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2008年7月31日 東京現像所虎ノ門試写室  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CG & VFXは盛り沢山だが,もはや驚きはない  
 

 人気冒険活劇シリーズの3作目の登場である。前2作は最新のCG映像が満載で,VFX史を飾る作品だった。古代遺跡の発掘,ミイラの再生復活という,『インディ・ジョーンズ』シリーズを思わせるテーマが人気の一因だった。今年はそのご本家が19年ぶりの第4作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08年7月号)を先に公開している。対抗する後発の類似シリーズ7年ぶりの第3弾に勝ち目はあるのか,何か秘策はあるのかが焦点だ。キャッチコピーは「想像以上が,待っている!!」となっているが,本当に想像以上なのだろうか。
 北京五輪に便乗からか,舞台はエジプトから中国に移っている。中国にミイラがあったかと思えば,何と世界遺産の始皇帝陵から皇帝と兵馬俑が甦るという。なるほど,ありそうなアイデアだ。この夏空前のカンフー映画ブームだが,「ブルータス,お前もか」の感もする。
 監督は,前2作のスティーブン・ソマーズから,『ワイルド・スピード』(01年10月号)『トリプルX』(02年11月号)のロブ・コーエンにスイッチされている。スピード感のあるアクション得意の監督だから,良しとしよう。主演の考古学者オコーネル夫妻は,ブレンダン・フレイザーとレイチェル・ワイズだったのが,オスカー女優となったR・ワイズは外れ,『コヨーテ・アグリー』(00)のマリア・ベロが起用されている。うーん,この交替は痛いな。ちょっと地味だし,鈍重な感じのB・フレイザーとのカップルでは魅力に欠ける。
 製作者もそう思ったのか,復活する敵役の皇帝にはジェット・リーを配した。それじゃ,カンフー演技は抜群な訳だ。加えて,この皇帝と対決する魔法使いに『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(97)『グリーン・デスティニー』(00)のミッシェル・ヨーまでを投入した。筆者のお気に入り女優の1人である。こりゃ強固な助演陣だ。さらに,オコーネル夫妻の1人息子アレックス(ルーク・フォード)が重要な役割を果たし,謎の美少女リン(イザベラ・リョン)とのロマンスも芽生えさせている。この辺りも本家の後追いの感じもする。
 息子アレックスは前作で既に子役が登場しているが,とてもじゃないがB・フレイザーとは親子に見えないのが大欠点だ(実際は13歳違い)。物語は古代中国から始まり,呪術師の呪いで皇帝と臣下全員が陶器と化して眠りにつく。それから約2000年後の1946年にアレックスが発掘した皇帝のミイラが生き返る事件が発生し,オコーネル夫妻もミイラ軍同士の戦闘に巻き込まれる……。
 ズバリ言って,本家には及ばず,今一歩の映画だ。万里の長城の眺望やヒマラヤ山脈の断崖絶壁でのバトルなど,スケールも大きく,VFXも満載なのだが,ノンストップ・アクションが少し騒々しい。ウリのVFXも,こうも使い詰めでは,もはや誰も驚かない。厳しいが,映画全体としての評価は,☆+に留めることにした(それにつられて,今月は他の作品の評価も厳しくなった)。実を言うと,今年のSIGGRAPHでR・コーエン監督自身の講演,熱弁を聴き,少し心が揺らいだのだが……。
 当欄としては,VFXスタッフの努力だけは正当に評価しておきたい。以下,その見どころである。
 ■ VFXの主担当はDigital Domain,副担当はRhythm & Huesで,DDが皇帝や兵馬俑,反皇帝軍の兵士のCGを,R&Hが雪男,蛇,ドラゴン等のクリーチャーを担当したようだ。悪くはないが,驚きもないレベルだ。
 ■ 陶器となる皇帝のデザインには苦労したようだ(写真1)。ジェット・リーだと分からせながら,かつ陶器然とした外観を保ち,それが壊れた中から顔を出して……。努力は分かるが,これがそう面白くない。

 
   
 
 

写真1 陶器になったり,火を吹いたり,竜になったり,皇帝も忙しい

     
   ■ 兵馬俑は実物大複製も少しあるが(写真2),多数が登場するシーンは無論CGで描かれている(写真3)。形やトーンを少しずつ変え,動きも一体ごとに変化させている。どちらかといえば,反皇帝軍のミイラの方が出来がいい(写真4)。粉々になって粉塵となる表現が秀逸だ。似た表現は『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(08年3月号)にも登場している。ここは,パーティクル処理の優れたライブラリを有しているR&H社の担当だろうか?    
     
 
写真2 甦った兵馬俑も,これは実物大複製品  
 
     
 
 

写真3 多数の兵馬俑からなる皇帝軍を描く時はCGで描写

     
 
写真4 対するは皇帝に抹殺された亡者の軍  
 
     
   ■ 雪男(イエティ)はR・コーエン監督が拘ったキャラのようだ(写真5)。3つの頭をもつドラゴンもしっかり描かれている(写真6)。もはや,こうしたクリーチャーが登場するのは珍しくもなく,当然に思われてしまうのが,CG担当者にとって辛いところだ。CGの品質が問題なのではなく,使いどころにもう一工夫欲しいというのが,この種の冒険活劇への苦言だ。      
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写真5 雪男(イエティ)は予想通りの出来映え   写真6 3つ頭のドラゴンもしっかり描けている
 
 

(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 
     
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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