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O plus E誌 2002年5月号掲載
 
 
『ザ・ワン』
(コロンビア映画
/東宝東和配給)
 
(c)2001 Revolution Studios Distribution Company LLC Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
    
 オフィシャルサイト日本語][英語 2002年2月26日 ヤマハ・ホール(完成披露試写会) 
 [5月下旬全国東宝洋画系にて公開予定]   
     
   
    
 
 
『少林サッカー』
(星輝海外有限公司作品
/クロックワークス
&ギャガヒューマックス共同配給)
 
 
    
 オフィシャルサイト日本語][中国語 2002年3月7日 イマジカ試写室 
 [5月下旬全国松竹・東急系にて公開予定]   
     
 
 (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。) 
  
 SF×カンフー vs. サッカー×カンフー 
  先月は台湾映画史上の記念碑となった『聖石傳説』を紹介したが,今月は香港に焦点を当てよう。香港映画のスターから,ジェッキー・チェンに続けとハリウッド進出を果たしたジェット・リーの主演第3作目の『ザ・ワン』と,香港映画の歴代No.1ヒットとなった『少林サッカー』だ。
『ロミオ・マスト・ダイ』(00)『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(01)に続くジェット・リーの主演作は何とSFだった。多次元宇宙には125のパラレル・ワールドが存在し,それぞれに自分と同じ人間がいる。それを一人ずつ抹殺するごとにパワーアップし,自分だけになれば超人で全能の存在として全宇宙を制覇できると考えた囚人ロウレス(ジェット・リー)が,次々と123人までを葬り去る。宇宙のバランスを守るため,同じパワーを身に付けた最後の標的,多次元宇宙捜査官ユーロウ(ジェット・リー)がロウレスと戦うという設定だ。
 このジェット・リー対ジェット・リーというとんでもない脚本を書いたのは,『ファイナル・デスティネーション』(00)でヒットを飛ばした監督のジェームス・ウォンと相棒でプロデューサーのグレン・モーガンのコンビだ。ユーロウの妻役に『スパイ・キッズ』(01)のカーラ・グジーノ,捜査官仲間には『サイダーハウス・ルール』(99)『60セカンズ』(00)のデルロイ・リンド,『スナッチ』(00)のジェイソン・ステーサムらが脇を固める。
写真1 CGスタントと戦うジェット・リーのカンフー・アクション (上:オリジナル撮影,中:アクションに合わせてCGを合成,下:最終合成版)

 SFという設定だが,実質はワイヤーとCGを多用したカンフー・アクションで,ストーリーはあって無きがごとしだ。最初何人も登場するが,結局はジェット・リー対ジェット・リーで1人2役対決が見せ場である。最近のディジタル技術なら2役の合成は容易に思えるが,ジェット・リーくらいのアクション・スピードになるとそう簡単ではないようだ。VFXのポイントは,写真1のようにCG相手に戦う素早いアクションと,どちらもジェット・リーに見せるため,顔だけCGですげ替えた代役との対決シーンだ。いずれも良くできていた。古典的な早回しや逆回しも多用しているが,小道具やワームホールに吸い込まれるシーン等でCG映像が頻繁に見られる。『スパイ・キッズ』同様,B級作品らしく気取りはないが,その分安っぽさも否めない。
 一方の『少林サッカー』は,表題通り少林拳の達人たちが,サッカー・チームを編成して試合で大活躍するという設定で,現在の香港映画界のスター,チャウ・シンチー(周星馳)が監督・脚本・主演したヒット作だ。これまで日本では馴染みがなかったが,この映画で一気にブレイクすることだろう。香港ではワールドカップのアジア予選時期に公開されて大ヒットし,今年本大会の直前に日本公開というのも,測ったようにピッタリだ。
 チームメイトのハンの策略で八百長試合に荷担した人気足球選手のファン(ン・マンタ)は,自慢の足を折られ,足球界から追放される。20年後,少林拳の使い手シン(チャウ・シンチー)の恐るべき「鋼鉄の脚」を目の当たりにしたファンは,彼と共に少林寺で修行した兄弟子たちを説得してサッカーの「少林チーム」を編成し,監督として宿敵のハン率いる不死身のデビルチームと全国大会で対決する,という物語だ。太極拳を使うヒロインのムイ役には,中国の国民的アイドル女優のヴィッキー・チャオ(趙薇)を起用している。最初から美女ぶりを吹聴せず,前半汚れ役で登場するのも計算のうちだ。
写真2 ボールを受け止めたゴールキーパーがバラバラに。こういったシーンが次々と登場する。
 VFXをふんだんに使った映画というので,ボールがCGで自由自在にパスしたり,とんでもないスーパーキックでのゴールが見られると予想していた。実際にはCGの活用度は予想を遥かに上回り,もっとスケールが大きく,ハチャメチャな足球試合の連続だった(写真2)。試合が進むごとに荒唐無稽ぶりもエスカレートし,次は何が出てくるのか楽しみになってくる。期待にたがわず,決勝戦は見応え十分だった。
技術的には,この映画もワイヤーアクションとCGを使い分けてサッカー選手の飛んだり跳ねたりを描いているが,その繋ぎ目がうまく処理されている。古典的なモーフィングの使い方も悪くない。目立たないところに視覚効果を駆使するのではなく,数百シーンでいかにも特撮だという使い方だが,荒唐無稽もここまで来ると気持ちいい。本連載としては,文句なしにオススメのエンターテインメント作品だ。
 
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 実物のそっくりさんも活躍 
 
ジェット・リーのアクション・スピードが凄すぎて,これについて行ける相手役がいなくなり,ついにCG俳優相手の演技となりました(笑)。
確かにアクションはジャッキー・チェンを凌いで超一流です。でも,それだけしかない映画です。
およそ感情移入できませんが,アクションだけ楽しめればいいというファンもいるんでしょう。
パラレル・ワールドにいる,それぞれのジェット・リーのメイクアップは楽しかったですね。これはご愛嬌で笑ってしまいました。
もっと笑えたのは,ジョージ・ブッシュが大統領を務める世界に対して,もう1つのワールドではアル・ゴアが大統領をやっていた場面です(笑)。
時計型端末や基地のデザインはいかにもCGという感じで安っぽかったのですが,実写との繋ぎ目の処理は悪くなかったですね。
特にエンディングのシーンは抜群でしょう。ロウレスのアップから入って,どんどんカメラを引いて行く途中でディジタルマットと切り替わっているはずですが,全く継ぎ目を感じさせません。ここは見事でした。
2人ジェット・リーの対決シーンで,顔だけCGにすげ替えているということは,身体は別人ですね。こんなに背格好も横顔もジェット・リーそっくりのスタントマンをよく見つけてきたなと感心しました。
あれだけ出番があると,フルCGで作るより顔だけ入れ替えるほうが楽ですからね。そっくりといえば,『少林サッカー』のゴールキーパー役は,顔も仕草もブルース・リーに良く似ていましたね。
この人,時々テレビに出てきますよ。
チャウ・シンチー監督がブルース・リーの信奉者で,そっくりさんを見つけて来て使っているそうです。チャウ・シンチー自身も,ある時は武田鉄矢,ある時は柄本明に似てるなと思いました(笑)。
確かに,日本人に似た顔立ちの出演者だと,何となく親しみを感じますね。
監督のファン役はハナ肇,最年長選手の兄弟子は桜井センリに似てました(笑)。
ヒロインも日本人好みの美人でしたが,あの坊主頭のカツラだけはお粗末でした.ショートへアにしてからかぶるなり,もうちょっと何とかしてよという感じです。でも,全体は香港映画にしては上品で,好感がもてました(笑)。
VFXもフル活動で,ハチャメチャもここまで来ると快感を感じますね。
サッカーの試合のシーンはとても良くできていて,『ハリー・ポッター』のクイディッチのシーンよりずっと上質だと思います。
VFXはセントロ・デジタル・ピクチャーズ担当で,エンドロールを見ると約50人で全シーンを処理しています。ハリウッドなら300人はかけるくらいの分量ですから,大したものです。
山崎監督にインタビューした時,話しておられた会社ですね。(2000年7月号参照)
香港では歴史的大ヒットとなったので,きっと続編が作られるでしょう。今から楽しみです。
 
  
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