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O plus E誌 2008年6月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ラスベガスをぶっつぶせ』 :この野暮な題は原作小説の邦題を変形したものだが,ブラックジャックにちなんだ原題『21』の方がずっといい。MITの秀才達が高等数学を駆使して,ラスベガスのカジノで大金をせしめる話だ。元は実話だという。素材の面白さに惚れ込んだケヴィン・スペイシーが映画化権を得て製作し,自らも数学教師役で出演している。主演の新人ジム・スタージェスは,今後楽しみな男優だ。ポール・マッカートニーの若い頃に似ている。カジノの描写は克明だが,肝心のカード・ゲームの場面にあまり緊迫感がない。結末のひねりには,思わずニヤリとさせられる。
 ■『山桜』 :美しい映画だ。原作は藤沢周平の短編,舞台は北の小国・庄内の海坂藩。正義を貫き藩の重臣を斬った下級武士と,熱き想いを胸に秘めて待ちわびる女……。と聞くと,そのまま山田洋次作品を思い浮かべるが,本作品の方が藤沢文学の香りをよりきめ細かく描き出している。咲き誇る山桜,雪化粧した出羽三山,雪解け水のせせらぎに負けず,和服姿の田中麗奈も美しいが,東山紀之の凛々しさが白眉だ。唯一の欠点は奸物・悪役の描き方で,余りにも類型的過ぎてつまらない。それが,この映画の気高さを少し損なっている。
 ■『ザ・マジックアワー』:これも邦画だが,今月の短評欄は良作・秀作揃いである。『THE 有頂天ホテル』(06)に続く三谷幸喜監督作品第4作で,中身ぎっしりの極上ハートフルコメディだ。いま名前だけで客を呼べる数少ない脚本家・演出家だろう。その期待を裏切らない。映画界を題材にした内幕ものの一種だが,佐藤浩市・妻夫木聡・深津絵里・綾瀬はるか・西田敏行といった主演陣に加え,顔見知りの俳優がチョイ役で登場して笑いを誘う。助演陣では伊吹吾郎の渋い演技が気に入ったが,もう1人,元ジャズ歌手の柳澤愼一(柳沢真一)が枯れた重要な役柄で登場するのに驚いた。表題は奇術・魔術とは関係なく,意味は見てのお楽しみだ。
 ■『JUNO/ジュノ』: アカデミー賞作品賞のノミネート5作品の最後の1本である。噂にたがわず,キュートで胸に残るいい映画だ。素晴らしい脚本と主人公の汚れなき演技は新鮮で,楽しくもあり,人生を見つめ直す清涼剤のようだ。妊娠し出産を決意する16歳の少女の決意や彼女を見守る周囲の反応に,年配の女性観客はカルチャーショックを受けていた。その一方で,彼女が彼氏や父親に求める「父性への憧れ」に,世のオヤジ族は胸に手を当てて考え込むだろう。この映画には,アコースティック・ギターの響きがとても良く似合う。張り詰めた多忙な日々を送る人々に,一度Unplugged状態になってみてはと語りかけるかのようだ。
 ■『ダイブ!!』  :直木賞作家森絵都のベストセラー小説を映画化したスポ根&青春映画だ。弱小ダイビングクラブの存続を賭け,五輪出場枠をめざす少年ダイバーたちの姿を描く。最後の試合がクライマックスなのは当然だが,刻一刻迫るエンディングへの盛り上げ方が上手い。少年3人の個性の描き分けも巧みだ。起承転結が明快,ストレート勝負の明るい映画で,96分に青春と人生が詰まっている。監督は熊澤尚人。
   
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