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O plus E誌 2007年1月号掲載
 
 
インビジブル2
(デスティネーション・フィルムズ
/SPE配給)
 
      (C)2006 DESTINATION FILMS DISTRIBUTION COMPANY, INC.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [12月23日より銀座シネパトスほか全国順次公開]   2006年12月9日  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  続編は低予算のB級作品で苦戦  
 

 6年前公開のVFXの意欲作『インビジブル』(00年10月号)を覚えておられる読者も少なくないだろう。原題は『Hollow Man』(空洞の男)で,人間の体内が順次透けて行く様子の描写は出色だった。何度も映画化されている透明人間ものとしては異彩を放っていた。北米では2週連続でBox Office 成績第1位にランクされ,夏のスマッシュ・ヒットとなったのも頷ける。
 斬新な透明化過程の表現はもちろんCG技術によるもので,解剖学の知識を駆使して,見事に人体内部を可視化していた。『グラディエーター』(00年7月号)『パーフェクト ストーム』(同8月号)とともに,アカデミー賞視覚効果部門にノミネートされた。作品全体の評価が影響して『グラディエーター』(00年7月号)に破れてオスカーは逃したが,技術だけなら圧倒的に勝っていたと思う。この年はVFXの秀作が多く,『スチュアート・リトル』(00年6月号)『102』(01年3月号)なども含めて,CG/VFX史を飾る秀作が登場している。筆者は,世紀の変わり目のこの一連の作品のCG表現力向上が,その後の映画の作り方を変えたと評価している。
 本作品の原題は『Hollow Man II』で,冒頭では旧作での透明化の過程が流されるから,正当な後継作品と位置づけられている。ただし,前作の監督,鬼才ポール・バーホーベンは製作総指揮に回り,クラウディオ・ファエなる無名の監督にメガホンを譲っている。主演,助演陣にも馴染みの名はなく,見るからに低予算で製作された典型的B級作品に成り下がった。いつ米国で公開されたかの情報もない。
 前作で一旦頓挫した国防総省の透明人間化計画が再開され,技術の完成とともに副作用の緩和剤も開発された。軍の特殊部隊の隊員が透明人間化され,既に一般社会に潜んでいるとの想定だ。映画の冒頭から,いきなり姿が見えない人間による暴力と殺人が始まる。彼がつけ狙う女性科学者と真相を追及する刑事は,陰謀を抱く軍幹部と警察にも追われ,2人の逃避行が始まる……。どこかで観たような平凡で平均的な展開で,意外性はない。
 製作費激減で,前作と打って変わってCG/VFXの利用シーンはごく僅かしかない。一瞬だけ登場する透明化途中のシーン(写真1)と,水のごとき半透明状態に見せる描写だけである。後者は前作にも登場した表現方法で,クライマックス部分では2人の透明人間の戦いに使われていた。前作ではMoCapは使わなかったというが,今回はMoCap抜きには実現できなかっただろう。
 後半のストーリー運びはハリウッド水準だが,透明人間映画の面白さはあまりない。もっとVFX予算さえ確保できていれば,ずっと面白くなったのにと惜しまれる。その中で強いて美点を上げれば,透明人間に襲われる人物の演技が真に迫っていた。グリーンスーツを着た人間の部分を背景で埋めた処理や,ワイヤーによる特殊効果もあるのだろうが,襲われたかのような独り芝居も熱が入っていた。低予算ゆえの涙ぐましい努力だ。  

     
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写真1 一瞬だけ登場する透明化途中の顏のシーン
(C)2006 DESTINATION FILMS DISTRIBUTION COMPANY, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
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