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O plus E誌 2001年3月号掲載
 
 
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『102(ワン・オー・ツー)』
(ウォルト・ディズニー映画/ブエナビスタ配給)
 
(c) DISNEY ENTERPRISES,INC.
       
      (2001/1/21 ブエナビスタ試写室)  
         
     
  名作のリメイクの続編  
   子供の頃見たテレビ番組やディズニーアニメは,いつまでも心に残っている。筆者らのような娯楽が少なかった時代は尚更だ。白地に黒のブチ模様のダルメシアン犬が多数登場する『101匹わんちゃん大行進』(1961)は楽しかったし,『眠れる森の美女 』(1959)は色がことさらキレイだったという覚えがある。
 現在セルビデオやレンタルビデオで見られるものは『101匹わんちゃん』と改題されているし,その実写版リメイクは単に『101』(1996)だ。区別しやすくていいが原題はすべて『101 Dalmatians』である。そして,その続編がこの『102』だ。こうした企画がまかり通るのは,親の世代に昔の名作の想い出があり,ついでに旧作のビデオも売れるからだろう。
 今回,この機会にとアニメ版も実写版『101』も見直してみたが,随分記憶はいい加減だった。ストーリーは『わんわん物語』(1955)とまぜこぜで覚えていた。ま,どちらも名作ではあるが。
 さて,続編の『102』である。主演は,前作に引き続き悪女クルエラ・デ・ビル役を演じるグレン・クローズ。製作は『101』と同じくエドワード・S・フェルドマンだが,監督は『ターザン』のケビン・リマで,彼にとってはこれが実写映画の初監督作品である。もう一方の主役は,101+1匹目の,どういう訳かダルメシアンの象徴の黒いブチ柄のない子犬のオッドである。
 物語は,前作でダルメシアンの子犬で毛皮を作ろうとし,誘拐の罪で逮捕されて服役中のクルエラが,模範囚として釈放されるところから始まる。何と,すっかり改心し愛犬家となった彼女は,恵まれない犬たちのシェルターを支援する動物愛護家となって脚光を浴びる。ところが,ロンドン塔の鐘の音がきっかけで,クルエラの邪悪な欲望が目を覚まし,再びダルメシアンをさらって毛皮を作ろうとする。この難を逃れたのはただ一匹。黒い斑点がないお陰で身逃されたオッドが,誘拐された101匹を救わんとクルエラの野望に立ち向う,というストーリーである。
 子供向きのディズニー映画らしく,動物たちと人間との触れ合い,悪人をやっつける展開はいつもの通りで,可もなく不可もない。共演陣では,犬シェルターの経営者ケヴィン(イオン・グラファド)と女性監察官のクロエ(アリス・エバンス)の若いカップルがいい。I・グラファドは表情が少し香取慎吾に似ている。A・エバンスは飛び切り可愛くて,これが出世作となるだろう。ほのぼのとした2人のデートのシーンには,笑いかつ感激してしまった。『わんわん物語』のあの名場面,レディとトランプが1本のスパゲッティを両側から食べるあのシーンを2人が演じる。どうやら,筆者のような団塊の世代が『101匹わんちゃん』と『わんわん物語』を混同しているのをお見通しの上でのパロディのようだ。
 
 
写真1 ディジタル・オッドの作り方.それにしても見事な出来栄えだ.
(c) DISNEY ENTERPRISES,INC.
     
  そこまでやるか,ブチ取りだけで50人  
   見どころは,クルエラの絢爛豪華な衣装と,オッドちゃんをはじめとするダルメシアン犬をCGで描く実力だ。
 衣装デザイナーは,3度のオスカーに輝き,昨年ハリウッド衣装デザイナー協会から特別功労賞を与えられたアンソニー・パウエル。ハリウッド映画でこの役どころとはいえ,本当に凄い。よくもまぁこんな衣装を思いつくものだ。
 約350ショットの視覚効果担当は,『ダイナソー』製作時に結成されたThe Secret Lab (TSL)だ。前作では数々のイフェクト・ショットをILMが担当したが,あれから4年,TSLの実力は予想を遥かに上回るVFXを見せてくれた。
 写真1の最後の画像は驚異的だ。 毎日犬と暮らしている犬好きでも,前の4枚を見せられるまでこれがCGだとは信じなかった。ダルメシアンの肌の所々はピンクがかっているが,この色を予め基調として,その上から毛を描いていることがよく分かる。ロボットやエイリアンは何が本物か分からないが,犬や猫の表情や動きは人間に身近なだけに誤魔化しが利かない。恐竜を1匹ずつ筋肉モデルから生成し動かしたTSL社のVFX技術は,早くもこれをクリアできるレベルに達してしまった。映画の出来栄えがどうあれ,本欄としてはを与えざるを得ない。
 本物の犬を使えばいいと思うのに,なぜこれをCGで描くのかといえば,それがハリウッドのこだわりである。黒い斑点がなければ只の雑種の白犬としか見えないオッドにも,本物のダルメシアンの子犬を使い,その登場シーンではディジタル処理で斑点を取り除いたという。エンドロールを見ていたら,Digital Spot Removerという役目だけで約50人の名前が上がっていた。いやはや,よくぞそこまでやるものだ。写真2の犬たちは,どれがCGでどれが実写か,区別がつくだろうか?
 
     
 
写真2 黒い斑点のないオッドは,本物の白犬か,ディジタル染み抜きの結果か,それともCGで作成したものか?(答は文末にあります.)
写真3 こうして頭数を増やすのも,塗りまくるのもディジタル加工技術の産物.
(c) DISNEY ENTERPRISES,INC.
   
 本物を使うといっても子犬の成長は早いから,オッド役には11匹が用意された。その内何匹かは斑点が多く,これを取り除くよりもCGで描いたほうが早いという訳だ。恐れ入る。もちろん,CGのオッドの用途はそれだけでなく,動きの激しいアクション・シーン,コンゴウインコに助けられてぶら下がるシーンなどもCGだろう。これは,訓練された犬でも難しいという面もあるが,「いやこれはCGです。犬にこんな過酷な動作はさせていません」という動物愛護団体への言い訳けにもなっているようだ。
 このインコのしゃべる口元や写真3左の多数のダルメシアンなどは,当然VFXの定番処理である。斑点をとるだけでなく,写真3右のロンドンのブチ模様などは,洒落っ気とはいえ,相当な時間がかかったに違いない。この呆れた手間ヒマのかけようがハリウッドだ。とりわけディズニーはチャレンジが好きだから,TSLの動きにはこれからも目が放せない。
 
   
  (写真2の答え:左の写真のオッドは首から上だけCG.この前後のショットでは前身が映る.他のダルメシアたちは実物)  
   
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