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O plus E誌 2007年1月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『イカとクジラ』:突如離婚した共に作家の両親と共同監護される16歳と12歳の兄弟。4人とも不器用な「不完全家族」に,観客も苛立ち,かつ笑いを禁じ得ない。各種映画祭の脚本賞に輝くだけあって,練れたセリフの数々は批評家好みだ。両親よりも兄弟を演じた2人の演技が光っていたが,こうしたアメリカ流崩壊家庭にはどうも感情移入できない。
 ■『リトル・ミス・サンシャイン』:こちらはギクシャクした親子4人にヘロイン中毒で毒舌の祖父,自殺未遂でゲイの伯父が加わった「機能不全家族」の物語。『イカとクジラ』以上に,何でこんな不愉快な家族会話を聞かせるんだと思いきや,美少女コンテストをめざしてミニバスで移動するロードムービーに移ってテンポは快調だ。「勝ち組」「負け組」を定義する祖父の言葉が印象深く,家族の絆を取り戻す描写は心地よい。それにしても,実在の出場者を集めたという幼児ミスコンの審査風景は,何と不気味で醜悪なことか!
 ■『幸福な食卓』:「父さんは,今日で父さんを辞めようと思う」という父親の発言で始まる,これまた家族崩壊の物語で,吉川英治文学新人賞受賞作の映画化作品。上記2本に比べて,いかにも邦画らしい,かったるいスローペースで展開する。主人公佐和子の喜びや悲しみには感情移入できるが,父親と母親の心情は不可解で筆者にはついて行けない。「家族」を考えるのに,3本全部観るのも一興だろう。
 ■『マリー・アントワネット』:女性監督(ソフィア・コッポラ)が撮った女性観客のための映画。試写室も中高年女性が目立った。実際にヴェルサイユ宮殿で撮影された宮廷の様子,豪華な衣裳,華麗な帽子と靴,料理とケーキ,そしてイケメンのフェルゼン伯爵との恋。とにかくゴージャス。世界で最も有名な王妃の新しい一面も描いているが,物語はまぁどうでも宜しい。
 ■『大奥』:NHK大河ドラマ『功名が辻』が終わった途端に,人気絶頂の仲間由紀恵を主演にすえた映画とは,そのビジネスセンスに感心した。商売下手の東映らしからぬと思ったら,やっぱりフジテレビの亀山千広プロデューサの企画作品だった。J.ブラッカイマーに比べると辣腕ぶりは控えめだが,悪名高い絵島生島事件をこんなラブロマンスに仕立てるとは,女性観客の心を掴んでいる。何しろ絢爛豪華で,まさに和製『マリー・アントワネット』だ。ならば,生島新五郎役には,男でもハッとするような美男俳優を起用して欲しかったところだ。水曜日のシネコンを満員にする1,000円の価値は十分にある。ただし,他の曜日で1,800円なら考えものだが。

(『大奥』は, 締切りに間に合わず,O plus Eには非掲載です)
     
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