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O plus E誌 2006年2月号掲載
 
 
フライトプラン』
(タッチストーン・ピクチャーズ
/ブエナビスタ配給)
      (c)TOUCHSTONE PICTURES  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月28日より丸の内ピカデリーほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2005年11月17日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新型ジャンボ機の機内デザインとカメラワークに注目  
 

 こちらはぐっと趣きが変わり,飛行機を舞台とした素直なパニック映画,サスペンス・アクション映画だ。素直過ぎて評論に困るので,批評家は高得点をつけないだろうが,そう話題作でもないのに北米Box Office成績は2週連続No.1の座に輝いている。観客はお金を払って楽しむ映画をよく知っているなと感じる。
 主演は3年ぶりのジョディ・フォスター。『ロング・エンゲージメント』(05年3月号)の思わぬシーンでチョイ役として登場するのには驚いたが,本作では,忽然と姿を消した一人娘を探して,卑劣な敵と戦うスーパーレディぶりを堪能させてくれる。前主演作『パニック・ルーム』 (02年5月号)も一人娘を守る母親役だったが,誇大広告の割にはパニック度は今イチだった。この映画の方がずっと緊迫度は高く,良質のエンターテインメントに仕上がっている。
 姿を消した娘を探す母親の苦悩,自分の妄想かという疑念は,ジュリアン・ムーア主演の『フォーガットン』(05年6月号)も同じだった。もっとも,神隠しの原因をあんな荒唐無稽な種明かしで片づけてしまうのではなく,本作はもっと納得の行く解決法になっている。そう言えば,この女傑2人は,J ・フォスターが当たり役『羊たちの沈黙』(91) の「スターリング捜査官」を降版した後,J ・ムーアが続編『ハンニバル』 (01年4月号) で演じるという関係だった。これも何かの因縁だろう。
 本作での役柄は,女性航空機設計士だ。夫を事故で亡くし,遺体を乗せた最新鋭ジャンボ旅客機で帰国途中に,彼女が仮眠している間に隣にいたはずの愛娘の姿を消す。乗務員も他の旅客も誰も姿を観た者はいない。飛行中の旅客機と密室で,一体何が起こったのか……。自分が設計した飛行機だけに,内部構造を熟知する彼女は縦横無尽に機内を駆け回って敵と対峙する。FBI捜査官でもない一介の設計士が,なぜここまでの戦闘能力があるのかは不思議だが,彼女の形相を見れば,そんな疑問点は吹っ飛んでしまう。さすが鉄の女の面目躍如だ。共演は,エアマーシャル(私服航空保安官)役に『K-19』(02) のピーター・サースガード,機長役に『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでボロミア役を務めたショーン・ビーンだが,彼らの存在感は薄かった。
 この映画のもう1つの主役は,580もの客席をもつ最新型ハイテク巨大旅客機だ。アルト航空E-474機と名付けられているが,ボーイング747ジャンボの後継機でも,エアバスの新型機でもなく,この映画のためにデザインされた架空の飛行機である。総2階建ての重層構造なので,外観のデザインに面白味はないが,螺旋階段や各階に広いラウンジと厨房をもつ豪華な機内が見ものだ。近代的なコクピットのデザインや,通常は見られない階下の貨物室内を克明に見せてくれるのも嬉しい。
 VFXの担当はCIS Hollywood社。実在しない航空機だから,その離着陸や飛行シーンは当然CG映像の産物だ。ただし,視覚効果の出番はそう多くない。むしろ映像的な見どころは,巨大セット内に制作した客室や貨物室の実在感だ(写真 1)。本物の機内ならとても撮れない位置でのカメラワークも見逃せない。客室内の通路は狭いので,天井にレールを設けカメラ搭載ドリーを移動させたという。それには,予め機内のCADデータを利用して,かなりの部分PreVizでカメラワークを試していたと考えられる。エンドクレジットでは,この飛行機の機体や機内のワイヤーフレーム画像が配されていたから,ほぼすべてがCADで設計されていたことも分かる。

 
     
 
 
 
写真2 機体セットは巨大スタジオに16週間かけて作られた。その制作風景(左)と客席の撮影風景(右)。
(c)TOUCHSTONE PICTURES
 
     
 

 映画全体のかなりの部分が機内での出来事で描かれているが,「飛行計画」はあまり関与していないから『フライトプラン』というタイトルはそぐわない。それならいっそ『エアポート2006』とでも題して欲しかったところだ。製作会社/配給会社が違うから,かつてのあの飛行サスペンス・シリーズ名は名乗れないのだろうが,オールドファンとしてはその正統な後継作品のように感じて嬉しい一作だった。            

 
          
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