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O plus
E誌 1999年12月号掲載 |
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『ワイルド・ワイルド・ウエスト』 |
(ワーナー・ブラザース映画) |
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(c)
1999 Warner Bros. All Rights Reserved |
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(1999/11/2 ワーナー試写室)
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ILMの視覚効果は上質 |
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98年度のハリウッド大手の作品の平均製作費は約5,300万ドル,広告宣伝費は約2,500万ドルだという。この秋の邦画のヒット作『金融腐蝕列島呪縛』の製作費は約3.5億円というから,完全に1桁以上違う。『タイタニック』の2億ドルは史上最大の別格としても,その後の『ゴジラ』『アルマゲドン』にはかなりかかっているし,『スター・ウォーズ
エピソード1/ファントム・メナス』に1億3千万ドルが投じられている。このSFX時評で紹介する作品は,いずれもCG/VFXでかなりの製作費を使っていると考えてよい。
リスク分散を図りたいメジャーは,他社に相乗り(共同出資)を求める。『タイタニック』ではパラマウントの出資を仰ぎ,米国内での放映権を譲ってしまった20世紀フォックスは,後で大いに悔やんだというが,当たり外れがあるからこそ興行である。
1億ドルの製作費をかけたがパートナーが見つからず,ワーナー1社で臨んだこの『ワイルド・ワイルド・ウエスト(WWW)』は,7月4日の独立記念日休暇に公開され,やっぱりコケた作品との評判だった。それでも前宣伝が効を奏してか,何とか週末興行成績のNo.1は確保している。米国内では最初の週末が勝負とされているが,今年の夏は力作のオンパレードで,『SWエピソード1』が首位を明け渡してから『シックス・センス』が登場するまで週替わりの首位交替(表1参照)が続いた(ちなみに『タイタニック』は97年から98年にかけて15週連続No.1であった)。この『WWW』は,99年度全体の興収で第11位(10月末現在)の稼ぎだから,そんなに惨敗だったわけではない。
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表1 全米週末興行成績
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期間 |
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第1位作品 |
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収入(ドル) |
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99/06/04-06/06 |
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スター・ウォーズ エピソード1 |
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32,891,653 |
99/06/11-06/13 |
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オースティン・パワーズ/デラックス |
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54,917,604 |
99/06/18-06/20 |
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ターザン |
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34,221,968 |
99/06/25-06/27 |
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ビッグ・ダディ |
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41,536,370 |
99/07/02-07/05 |
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ワイルド・ワイルド・ウェスト |
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36,434,750 |
99/07/09-07/11 |
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アメリカン・パイ |
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18,709,680 |
99/07/16-07/18 |
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アイズ・ワイド・シャット |
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21,706,163 |
99/07/23-07/25 |
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ホーンティング |
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33,435,140 |
99/07/30-08/01 |
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プリティ・ブライド |
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35,055,556 |
99/08/06-08/08 |
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シックス・センス |
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26,681,262 |
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夏シーズンの公開作品は既に次々と日本でも公開されているのに,ワーナー・ブラザースはこの作品を正月映画まで眠らせた。『SWエピソード1』のほとぼりが醒めた頃に『マトリックス』を持って来て成功したので,ウィル・スミスの人気を当て込んで正月用にとっておいたのだろう。
『インデペンデンス・デイ(ID4)』『メン・イン・ブラック(MIB)』で一躍スターダムにのし上がったウィル・スミスが主演で,黒人が主役の特撮満載の西部劇という設定は,なるほどめでたい正月映画向きである。
映画評論家からの評判もよくなかったので余り期待していなかったが,結構面 白かった。B級活劇としては十分楽しめる。屠蘇気分で出かける正月映画には悪くないし,週末のビデオ・レンタルではヒットするだろう。TVの「日曜洋画劇場」なら,途中まで寝ていても,後半だけでも楽しく見られるはずだ。
映画としての出来はさておき,SFXはかなりのものである。質・量 ともに見ごたえがあった。最大の見所は,蒸気で動く高さ25mの蜘蛛型戦車「タランチュラ」である。これは,なかなか良くできていた。動きも,炎や砂塵とのマッチングも丁寧に処理されている(写真)。 |
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(a)「タランチュラ」は粗いポリゴンで合成し細部はあとで書き込むという2段構え。 |
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(b)街は模型と実物大の併用。炎は合成。 |
写真 ワイルド・ワイルド・ウエスト (c)
1999 Warner Bros. All Rights Reserved |
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スチル写真がなく残念だが,悪の帝王ラブレス博士は上半身しかなく,下半身はマシンという設定で頻繁に登場する。下半身をディジタル後処理で消す作業は,既に『フォレスト・ガンプ/一期一会』のダン少尉でも試みられている。このラブレス博士は下半身を消したのか,それとも上半身をはめ込み合成したのか?注意深く観察したが,恐らくその両方を使い分けていると思われる。3Dマッチムーブの処理も,さすが老舗ILMの上質の仕上げである。
この時期のILMは,オーナーであるルーカス監督の『SW エピソード1』に大勢力を割かれながらも,『ハムナプトラ』と,この『WWW』を同時進行で手がけている。技術的には,『ハムナプトラ』のミイラの動きや砂の中から現れる人の顔が話題になったが,本作品のVFXもかなり見事である。『WWW』担当チームは,『SW
エピソード1』に負けじと頑張ったと思われる。SFX史にとってエポック・メイキングではないが,こういう良質な仕上げこそプロの技であり,産業として安定してきた証しと評価できるだろう。 |
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( SPIDER) |
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映画も音楽もリメイクもの |
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映画の評判はともかく,主題歌は大ヒットしていますよ。ラップ・ミュージックの番組では必ずといっていいくらい流れています。 |
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私らの世代には縁がないなあ。 |
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スティービー・ワンダーの曲のリメイクのようですよ。 |
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スティービー・ワンダーなら知っています。初めはリトル・スティービー・ワンダーって言ったんですけどね。 |
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へぇー。 |
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この映画の原作も丁度その頃,1960年代の人気TVシリーズだったとのことです。 |
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『WWW』というから,インターネット時代に引っかけたのかと思ったら,これもリメイクなんですか。 |
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アメリカのTV映画のほとんどが日本の茶の間に流れていたのは1960年代前半だったから,この作品は知りませんね。でも,アメリカのお父さん達には,きっと青春の想い出がいっぱい詰まっているのでしょう。
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「西部劇の007」というのは当たってましたね。特別 捜査官が悪の権化をやっつけるだけのストーリーで,大道具や小道具もいろいろ出てきました。
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救出した美女と結ばれないのが違ってましたけどね(笑)。エージェント2人の凹凸 コンビの掛合いの方がウリだから,「MIBの西部劇版」という表現も当たってます。ウィル・スミス主演,バリー・ソネンフェルド監督のコンビは,『MIB』で大当たりしたから,そのイメージで押したかったんでしょう。
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でも,前半のドタバタは悪ノリで,ちっとも面 白くなく退屈でした。後半のアクションはいいテンポで楽しめました。
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ダジャレとスラングの連発で,字幕スーパーはかなり苦労していましたね。セリフと字幕のタイミングが合っていなかったのも,面
白くない一因かと思います。
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特撮には随分お金がかかっているのが感じられました。
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エンドロールを見たら,スタントマンの数は凄かったですね。確かにかかっています。
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CGのレベルも高いんでしょう?
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タランチュラが吐き出す黒煙は,いかにもパーティクルで処理してるって感じでやや不自然だったけど,他はかなり良質だったと思います。あれだけのポリゴン数のものを平気で動かすのですから,CG技術の進歩は大したものだと改めて感じましたね。
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何か賞を取りそうですか?
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うーん,来年のアカデミー視覚効果 賞は『マトリックス』と『SWエピソード1』の一騎打ちだろうから,これは無理でしょうね。『ハムナプトラ』と『WWW』は,露払いと太刀持ちと行ったところでしょう。
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でも,お正月映画の娯楽作品としては合格点ですね。
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相手はシュワちゃんの『エンド・オブ・デイズ』かな? 『ターザン』や『ゴジラ2000』とは競合しないでしょう。
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