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O plus E誌 1999年12月号掲載
 
 
『エンカウンター3D』
(nWAVE Pictures 製作,IMAX配給)
 
       
      (1999/10/12 東京アイマックス・シアター)  
         
     
   1999年7月から東京アイマックス・シアター,大阪・天保山のサントリー・ミュージアムで公開されていたが,IMAXシアターは同じ作品が長い期間上映されているので,しばらく見に行かずに済ませていた。原題は『Encounter in the Third Dimension』である。題名通りに,3D映像に興味のある読者には必見の作品である。両館ともまだしばらく上映しているので,遅ればせながら紹介しておこう。
 ストーリーは,3D技術研究所の博士(スチュアート・パンキン)と助手のロボット「マックス」の掛け合いで3D映像の歴史を解説するという設定だ。古代エジプトの平面 的な壁画に始まり,ルネッサンス期の遠近法,1938年のホイートストンのステレオスコープの発明へと続く。次いで,ルミエール兄弟による立体版『列車の到着』(1903)を再現してくれたのは嬉しかった。1895年末の世界初の劇場映画である2D版は,映画史の中でもよくお目にかかるが,その8年後の3D版を見るのは初めてである(テレビ放送では再現できないから当然とも言えるが")。この列車が次第にカラーになり,IMAXフルスクリーンに飛び出してくるのは,もちろんCG映像と巧みにつないであるからである。
 1952〜54年にハリウッドで一大ブームとなった3D映画の主要作品の再現が見られたのも貴重な体験だった。伝説のコメディアン・コンビ,ディーン・マーティンとジェリー・ルイスの主演作も3Dで登場する。1960年代以降しか同時代体験していない筆者にとっては,ディーン・マーティンは既にシナトラ一家の渋い中堅俳優であり,「Everybody Loves Somebody」の大ヒットを飛ばした歌手であった。
 シミュレーション・ライドシアターの作品で活躍するベン・スタッセン監督らしく,テーマパーク・アトラクションの3D映像もたっぷり見せてくれる。『デビルズ・マイン・ライド』『恐竜島の脱出』,そして圧巻はユニバーサル・スタジオにある『ターミネーター2-3D/バトル・アクロス・ザ・タイム』である。このT-100000型ロボットの3D映像がいかによくできているかも再確認した。
 博士の他に登場するのは,闇の世界の女王エルヴァイラだけである。この2人だけが本物の俳優,実写で,他はすべてCG製のスタジオと思われる(前景に登場する一部の大道具は実写 だったかもしれない)。CGのレベルも実写との合成も水準以上である。残念なのは,3Dで見ると画面が暗くなることだ。2Dで見たこの映画の予告編は十分明るかった。大半がCGなら,光量が半減することを考慮して,明るさを事前調整できたはずである。
 IMAX映画は,ドキュメンタリーには迫力のある優れた作品が少なくないが,3Dで劇映画となると駄 作ばかりだ。その点,フィクション仕立てでも,内容的にはドキュメンタリーの本作品はうまく仕上がっていたと思う。博士とマックスの日本語吹替えに,コメディアンの爆笑問題(太田光+田中裕二)を起用したのも大正解だろう。テンポもノリも,もとの英語よりも素晴らしかった。ただし,3D映画史の教育的効果 を重視するなら,技術解説部分はもう少し長く丁寧な作りでも良かったのではと感じた。
 液晶シャッタ・メガネの装着は,いつものことながら重くて前頭部が疲れる。立体映像は目が疲れるのは覚悟の上だったが,今回はかなり気分も悪くなった。『T2-3D』の次に,新作3Dライド『Journey Through the Center of the Earth 』の長いシーンが挿入されている。モーション・ライド用のこの作品では,ジェット・コースター風の空間移動が延々と続いた。シミュレーション・ライドで酔いを感じやすいのは,同じ場所で椅子(モーションベース)だけが急激に動くからだとされている。いわば,本物のGを感じずにニセの動きが与えられるからである。今回は椅子は動かない映画館だったのに,視覚刺激だけでもそれに近くなることを身をもって体験した。まるでVR酔いの人体実験である。
 このマイナス面を除いても,この映画は3D映像の魅力満載のエンターテインメントである。ウィークデー朝一番の東京アイマックス・シアターは,劇場経営が心配になるくらいガラガラだった。博覧会やテーマパークでの3Dアトラクションには長蛇の列ができる。そこに並ぶくらいなら,その何倍も楽しいこの作品にもっとお客が入っても良いと思うのだが...。
 
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