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O plus E誌 1999年11月号掲載
 
 
『ディープ・ブルー』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
(c) 1999 Warner Bros. All Right Reserved
       
      (1999/9/11 ワーナー試写室)  
         
     
  3匹でも十分怖い  
   原題は『Deep Blue Sea』。数年前に観たIMAX3D映画『ブルー・オアシス』(原題:Into The Deep)は,海中生物の生態が立体映像でキレイに描いてあった。題名は紛らわしいが,中身は似ても似つかないパニック映画だ。
 人喰い鮫の恐怖というと『ジョーズ』の五番煎じか十番煎じかと想像するが,パニック映画としての仕上がりはかなり良く出来ていた。遺伝子操作により巨大化し知能を持った鮫が逃げ出すという設定から『ジョーズ』+『ジュラシック・パーク』という宣伝文句だが,沈み行く密室から海上への脱出という点では名作『ポセイドン・アドベンチャー』を彷彿とさせる。
 監督は『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』のレニー・ハーリン。アクション映画のツボを心得ているだけあって,娯楽作品としての魅力は満載だ。この映画がヒットしないとしたら,タイトルにパンチが欠けるのと,キャスティングが地味だからだろう。『ダイ・ハード3』『交渉人』のサミュエル・L・ジャクソンと黒人人気シンガーのLL・クール・Jといった脇役は悪くないが,主演の男女(トーマス・ジェーンとサフロン・バローズ)にもう少し目立つ俳優を使っても良かったかと思う。
 ストーリーは単純明快。アルツハイマー病の特効薬開発に人喰い鮫マコシャークの改造実験を試みているが,その海洋医学研究施設がふとした事故から破壊され海中に沈下する。生存者達は,逃げ出した鮫と押し寄せる水の恐怖の中を水上へ脱出行を試みる,という設定だ。
 見せ場のSFXは,もちろん水と鮫の処理だ。『タイタニック』の撮影用にメキシコ・バハに作られた巨大スタジオに,今度は本作品の施設アクアティカを建設し,同じタンクや浄水施設を再利用したという。一方,鮫の動きは『フリー・ウィリー』で得たアニマトロニクス操作とCGの鮫を使い分けている(写真)。いずれか判別しにくいところもあるが,全体としてCGは少なく,アニマトロニクスの方が多かったように感じた。
写真 この鮫はアニマトロニクスかと思ったがILM製のCGらしい
(c) 1999 Warner Bros. All Right Reserved

 CGの鮫は『スター・ウォーズ エピソード1』の数々のクリーチャーに比べて遥かにシンプルだし,恐竜やゴジラよりも表情と皮膚も簡単だ。それでも,アニマトロニクスで十分なところにCGを使う必要はない。CG向きといえば,数十〜数百匹をずらっと並べたり,空中に舞い上がらせることだろうが,この映画にその必要性は感じなかった。怖さは3匹でも十二分だった。レニー・ハーリン監督はハイテク通とは思えないが,それでもこれだけのSFXが使えたのは,過去の作品からの蓄積,ハリウッド全体のレベルアップのお陰である。視覚効果担当には,シネサイト,ILM,マネックス1)等の名があったが,エンドロールを最後まで見てもVFX技術者の名は多くなかった。必要なところを少しずつ外注に出したのだろう。
 G・ルーカスのようにCGを多用することばかり考えていないで,監督は演出に専念していれば,面 白い作品になるという見本である。
 娯楽作品であるが,DNA操作と新薬製造への批判と警鐘も含まれている。あまり強いメッセージでなく,嫌みでないところに却ってズキリと来る。女主人公の医学者スーザンが,迫り来る鮫を前にしてなお実験データを追う姿に,醜さよりもシンパシーを感じてしまった。これは,筆者が映画評論家でなく,根が研究者のためだろうか。
 
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  誰が食べられるかはお楽しみに  
 
『タイタニック』の撮影スタジオは,あの後壊したのかと思ったのですが,まだ残っていたのですね。
世界最新鋭の水中撮影施設として,この作品以外にも予約がギッシリだそうですよ。毎分9,000ガロンの海水を流し込める設備や,タンク内を自由に上下する水圧式の昇降デッキがあるんです。J・キャメロンが20世紀フォックスを説得して作らせたものです。
そのお陰でこの映画があるんですね。そういえば,『タイタニック』に似てるシーンも沢山ありました。物がプカプカ浮いている感じや,廊下を押し寄せる水など,そっくりです。
水圧とか照明とかで,どことなく似てくるんでしょう。CGによる水処理も同じソフトを使ったようで,この効果 も見事でした。
CGの鮫はそう多くなかったみたいですね。
当初CGの予定だったところも,アニマトロニクスの出来がいいので,そちらを使ったようです。それでも十分怖かったでしょ?
先月号の『ホーンティング』より,ずっと怖いですよ。この映画も音がすごくて,いきなりドーン,ガバっと来るので心臓に良くないです (笑)。
この恐怖心が高まるのは,ストーリー展開の意外性もあるでしょう。順次食べられて行くのは分かっているけど,普通の映画なら助かると思っている人物が殺されちゃうから…。
そうですね。今度は自分の番かと,客観的に観てられませんね。誰が生き残るかは,言えませんが…。
登場人物の中では,LL・クール・Jが好かったでしょう。
ええ,あのヒップホップの大スターが,こんなところでも活躍しているとは思いませんでした。彼の歌が最後に何曲も流れるのもいいですね。劇場で観るにもレンタルビデオで観るにもオススメの映画です。
今回は水野さんには逢わなかったけれど。「いやぁ〜本当に面白いですねぇ。それではまたご一緒に楽しみましょう」といったところでしょう (笑)。
 
   
  用語解説  
     
 
  1. マネックス:『奇蹟の輝き』でアカデミー視覚効果賞を受賞し,『マトリックス』の 視覚効果でも話題を呼んだ今最も注目を集めている特撮スタジオ。
 
   
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