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O plus E 2021年11・12月号掲載
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「ディア・エヴァン・ハンセン - オリジナル・サウンドトラック」
(Universal Music)

   
 
国内盤 輸入盤
 
 
  国内盤は映画公開日に発売予定だが,輸入盤やデジタル配信と同じ全16曲収録で,ボーナストラックはないようだ。舞台での歌唱曲の内4曲が映画では使用されず,新たな2曲☆が劇中歌われていた。即ち,既存曲9,新曲2の計11曲だが,エンドロールで流れる曲を含め,プロ歌手による収録版★が5曲ある。

1. “Waving Through A Window”  Ben Platt
2. “For Forever”  Ben Platt
3. “Sincerely Me”  Colton Ryan & Ben Platt & Nik Dodani
4. “Requiem”  Kaitlyn Dever & Danny Pino & Amy Adams
5. “If I Could Tell Her”  Ben Platt & Kaitlyn Dever
6. “The Anonymous Ones”☆  Amandla Stenberg
7. “You Will Be Found”  Ben Platt & Amandla Stenberg & Dear Evan Hansen Choir
8. “Only Us”  Kaitlyn Dever & Ben Platt
9. “Words Fail”  Ben Platt
10. “So Big / So Small”  Julianne Moore
11. “A Little Closer”☆  Colton Ryan
12. “You Will Be Found”★  Sam Smith & Summer Walker
13. “The Anonymous Ones”★  SZA
14. “Only Us”★  Carrie Underwood & Dan + Shay
15. “A Little Closer”★  FINNEAS
16. “Waving Through A Window”★  Tori Kelly

 ミュージカル映画であるのに会話シーンが多く,歌唱パートが少ないなという印象であったが,舞台オリジナルキャスト版がグラミー賞を得ただけあって,佳曲揃いである。音楽担当は,ベンジ・パセックとジャスティン・ポールで,映画音楽としては,『ラ・ラ・ランド』(17年3月号)と『グレイテスト・ショーマン』(18年2月号)で成功を収めた。前者の主題歌“City Of Stars”はゴールデングローブ賞とアカデミー賞を受賞し,後者の“This Is Me”もゴールデングローブ賞を受賞している。そして,本作のブロードウェイ・ミュージカルにも挑戦して,さらなる大成功を収めた訳である。
 彼らが,映画版の新キャスト2人のために書き下ろした新曲は,校友アラナ役のAmandla Stenbergが歌う“The Anonymous Ones”と,自殺したコナー役のColton Ryanが歌う“A Little Closer”である。プロ歌手版では,それぞれSZAとFINNEASが歌っている。とりわけ,エンドロールで流れるSZAの歌唱が絶品だ。
 上記リストを見ても,エヴァン役のBen Plattの役割が大きいことが分かる。舞台からの継続主演だけあって,どの曲も歌い慣れている。大女優のAmy AdamsとJulianne Mooreが,吹替えでなく,自ら歌っているのが嬉しい。とりわけ,Julianne Mooreはソロでの歌唱だ。
 主題歌である“You Will Be Found”は,劇中では多数の友人達がコナーの追悼式で合唱している。エンドロールの最初に流れる同曲は,Sam Smith & Summer Walkerの切々とした歌唱が美しい。筆者のお気に入りは,劇中曲では恋人同士になったエヴァンとゾーイが歌う“Only Us”だ。映画のエンドロールにはクレジットされていなかったが,この曲をCarrie UnderwoodがDan + Shayを従えて歌う14曲目が,このサントラ盤のベスト1だと評価しておきたい。

 
   
 

■「I Still Believe (Original Motion Picture Soundtrack)」 
(Capitol Records)

   
 
 
 
  短評欄の最後に紹介した『君といた108日』のサウンドトラック・アルバムである。映画本編も最後に観て,何とか11・12月号に間に合わせたので,このアルバムを入手して聴いたのは本誌校了後のことだった。映画を思い出しつつ聴くのに適した聴き応えのあるサントラ・アルバムゆえ,映画公開に間に合うよう,Web上のこのコーナーで紹介しておく次第である。
 CDを探したが,国内盤も輸入盤もなく,Apple, Amazon, Spotify, mora, YouTube等のネット配信で入手できるだけだ。『ミス・マルクス』(21年7・8月号)もそうだったが,こうした場合,サントラ「盤」という言葉が使えない。手軽と言えば手軽だが,CDがないと何か淋しいし,購入した感じがしない。音楽業界のビジネスモデルが大きく変化していることを感じる。
 全17曲構成で以下の通りだが,最後のボーナストラックは日本国内用のサービスではなく,全世界共通である。

1. “I Still Believe”   KJ Apa
2. “Jeremy Says Goodbye”   John Debney
3. “This Man”  KJ Apa
4. “Take My Hand”  David Leonard
5. “Find Me In The River ”   KJ Apa & JJ Heller
6. “Some Stars Shine Brighter Than Others”  John Debney
7. “My Desire”  KJ Apa
8. “Dwelling Places (Dialog) ”  Cast Of I Still Believe
9. “Right Here”  KJ Apa
10. “Melissa Loves Jeremy”  John Debney
11. “You Call I'll Answer”  David Leonard
12. “Walk By Faith (Dialog)”  Cast Of I Still Believe
13. “Ancient Stories Still Relevant”  John Debney
14. “Hey, What's Your Name Again?”  John Debney
15. “Walk By Faith (2020 Version)”  Jeremy Camp
16. “I Still Believe (2020 Version)”  Jeremy Camp
17. “I Can't Save Myself (Bonus Track)”  Adrienne Camp

 John Debneyとクレジットされているのは,音楽担当の同氏が作曲したオリジナルスコアである。このアルバムには5曲しか収録されていないが,勿論,全編の劇伴BGMの一部で,印象的な美しい曲だけが選ばれている。(Dialog)と書かれているのが,恋愛中の男女の会話と歌が入っているシーンの再現で,こういうパートが入ったサントラ・アルバムは嬉しくなる。
 “I Still Believe”は映画の原題であり,主人公のジェレミー・キャンプの代表曲であり,映画の中では終盤のクライマックスであるステージで歌われている。本人のコンサートでも,亡き妻・メリサのことを語った後で歌う定番曲のようだ。この映画を観るまで,この歌手のことを知らなかったが,ゴールドディスク(50万枚販売)4枚の実績をもつシンガーソングライターとのことだ。Christian Music Singerと分類されているから,日本人での知名度が低いのも頷ける。劇中でKJ Apaが歌っている“This Man” “My Desire” “Right Here” “Walk By Faith”も,彼が作曲した代表曲である。
 15曲目と16曲目に,この映画の公開に合わせて収録された本人のセルフカバー2曲が収録されている。こうやって見ると,エンドロールで流れていたように思われるだろうが,映画では使われていない。正直なところ,聴き比べてみると,本人の歌よりもKJ Apaの歌唱の方がずっと魅力的だ。
 そして17曲目の“I Can't Save Myself”は,何と再婚相手で現夫人であるAdrienne Campの歌唱曲である。ネタバレになるので本編紹介では書かなかったが,エイドリアン夫人は映画中にも印象的な場面で登場する。元々歌手だけあって,ボーナストラックに収録して恥ずかしくない歌唱力だ。
 音質も良く,優れたアルバムでありながら,残念なことに,重要な2曲が欠けている。1つは,ジェレミーとメリッサの結婚式で流れるHaley Reinhart の“Can't Help Falling in Love”だ。言うまでもなく,エルヴィス・プレスリーのコンサートのエンドソングだが,この映画で使われていたHaley Reinhartの歌唱も味があった。もう1曲はエンドロールで流れるMercyMeの“Almost Home”だ。主人公のJeremy Campを従えて歌うデュエット・バージョンゆえに,是非このアルバムにも収録して欲しかったところだ。おそらく,版権の関係で入れられなかったのだろう。いずれもYouTubeにアップされているので,筆者はこの2曲を加えた自己編集アルバムとして聴いている。
 
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  [「ディア・エヴァン・ハンセン」はO plus E誌掲載稿に加筆し,「I Still Believe(君といた108日)」はこのWebページだけの記事です]  
   
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