head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
O plus E 2021年Webページ専用記事#5
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「『リスペクト』 オリジナル・サウンドトラック」
(ソニーミュージック)

   
 
国内盤 輸入盤
 
 
  珍しく国内盤が発売されているが,全18曲構成は国際盤(輸入盤)と同じで,ボーナストラックはない。国内盤というからには,歌詞(対訳付き)が付いているのは勿論だが,発売元がソニーミュージックだけあって,同社自慢の高音質Blu-spec CD2仕様で提供されている。
 余談だが,ジャケット写真は主人公の同じポーズで,背景が違うだけかと思ったら,衣装の色合いが微妙に違い,何と髪形も少し違う。国内盤のジャケットは,映画のポスターやチラシの一部を切り取ったデザインであるが,どうやら輸入盤に使われているステージシーンのスチル画像を,少し加工して作られたもののようだ。
 Web記事では紙幅の制限がないので,全18曲の題名をすべて列挙しておこう。

  1. “There Is A Fountain Filled With Blood”
  2. “Ac-cent-tchu-ate The Positive”
  3. “Nature Boy” ☆
  4. “I Never Loved A Man (The Way I Loved You)” ★
  5. “Do Right Woman, Do Right Man”
  6. “Dr. Feelgood”
  7. “Respect” ★
  8. “Sweet Sweet Baby (Since You've Been Gone)”
  9. “Ain't No Way” ★
 10. “(You Make Me Feel Like A) Natural Woman” ★
 11. “Chain Of Fools”
 12. “Think” ★
 13. “Take My Hand, Precious Lord”
 14. “Spanish Harlem” ☆
 15. “I Say A Little Prayer For You” ☆
 16. “Precious Memories”
 17. “Amazing Grace” ★
 18. “Here I Am (Singing My Way Home)”

 映画のエンドロールには40数曲がクレジットされていたが,このサントラ盤の18曲はすべて主演のJennifer Hudsonの歌唱曲である。即ち,劇中で当時のヒット曲として流れる他の歌手の曲や,10歳のアレサを演じるSkye Dakota Turnerが歌った“Here I Am (Singing My Way Home)”,ラストのアレサ自身のパワフルな熱唱曲も収録されていない。
 逆に言えば,映画の中でJ. Hudsonが歌った曲はほぼすべて収録されていて,彼女がアレサに捧げた良質のトリビュート・アルバムとなっている。もう少し厳密に言えば,「1.」は子供アレサであるS. D. Turnerが歌い出し,それを受けて途中から大人のアレサであるJ. Hudsonが迫力ある歌唱を聞かせる構成になっている。劇中で使用されていたのに,サントラ盤に収録されていない曲が1曲だけある(後述する)。その一方で,「18.」はAretha Franklinのヒット曲ではなく,この映画のエンドソングとして用意されたJ. Hudsonのオリジナル曲であり,Jamie HartmanとCarole Kingの協力を得て作られている。
 J. Hudsonとアレサとの交流は古く,2004年にアレサのショーの前座を務めたいと申し出て見とれられたそうだ。その後,映画『ドリームガールズ』(07年2月号)に抜擢されて,いきなりアカデミー賞助演女優賞を得た。さらに,歌手デビューも果たし,グラミー賞の最優秀R&Bアルバム賞を受賞しているから,歌手としての実力も本物である。そこに憧れのアレサ自身から伝記映画の主演を指名されたとあっては,この映画の演技にも歌唱にも気合いが入らない訳がない。
 ★印は,プレスシート中で林剛氏(音楽ジャーナリスト)が推奨していた名曲である。「1.」はA. Franklinのデビュー曲であり,「17.」は映画本編の紹介欄でも述べた代表曲中の代表曲である。「7.」「9.」「12.」も名曲揃いの代表曲で,J. Hudsonの歌い方もA. Franklinに似せた熱唱になっている。「10.」は,「17.」の映像の後に,A. Franklin自身のステージ映像で歌われていた曲である。おそらく,2015年の作曲者のキャロル・キングのケネディ・センター名誉賞授賞式での歌唱ではないかと思われる。「10.」と比べる意味でも,これもこのサントラ盤に入れておいて欲しかったところだ。
 林剛氏はもう1曲“Young, Gifted And Black”を挙げているが,なぜかこのサントラ盤には収録されていない。エンドロールには,「Performed by Jennifer Hudson & Ethan Xavier Williams」と記されていたが,なぜこの曲が割愛されたのかは不明である。
 ☆印は,筆者の推奨曲である。元々「14.」はBen E. Kingが,「15.」はDionne Warwickがレコーディグした曲であるが,A. Franklinがカバーしてヒットした曲だ。そのためか,J. Hudsonもソウル流の歌唱ではなく,ポップス調で軽快に歌っている。
 残る「3.」はもはやスタンダード・ナンバーと言える名曲で,最初に歌ったのはNat King Coleである。その後,Frank SinatraやSarah Vaughanがカバーし,娘のNatalie Coleも父の追悼アルバム「Unforgettable... With Love」で歌っている。最近では,Tony Bennett とLady Gagaのデュエットアルバム「Cheek To Cheek」で仲良く歌っているのが話題だ。映画での利用では,『ムーラン・ルージュ』(01年11月号)で主題歌風に使われていて,David Bowieが歌っていた。それにインスパイアされたCeline Dionが,ラスベガスでの公演のオープニング曲として使っていたのが話題となった。このサントラ盤のJ. Hudsonは,そのC. Dionを意識した歌い方であると感じた。
 ともあれ,話題満載の素晴らしい歌唱のサントラ盤兼トリビュート・アルバムである。
 
   
  ()  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next