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O plus E誌 2020年Webページ専用記事#6
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「ソウルフル・ワールド オリジナル・サウンドトラック」
(Universal Music)

   
 
US版(デジタルのみ) 日本版(CD&デジタル)
 
   
 
Original Score(LP) Jon Batiste関与分(LP)
 
 
  アルバム・ジャケットを4枚も示したように,本作のサントラ盤の担当は少し特殊で説明を要する。映画全体の音楽担当で,所謂BGMのオリジナルスコアを書いたのは,Trent Reznor とAtticus Rossのコンビだ。T. Reznorはインダストリアル・ロックバンド「Nine Inch Nails」の主メンバーで,しばしば英国の作曲家A. Rossと共同作業している。映画音楽としては2人で担当した『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)』のスコアが,第83回アカデミー賞の作曲賞に輝いた。その後も『ドラゴン・タトゥーの女』(11)『ゴーン・ガール』(14年12月号)『パトリオット・デイ』(16)や本号短評欄の『Mank/マンク』のスコアを担当するなど,すっかり映画音楽界でも売れっ子だ。ディズニー配給作品を手がけるのは初めてだが,本作では得意の電子音楽を生かして「ソウルの世界」でのBGMを中心に計23曲を生み出している。
 特筆すべきは,劇中のジャズ・シーンで使う曲のために,人気ミュージシャンのJon Batisteが起用され,計17曲の作曲と編曲を担当している。R&B,ロック,カントリー等,様々な分野の音楽を生み出しているが,国立ジャズ博物館のアートディレクターを務めているように,ジャズに関する造詣と思い入れは強いようだ。彼が生み出した曲は演奏シーンだけでなく,現実世界のNYのシーンのBGMとしても流れる。
 サントラ盤として国際的にデジタル配信されているのは42曲入りのUS版で「Soul (Original Motion Picture Soundtrack)」と呼ばれている。映画内での使用順に収録されているので分かりやすい。格安の輸入盤入手を当てにしている向きには残念だが,どうやらCDはないようでデジタル配信だけらしい。一方,国内盤としてはこのUS版に日本人歌手による歌唱曲3曲を追加した45曲収録の日本版がCDでもデジタル配信でも入手できる。その他に,米国ではアナログ盤のLPとして,Trent Reznor & Atticus Ross担当分の「Soul (Original Motion Picture Score) [LP]」(23曲収録)と,Jon Batiste 自身が関与した17曲の他に彼の作品を加えた「Music From and Inspired By Soul [LP]」(22曲収録)の2枚が発売されていて,これらは輸入盤として購入できる。
 歌唱曲にも触れておこう。まず1曲目は劇中の前半に,ジョーが学生時代の回想シーンで短く流れるラップ曲“Rappin Ced”で,エンドロールの最後でも再度使われている。英語版ではDaveed Diggs,日本語版では日本人ラッパーの木村昴が起用されている。もう1曲の劇中曲は,本編解説でも触れた地下鉄ホーム上でストリート・ミュージシャンがアコースティック・ギターの弾き語りで歌う“Parting Ways (愛に満ちた世界)”だ。英語版ではソウル・ミュージシャンのCody ChesnuTTが,日本語版ではシンガーソングライターの瑛人が歌っている。
 エンドソングの1曲目は,Jon Batiste自身がピアノに合わせて歌う“It's All Right”だった。彼のオリジナル曲ではなく,1963年にThe ImpressionsがヒットさせたR&Bの名曲である。日本語版のエンドロールの2曲目には,日本国内だけの特別な曲が入っていた。JUJUが歌う“奇跡を望むなら... (ソウルフル・ワールドver.)”である。歌唱も歌詞も,バックのジャズ演奏も本作にぴったりの佳曲と言える。
 
   
 

■「Jingle Jangle: A Christmas Journey (Music From The Netflix Original Film)」 
(Atlantic Records)

   
 
 
 
  ミュージカル仕立てだけあって,しっかりサントラ盤音源が日本でもデジタル配信で入手できるようになっていた。CD発売は海外でもないようだ。映画も音楽もどんどんこういう形になっていくのだろう。
 劇中で使われた9曲にエンドロールで流れる曲を加えた全12曲収録の比較的コンパクトなサントラ盤である。劇中で流れるオリジナルスコアは含まれていない。
 まずは若き日のジェロニカス夫妻が歌ったテーマ曲“This Day”で始まる。どの曲も,劇中ではポーズをとったり,踊りながら歌うシーンで歌われたので,いかにもミュージカル・ナンバー揃いだ。バックダンサーがいるシーンではコーラスも付いている。主要登場人物は最低1曲には参加し,主役の老いたジェロニカスのForest Whitakerと孫娘役のMadalen Millsは2曲ずつ歌っている。毎度のことだが,敵役,脇役にいたるまで皆歌が上手い。本編紹介で,地味な無名俳優ばかりだと書いたが,歌唱力も考慮して選んでいるのだろう。
 改めてサントラ盤で聞き直して感心したのは,郵便を配達するションストン夫人役の歌唱力の凄さだった。この曲だけは,俳優のLisa Davina Philliに歌わせず,ミュージカル女優のMarisha Wallaceが吹替えていたようだ。それなら納得できる。
 エンドソングとしては,主題歌“This Day”をR&BシンガーのUsherと Kiana Ledéがデュエットで歌っている。勿論,歌唱力は抜群だ。この部分はネット配信動画とサントラ盤音源で聴き比べたのだが,ネット配信映像の音はかなり劣る。映像は4Kモードならかなり綺麗なのだが,音は格段に劣る。サウンドは大したデータ量ではないはずだが,余り考慮されていない。ミュージカルや音楽関連映画は,やはり好い音響設備の映画館で観たいものだ。
 
   
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