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O plus E誌 2019年Webページ専用記事#6
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「アナと雪の女王2 オリジナル・サウンドトラック」
(Universal Music =music=)

   
 
(a) 輸入盤(歌唱曲のみ) (b) 輸入盤(Deluxe Edition)
 
   
 
(c)国内盤(歌唱曲のみ) (d) スーパーデラックス版
 
 
  ディズニー映画のサントラ盤はいずれも語るに値する力作で,主題歌は後々まで歌い続けられ,多数の歌手にカバーされるとあっては,音楽プロデューサーも作曲家もフルパワーを発揮するのが当たり前になっている。それも,あの世紀の大ヒット作『アナと雪の女王』(14年3月号)の続編とあっては,特別注目が集まり,サントラ盤もベストセラーになることが約束されているから尚更だ。
 ここ数作のサントラ盤は,ほぼ英語での歌唱曲とオリジナルスコアを収録した「国際盤(英語盤)」,その内,歌唱曲を日本語に差替えた「国内盤(日本語盤)」,その両方を合体させた「デラックス盤」の3種類が発売されていたのだが,本作に関してはちょっと形態を変えて,4週類もリリースされている。
 まず,最もシンプルなのは,映画本編で採用された歌唱曲11曲だけを収録した(a)だ。いずれも,前作でアカデミー賞主題歌賞を受賞したRobert Lopez & Kristen Anderson-Lopez夫妻が手がけた曲である。Deluxe Editionの(b)は2枚組で,(a)とそのカラオケ11曲,映画での未使用曲や別テイク計5曲を加えた全27曲がDisc 1,音楽担当のChristophe Beckによるオリジナルスコア(劇伴曲)19曲がDisc 2に収録されている。国内盤は,(a)に日本語吹替版で使われた日本人による歌唱曲9曲を加えた全20曲収録版が(c),(b)にその9曲を加え,(少し構成を変えた)3枚組55曲が(d)という訳である。この曲数だけでも,まさにスーパーデラックスだ。前作は,大ヒット後,劇場で映画に合わせてリピーター観客一同が歌う観賞スタイル(Sing along上映という)が定着してから,カラオケ付きのソングス版が発売されていた。今回は本家のDeluxe Editionが最初からカラオケ付きだから,世界中で歌われることを前提としているのだろう。
 ちょっと驚くのは,その世界戦略である。主題歌を16ヶ国語で歌ったビデオが公開されていて,英語,仏語,独語等の他,アジア圏の日本語,中国語,韓国語,タイ語でも歌われている。これはディズニー大作ではよくあることだ。驚いたのは,映画公開(サントラ盤発売)直後に,上記の主要国語以外に,ロシア語,ベトナム語,カザフスタン語,アラビア語版等が,インドに至ってはヒンディ語,タミル語,テルグ語の3言語で,歌唱曲全曲がYouTubeにアップされていたことだ。前作は2013年11月の米国公開後に数ヶ月かけて各国で公開されたが,本作は11月22日ほぼ世界同時公開(北欧のみクリスマス公開)である。2作目までは十分時間があったとは言え,映画本編の吹替用の台詞だけでなく,歌唱曲の歌詞まで50数カ国分用意し,それを吹き込んだサントラ盤を同時発売する態勢を整えていたという訳である。世界ブランドのエンタメ帝国ディズニーといえども,恐ろしいまでの管理能力だ。
 さて,その歌唱曲の中身である。(a)は全11曲と書いたが,厳密には純粋に劇中でミュージカル風に歌われたのは8曲で,いずれも登場人物(の声優)が歌っている。エルサ,アナ,クリストフ,オラフに加えて,姉妹の母親のイドゥナ王妃も歌うのが見どころ/聴きものである。主題歌は,エルサ役のIdina Menzelがノルウエーの若手歌手AURORAの高音のスキャット(不思議な声)をバックに歌う“Into The Unknown”である。日本語曲には「心のままに」という副題が付いている。映画本編の紹介記事(19年11・12月号)でも書いたが,前作の主題歌“Let It Go”(ありのままに)ほど歌いやすい曲ではない。歌唱力抜群のIdina Menzelの広い音域をフルに活かした力作と言えるが,松たか子はじめ,各国語の声優はさぞかし苦労したことだろう。
 親しみやすさの点では,最初にイドゥナ王妃役のEvan Rachel Wood(日本語は吉田羊)が歌う“All Is Found”(魔法の川の子守唄)の方が上だ。ディズニー名曲集として末長く生き残るのは,この曲ではないかという気がする。この他,クリストフ役が歌う“Lost In The Woods”(恋の迷い子)やアナ役が歌う“The Next Right Thing”(わたしにできること)も,ミュージカルナンバーとしてはかなりの佳曲だと感じた。
 上記8曲の新曲以外はと言えば,エンドロールで再度流れる“Into The Unknown” “All Is Found” “Lost In The Woods”の3曲である。それぞれ,人気ロックバントPanic! At The Disco,カントリー歌手のKacey Musgraves, オールタナティブ・ロックバンドWeezerに歌わせていて,アレンジも劇中歌とは全く違う。この3連発は,戦慄が走るほど見事な構成だ。とりわけ,Panic! At The Discoの主題歌は,これがIdina Menzelが歌ったものと同じ曲かと思えるほどの大胆な編曲が施されている。日本語のエンドソングには,オーディションで選ばれた19歳の中元みずきが選ばれ,Panic! At The Discoバージョンの演奏で歌っている。
 
   
 

■「Teen Spirit (Original Motion Picture Soundtrack)」 
(Interscope)

   
 
 
 
  CDは輸入盤だけだが,日本国内でも全曲をiTunes, Amazon, Spotify等からネット購入できる。全14曲というのは,サントラ盤としてはやや少なめの収録数である。というのは,本作には劇伴のBGMであるオリジナルスコアが全く含まれていないからだ。
ラ・ラ・ランド』のMarius De Vriesが手がけ,欧米でヒットした既存曲を新しいアレンジで聴かせる手法で構成されているので,統一感のあるアルバムになっている。キーとなっているのは,彼が得意とするエレクトリック・ミュージックの使い方だ。とりわけ印象的だったのは,皆でダンス連中に流れる“E. T.”だ。本編を観ている中でも,電子音が心地よく感じたし,改めてサントラ盤を聴き直しても,アレンジの見事さを感じる。
 14曲中で,Elle Fanningのソロ歌唱が聴けるのは6曲である。その内,“Dancing On My Own” “Lights” “Don't Kill My Vibe”の3曲が,オーディション場面で歌われた曲で,いずれも,若い女性が好む欧州のヒットソングだという。なるほど,素人歌手にオリジナル曲があるはずはないので,番組出場者が選ぶならそうなる訳だ。予選から進むにつれ,歌唱力も増し,決勝戦ではバックコーラスもついている。
 決勝戦での歌唱曲は,9曲目の出場者全員が歌う“Good Time”に始まり,続く出場者の“Dancing Teenage Kicks” “Tattooed Heart”の見事な歌唱を経て,上記の“Don't Kill My Vibe”が歌われる。この4曲はアレンジも,歌い手の振付けも素晴らしい。なるほど,TV番組はこうして作られるのかと参考になる。
 映画を観たら,このサントラ盤を買いたくなるし,上記を聴けば,再度決勝戦の場面を観たくなる。
 
   
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