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O plus E誌 2019年11・12月号掲載
 
 
アナと雪の女王2』
(ウォルト・ディズニー映画 )
      (C)2019 Disney
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [11月22日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年11月14日 淞竹試写室(大阪)
       
   
 
ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

(ドリームワークス映画/ 東宝東和&ギャガ配給 )

      (C)2019 DreamWorks Animation LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月20日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2019年11月7日 GAGA試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  メガヒットと名作の続編が,ようやくやって来る  
  2019年の最終号のトップを飾るのは,フルCGアニメ2作である。当欄の看板の「実写+CGのVFX大作」とならなかったのは,配給形態と本誌の発行時期のせいでもある。最近,この種のメジャー系大作の半数以上は世界同時公開であり,試写を観られるのが公開日直前になってしまう。そこに本誌が月刊から隔月刊になってしまったから,ますますタイミングよく掲載できる機会が減ってしまう次第だ。9・10月号と本号との間で,計6本ものVFX大作を「Web専用ページ#5」掲載にせざるを得なかったのは,こうした事情によるものだ。
 その点,ファミリー向けのCGアニメは,学校の休みに合わせて公開時期が調整されるから,比較的本誌掲載がしやすい訳だ。それでも,今回の2作品がこの時期になったのは,少し複雑な事情がある。片や,メガヒット『アナと雪の女王』(14年3月号)の5年ぶりの続編だから,大勢のファンを冬休み,春休みまで待たせる訳には行かず,世界同時公開である。もう一方は,CGアニメ史上に残る名作でありながら,本邦では冷遇され続けてきた『ヒックとドラゴン』シリーズの最新作で,紆余曲折を経て,ようやく年末公開となった。
 
 
  メガヒットの続編は,卒なく仕上げた安全路線で  
  何とか,かろうじて本号に間に合った。マスコミ試写を観てすぐに帰宅して執筆し,編集部に校了を半日遅らせてもらっての駆け込みである。試写は2D吹替版で観た。字幕を気にすることなく,CG映像の細部を点検するには良いが,文字表記がないと,聴き取りにくい人物名や国名を,誤記・誤認しているかも知れない。
 何しろ前作は,噂が噂を呼び,社会現象とも言える特大ヒットとなった。その数ヶ月前から,早々と「ディズニーアニメの最高傑作」と評価していた当欄にとっても面目躍如たる出来事だった。このレベルまで来ると,物語の構図は簡単には崩せず,監督も音楽担当も続投し,主要登場人物も声優たちもそのままで再々登場である(写真1)。「再々」と記したのは,途中で中編『アナと雪の女王/家族の思い出』があり,本邦では『リメンバー・ミー』(18年3・4月号)との併映で劇場公開されていたからである。内容は,同作のWeb版に付記しておいた。
 
 
 
 
 
写真1 続編も,しっかり前作と同じこの顔ぶれが登場
 
 
  正式の続編である本作の物語は,エルサとアナの子供時代から始まる(写真2)。アレンデール王国の国王である父アグナルも母イドゥナもしっかり登場する。母が歌う「魔法の川の子守唄」が頗る心地よい。寝物語で,同盟を結んだ隣国に裏切られ,祖父が落命したこと,その後,父と母が数奇な運命を辿ったことが語られる。
 
 
 
 
 
写真2 母の子守唄を聞きながら,2人の子供時代から始まる
 
 
   物語は現代に戻り,ある日エルサは,自分にしか聞こえない歌声に気付く。なぜ自分だけに魔法の力が与えられたのか,その秘密を解き明かすため,王国を離れて冒険の旅に出る。アナや仲間のオラフやクリストフも後を追うが,数々の試練が待ち受けていた……。
 秘密は王国外の深い森にあり,「森の精」が大きな役割を果たしている。王国の場所は特定されていないが,多分,北欧のどこかだろう(南欧やアフリカでは,「雪の女王」にならない)。この種の物語は森が大好きだ。ディズニープリンセスでは,白雪姫,オーロラ姫,ラプンツェル,メリダ,ベルは,森を舞台に活躍している。絶えず,隣国との争いがあるのも定番だ。旧住民らしき,ノースルドラ族とやらも登場する(写真3)。欧州というのは,そういう土地柄なのだろう。ネタバレになるので,これ以上は書かず,以下,当欄の視点からの感想を簡単に述べる。

 
 
 
 
 
写真3 いかにも原住民風のノースルドラ族
 
 
   ■ エルサは冒険の旅に出たが,作品としては冒険はせず,まずまず安全運転で80点の出来映えだ。難解ではないが,物語は少し複雑になり,子供には少し難しいかも知れない。試写終了後,若い女性達は「見どころ一杯だった。何度も見なくっちゃ」と語っていた。少し豪華に見せ,細部を何度も確認させる興行戦略なのだろう。
 ■ 新キャラとして,可愛いトカゲのような「サラマンダー」と大きな岩男の「アース・ジャイアント」が登場する。キャラクタービジネスの点では,やや大人しい路線に。映像的には,壮大な光景が増えている(写真4)。CG技術的には平凡だが,水や氷の使い方が少し凝っていた。ダムの決壊シーンは迫力があった。馬の形をした水の精の「ノック」の姿が美しい(写真5)。エルサがこの馬に乗って疾走するシーンは惚れ惚れする出来映えだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 スケールアップした壮大な光景も随所に
 
 
 
 
 
写真5 エルサの前に馬の姿をした水の精が登場
 
 
   ■ 音楽的にも,ほぼ前作の路線を踏襲している。映画の前半は,まるでミュージカルであり,舞台化を意識しているような作りだ(写真6)。メイン曲“Into The Unknown”は悪くはないが,“Let It Go”ほど覚えやすく,歌いやすくないので,劇場で皆で歌うには適していない。
 
 
 
 
 
写真6 エルサがソロで歌う美しいシーンに思わずうっとり
(C)2019 Disney. All Rights Reserved.
 
 
  まだCGは進化していると感じさせる表現力  
   シリーズの原作は,英国人女性クレシッダ・コーウェル作の児童文学で,2003年から刊行され,全12作が2015年に完結している。そのCGアニメ化第1作の『ヒックとドラゴン』(10年8月号)は見事な出来映えで,世評も高く,当欄でも絶賛した。しかるに,オスカー・レースでは,ほぼ同時期公開の『トイ・ストーリー3 』(同上)に敗れたので,業界関係者一同憤っていた。もう1つの憤りは,ドリームワークス作品の配給が本邦では迷走し,続編『ヒックとドラゴン2』(14)も良作であったのに,劇場公開されなかったことだ。ところがドリームワークス自体がユニバーサル傘下に入ったため,我が国では東宝東和配給となった。CGアニメには力を入れている同社ゆえ,一安心したことは『ボス・ベイビー』(18年3・4月号)で述べた通りである。
 安心はしたものの,本作の米国公開は2月22日だったのに,春,夏を過ぎても一向に公開されない。ユニバーサル本家には『ペット2 』(19年7・8月号)があったためか,少し冷遇され,後回しにされたようだ。いつの間にか,ギャガとの共同配給になっている。3年契約で同社が宣伝を担当するというから,少なくとも3年間はDWA作品の公開が保証される訳だ。
 そうした冷遇作をつい贔屓目に観てしまうのを割り引いても,やはり良くできていた。『ヒックとドラゴン3』と題さず,「聖地への冒険」なる副題がついている。バイキング族とドラゴンが共存するバーク島が手狭になったため,ヒックがドラゴンたちと安全に暮せる「幻の聖地」を探し求める決断をする物語だからである。
 アニメだから,主人公たちは歳をとらず,少年だったヒックが成長して青年になり,亡き父の跡を継いで,バイキングの若きリーダーになっている。憧れのアスティとの関係も良好で,すっかり恋人同士の雰囲気だ。大きな見どころの1つは,新登場の純白の牝ドラゴン「ライト・フューリー」の登場である。ヒックの相棒トゥースは彼女にメロメロになってしまい,恋に落ちる(写真7)。即ち,2組のカップルが存在し,最凶のドラゴンハンター(写真8)とも戦うという設定である。
 
 
 
 
 
写真7 純白のライト・フューリーとは似合いのカップル
 
 
 
 
 
写真8 ドラゴンハンターのグリメルと凶暴なデス・グリッパー。いかにも悪。
 
 
   以下,当欄の視点から,CGを中心とした評価である。
 ■ 人間に捕らわれていたドラゴンたちを救出し,バーク島に連れ戻すところから物語は始まる。このバーク島の描写が見事な出来映えだ(写真9)。アジア風の建物がところ狭しと並び,頗る美しい。もうこれだけで圧倒される。さぞかし,腕のいい美術班を抱えているのだろう。この種のCGアニメは,もう技術的には行き着いていて,あとは使い方次第,美的センスの問題だけだと思っていたが,本作でその思いを覆された。質・量ともに,大きく進化していると感じさせられた上に,美術的にも驚くべきレベルに到達している。
 
 
 
 
 
写真9 バーク島の景観描写も一段と魅力的に
 
 
   ■ 描画されるドラゴンの数が圧倒的だ。1作目では1シーン8匹しか描けなかったのが,本作では65,000匹以上も描画できるという。しかも,そのドラゴンのデザインも1匹ずつ個性的にデザインされている。真っ白なライト・フューリーの質感表現は難しいはずだが,これも難なくこなしている。主役のトゥースの皮膚も,よく見ると,かなり精緻化されている(写真10)
 
 
 
 
 
写真10 トゥースの皮膚表面の描写もきめ細かく,光沢感も向上した
 
 
   ■ 冒頭シーンから驚いたのは,炎の表現が素晴らしかったことだ。元々,DWAは炎や水の描写が得意であったが,本作では全編を通じて,炎と照明表現が秀逸だった(写真11)。バイキングたちの甲冑表面のデザインも精細になり,この光の中で一段と映えている。
 
 
 
 
 
 
 
写真11 炎の描写が絶品で,照明の使い方が見事。その光の中で微妙にデザインされた甲冑が映える。
(C)2019 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
 
 
   ■ 多数のドラゴンが登場するクライマックス・バトルも十分楽しめた。アクション演出も秀逸だ。試写は2D字幕版だったが,3D大画面で観たかった。余談だが,決着の数年後,家庭を持ったヒックはヒゲ面で登場する。この顔がジェイク・ギレンホールそっくりだった。
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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