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O plus E誌 2019年9・10月号掲載
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「イエスタデイ(オリジナル・サウンドトラック)」 
(ユニバーサル ミュージック)

   
 
 
 
  テーマである「大停電の後,世の中からビートルズの音楽が消えていた」という着想は,映画製作者のティム・ビーヴァンとエリック・フェルナーが思いついたというが,映画の至るところで「ビートルズ愛」が溢れていた。「ビートルズ愛」に関してなら,筆者も負けていない。ビートルズのレコード(透けて見える赤いドーナツ盤)が日本で初めて発売されたのは,高校1年生の2月だった。爾来,シングル盤は欠かさず揃え,高かったLP盤もなけなしの小遣いをはたいて買っていた。
 CDになってからも,公式オリジナル盤やリマスター盤を全て揃えているのは勿論だが,カヴァー盤(トリビュート盤)も374枚に達している。そこに加わった375枚目が,このサントラ盤である。
 このカヴァー盤コレクション中で,過去にサントラ盤は3点ある。『サージャント・ペッパー』(78)『I am Sam アイ・アム・サム』(01)『アクロス・ザ・ユニバース』(08年8月号)のサントラで,いずれも全曲ビートルズの楽曲であり,多数の俳優や歌手が歌う,いわゆるコンピレーション盤の体裁である。ところが,今回のサントラ盤は少し様子が違う。
 国内盤にボーナストラックはなく,輸入盤と同じ27曲構成である。オープニングファンファーレ,間奏曲が計7曲あるのはいいとして,ビートルズ以外の歌唱曲が1曲入っている。主人公ジャック自身がシンガーソングライターであり,劇中で彼自身の代表曲として何度も歌っていた“Summer Song”である。サントラ盤だから,同曲が入るのはおかしくないが,それならプロの人気歌手のEd Sheeranが歌っていた曲も入れて欲しかったところだ。それが収録されなかったのは,版権の関係なのかも知れない。その結果,このサントラ盤では,主演のHimesh Patelが歌った曲が20曲あり,内Beatlesの楽曲が19曲という訳である。
 劇中でも,プライベート場面での演奏やリハーサル,彼がリリースした1枚のアルバム内の曲,ライヴステージでの熱唱等の形態で歌われていた。その雰囲気はそのままサントラ盤に反映されていて,題名欄にもその区別が付記されている。即ち,(From The Album "One Man Only")と付さている場合はオーケストラ付きのオーソドックスな歌唱であり,(Live At Wembley)の場合はMCや観客の歓声入りである。
 上記19曲の内,3曲が2度使われているので,Beatlesの曲としては16曲である。内訳は,Johnが7曲,Paulが7曲,Georgeが2曲と,現実に則した配分であるのが心憎い。映画で短くしか歌われない曲がCDではフルに収録されているのは普通だが,曲順が映画とはかなり異なっている。テイクの選択理由もよく分からない。例えば,“Back In The U.S.S.R.”は,Wembleyスタジアムでのライヴが採用されているが,この曲はモスクワでの公演場面の方を入れて欲しかった。もっとも音源は同じで,映画本編中では映像や観衆の声だけを差替えてあっただけかも知れないが…。
 Himesh Patelは抜群の歌唱力ではないが,嫌味のない,味のあるカヴァーだ。特に,ギターやピアノの弾き語りでスローバラードを歌った時に,名曲度が増して聴こえる。改めて,“Yesterday” “The Long & Winding Road” “Let It Be”は美しい曲だなと感じ入った。全部Paulの曲だ。
 
   
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  (上記は,O plus E誌掲載分に大幅に加筆しています)  
   
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