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O plus E誌 2019年11・12月号掲載
 
 
映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』
(アードマン&スタジオカナル /東北新社 & STAR CHANNEL MOVIES配給 )
      (C)2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月13日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2019年10月7日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  しっかりスケールアップした,楽しい長編2作目  
  フルCGアニメの大作2本についでは,コマ撮りのストップモーション・アニメの人気作である。クレイ・アニメーションといえば,英国アードマン・アニメーションズが伝統と実力を誇るが,同社の顔とも言える『ウォレスとグルミット』シリーズのミニチュアセットが火災で失なわれた。その後,同作から生まれた「ひつじのショーン」が表看板となったことは,劇場用長編『映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』(15年7月号)の記事中で述べた。同作は,TVでの短編シリーズ以上の人気を博し,今や世界中の子供たちが「羊」を見ると「ショーン!」と呼びかけるほどだ。
 その余勢で,アードマンは全くテーマを変え,石器時代の人間を描いた『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』(18年Web専用#3)を製作したが,こちらは人気も興収も今イチだった。となると,期待を一身に集めるのは,「ひつじのショーン」の長編2作目だ。
 前作は,牧場主やショーンの仲間たちも大都会に向かい,そこで引き起こす騒動だった。本作のテーマは宇宙からの到来者で,可愛い女性キャラの「ルーラ」がヒロインとして登場する(写真1)。まだ子供で,ウサギをモチーフにしたデザインだが,名前は「月 (luna)」から命名したようだ。2019年がアポロ11号月面着陸50周年で,様々な記念映画が作られたが,本作もその1つという位置づけである(写真2)。ルーラは高速移動でき,物体を浮揚させる力がある。このルーラが巻き起こす騒動が抱腹絶倒で,本作の魅力の1つである。
 
 
 
 
 
写真1 小屋にいたのは,宇宙からの到来者のルーラ
 
 
 
 
 
写真2 言うまでもなく,これは『E. T.』のパロディ
 
 
  原題は『Farmageddon』。農場(Farm)とアルマゲドンの合成語で,牧場主がUFO騒動をネタに,この名前のテーマパークを作る。そこでの騒動も見応えがある(写真3)。さらに,秘密機関・宇宙人探知省のエージェントや彼の部下の工作員が混乱を引き起こす……。
 
 
 
 
 
写真3 宇宙がテーマなので,こんなシーンも登場
 
 
  前作の共同監督のマーク・バートンとリチャード・スターザックは脚本&製作総指揮に退き,代わって若手のリチャード・フェラン とウィル・ベチャーが監督に起用されている。基本的に,登場人物の誰も台詞を話さないので,声の出演者はいない。
 以下,当欄の視点からの分析と感想である。
 ■ 前作のような街並みや衣服の豪華さはなく,地下の基地やロケット打ち上げ台の大掛かりなセットがウリである。相変わらず質感は高く,一段とスケールアップされている気がする(写真4)。牧場主のセーター,農地,トラクター,ロボット等も,実物の作り込みだ。ひつじ達のチームワーク等,キャラ設定が優れている上に,アードマン流の拘り,伝統を活かしたギャグ,動かし方のテクニックが生きていると感じる。牧羊犬のビッツアーの役割も,前作に比べて増している。
 
 
 
 
 
写真4 ミニチュアセット作りにも精緻さが増している
 
 
  ■ 前作よりも,さらにCG/VFX利用が減っていると感じた。UFOは,最初CGかと思ったが,実物のようだ。フリスビーはどうやって飛ばしているのだろう? 光のハレーションや砂嵐,ミステリーサークルの遠景などは,さすがにCG/VFXの産物かと思えたが,実態は分からない(写真5)。コマ撮りの場合,人形の移動とカメラの移動の併用は難しいはずだが,それとて平気でやっている。途中で気がついたのだが,映像的に一段と豪華になったと感じたのは,シネスコ・サイズになったためかと思う。劇場用映画らしさが出てきた。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 どこまでが実物? 光の粒や遠景はVFX加工の産物に見える。
(C)2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS. All Rights Reserved.
 
 
  ■ このシリーズは,動物だけでなく,人間にも全くセリフがない。牧場主は名前もなければ,言葉を話している風だが,うなり声だけだ。ここがウォレスとの大きな違いである。これは,ショーンからの目線からゆえの描写なのか? 言わば,パントマイムだけで物語を表現していることになる。台詞がないので,その分の字幕は必要ないが,新聞の見出しには字幕が付いていても良かったと思う。この点が,子供には少し不親切だ。
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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