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O plus E 2019年Webページ専用記事#5
 
 
ターミネーター ニュー・フェイト』
(パラマウント映画,スカイダンス,20世紀フォックス映画 )
      (C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月8日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2019年10月31日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  なるほど『T2』の正統な続編ではあるが,単にそれだけだ  
  シリーズの6作目に当たる。当欄ではもう何度も書いたが,VFX映画史の金字塔と言えば,『ターミネーター2 (T2)』(91)と『ジュラシック・パーク』(93)である。後者は,前者の成功を見て,大幅にCGの採用に踏み切ったというから,劇場用実写映画へのCG利用は,すべて『T2』の大成功に由来すると言って過言ではない。その『T2』の正統な続編だという。映画製作権が転々としたが,ようやく原作者で,『T1』(84)『T2』の監督であったジェームズ・キャメロンの手に戻り,彼が製作陣にも名前を連ねているゆえ,「正統な続編」と名乗っているようだ。
 『T2』ファンからすれば,正統な続編は,ユニバーサル・スタジオでのアトラクション「T2-3D」が先に有ったはずだと言いたい。J・キャメロン自身が製作・監督・脚本を担当し,T-800役のアーノルド・シュワルツェネッガー(以下,単にシュワ)は勿論,美少年のジョン・コナー役にエドワード・ファーロングがそのまま登場していたので,本家本元の作であった。60億円もかけたアトラクションだが,短編だったので,劇場用長編としては,本作が「正統な続編」ということなのだろう。
 となれば,『ターミネーター3』(03年8月号) 『ターミネーター4』(09年7月号) 『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15年8月号)は,一体何だったんだろう? 映画としては取るに足らない駄作,凡作揃いだったが,せめてCG/VFXだけでも褒め,必死で讃えて来たというのに……。と思っていたところに,製作者と主演俳優たちの記者会見では,「過去3作品は,全部忘れてもらってもいい」とまで言い切っている。それなら,こちらも言わせてもらいたい。「あーあ,3作品は見事な駄作揃いだった。その落とし前を全部清算し,おつりが来るような快作に仕上げてくえているのだろうね?」と。
 老いたシュワが登場するのは勿論だが,あのオリジナルのサラ・コナー役のリンダ・ハミルトンを口説き落として,再出演までさせたとあっては,力が入っていると認めざるを得ない。クレジットの筆頭は彼女であり,シュワは本作では脇役に過ぎない。サラ・コナー主演の続編という設定で,これまでと違う展開が期待できた。
 監督は,デビュー作『デッドプール』(16年6月号)を成功させたティム・ミラー。CG/VFX畑の出身だから,その点では心配ないが,コメディタッチのアメコミ映画から,偉大なる『T2』の正統な続編を全うできるのか,少し心配だった。新登場の共演者は,未来から送り込まれたグレース役にマッケンジー・デイヴィス,新しいターミネーターREV-9役にガブリエル・ルナ,そのREV-9に命を狙われる女性ダニー・ラモス役にコロンビア出身の新鋭女優ナタリア・レイエスがキャスティングされている。いずれも,本作が最初の大役だと言える。
 物語は,いきなりサラ・コナーの目の前で,人類の救世主であった息子のジョンが,T-800に殺害される。既にサラの力で1997年の核戦争の「審判の日」は回避された後だという設定のようだ。『T2』のT-800は,ジョンを守った後,自ら溶鉱炉に身を投じ消滅したはずだから,本作のT-800は,別途未来から来た同型のターミネーターだったということになる。
 そこから画面は22年後の現代になり,未来からグレースとREV-9がやって来る。お馴染みの電光とともに全裸で降り立つスタイルを踏襲している。グレースは元は人間でメカ的に改造された「強化人間 (Augmented Human)」であり,REV-9は高機能の純粋なロボットという設定である。「審判の日」は回避されたものの,人類の敵は人工知能の「スカイネット」でなく,未来では「リージョン」なる存在が支配しているという。それがなぜREV-9の21歳の女性ダニーの殺害を命じ,グレースが彼女を保護しようとするのか,物語が展開する……。もうこう聞いただけで,何やら『T2』そっくりの設定である。
 以下,当欄の視点からの論評であるが,ネタバレを含むことを容赦願いたい。
 ■ 冒頭のジョンの殺害までは,わずか1分弱。あっけなかった。その後,復活するのかと思ったが,しなかった。ジョンなしの続編とは,おいおい過去3作品は一体何だったのかと,再度呆れ返る。22年前のジョンとサラであるから,2人とも別の俳優の演技をCG製の顔で置き換えているのだろう。出来映えをじっくり観察するほどの長さはなかった。
 ■ 22年後の現代に登場するサラもT-800も,VFXで加工せず,リンダとシュワのそのままの老け顔で登場させている。20年以上,未来から来る殺戮者と闘ってきたサラ・コナーはひたすらカッコいい(写真1)。いくら主演扱いで再登場とはいえ,現在63歳の彼女には,体力的に相当キツイ役だったことだろう。T-800も全く若い顔にせず,そのまま老化させたかは不明だ(写真2)。その説明はないが,5作目と同様,このモデルは一旦過去に来ると皮膚のシリコンラバーが劣化し,老化するという解釈を踏襲しているのだろう。先日公開の『ジェミニマン』(19年Web専用#5)までは行かなくても,4作目や5作目程度の若返りはさほど難しくないはずなのに,勝手なところだけ,無視してくれという過去作品を継承するのだから,体の良い手抜きだ。

 
 
 
 
 
写真1 戦う女サラ・コナーは,ひたすらカッコいい
 
 
 
 
 
写真2 70歳を超えたシュワをそのまま登場させるのは,いかにも手抜き
 
 
  ■ 強化人間のグレースの能力設定は新味があり,悪くなかった。エネルギー源である心臓が終盤大きな役割を果たすが,CG/VFX的には余り見どころはなかった。一方のREV-9は,黒い液状金属ロボットで変身自由であること,手が剣に変形することなど,『T-2』のT-1000とそっくりだ。強いて言えば,殺さなくても,触れただけでコピー人間になれること,元来2体を有していて,いつでも分離できること(写真3)が,少しだけ新しい。皮膚の下のメカが見えるシーン(写真4)は定番であり,炎の中から登場する姿(写真5)は『T-2』のT-1000のオマージュだ。金属製の骨格もT-800のイメージに似せている(写真6)
 
 
 
 
 
写真3 REV-9は元々2体で,いつでも1体分離できる
 
 
 
 
 
 
 
写真4 皮膚の下にメカが見える表現は定番のVFX
 
 
 
 
 
写真5 炎の中から登場するのはT-1000へのオマージュ
 
 
 
 
 
写真6 こうやって見るとStan Winston設計のT-800に似ている
(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film
 
 
  ■ アクションシーンは見応えがあった。前半のダニーとグレースが逃げるシーンは約10分続く。タフだ。後半の軍の輸送機内からの離脱,空中での降下,水中でのバトルまで,何というアクションデザインかと思い出す。敵の追撃のしつこさは『T2』よりも『T1』を思い出すが,迫力は10倍以上だ。じっくり考えれば,これだけのアクションはCG/VFXの賜物なのだが,なぜかあまり新しさを感じなかった。少なくとも,キャメロン作品の『T2』や『アバター』(10年2月号)で感じたあのワクワク感はない。CG/VFXの主担当は,ILMに戻り,他にBase FX, Digital Domain,Blur Studio, Scanline VFX, UPP, Method Studios, Weta Digital, Rebellion Visual Effects, Capital T, Cantina等の多数社が参加している。エンドロール中に,オリジナルT-800の骨格をデザインした故スタン・ウィンストン氏の名前があったのが嬉しかった。
 ■ 「正統な続編」と感じたのは,リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーだけだった。彼女とグルース,ダニーの女性トリオの存在を大きくした点だけが,現代風だと言える。作品的には☆評価で,アクションデザインの優秀さを加味して☆+,CG/VFXスタジオの奮闘に敬意を表しても,せいぜい☆☆評価止まりだ。CG/VFXのクオリティ的には悪くはないが,『アベンジャーズ』シリーズや最近のいくつかの宇宙ものに比べても,使い方がかなり古いと感じてしまう。同じく金字塔だった『ジュラシック・パーク』シリーズの方がうまく変身していると言える。本シリーズは4作目を3部作の1作目にしようとして,失敗した。本作も同じだ。5作目の時にも書いたのだが,もうこのシリーズの続編は要らない。
 
 
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