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O plus E 2019年Webページ専用記事#5
 
 
IT /イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月1日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2019年9月17日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  待ち遠しかった後編,スケールアップして大団円  
  前作『IT/イット “それ”が見えたら,終わり。』(17年11月号)は,当欄の2017年の総合評価で「ベスト1」とした映画だった。人気ホラー作家スティーヴン・キングの40作を超える映画化作品の中でも,不気味さ,完成度の点で「ベスト3」に入ると評価している。長い邦題には,さらに「THE END」が挿入されている。完結編であり,「これで一巻の終わり」の「ジ・エンド」を意味しているのだろう。
 原題は,前作は単なる『It』,本作は『It Chapter Two』である。原作が2巻に分かれていた訳ではなく,1986年の出版物は1巻完結であった。1990年製作の3時間TVドラマは,登場人物たちそれぞれが27年前の出来事を振り返る形式であったのに,映画化した前作では,7人の少年少女の子供時代だけを描いていた。子供たちだけ犠牲になる連続殺人事件である。それだけで十分,質の高いホラー映画であったのだが,最後に27年後の再会を約束するシーンで終わっていた。上手い商業化戦略である。
 27年というのは,不思議なピエロが出没するのが27年周期という物語の設定に基づいている。さすがに27年待たされた訳ではなく,2年後の完結編だが,約束通り,大人になった彼らが故郷のデリーに集結する。自分たちを「ルーザーズ(負け犬)・クラブ」と称した面々の1人で,故郷に残ったマイクの呼びかけによるものだ。当然,あの忌まわしいピエロがまだ生きていて,再度姿を現わしたという……。
 映画の冒頭で,27年前の約束のシーンが登場し,前作をざっと振り返る。これは前作を観た観客のための要約であり,未見の場合は,前作をしっかり観てからの観賞を勧める。完結編公開の機に,2作一気上映をしている映画館もいくつかあるようだ。
 監督は,当然アンディ・ムスキエティの続投であり,製作陣も主要スタッフもほぼ同じである。脚本は,3人の共同脚本から,ゲイリー・ドーベルマンが単独担当になっている。『死霊館』シリーズの脚本も手がけ,先日の『アナベル 死霊博物館』(19年9・10月号)では監督デビューも果たした人物である。歳をとらないピエロ役をビル・スカルスガルドも続演だが(写真1),7人の少年少女の大人の役は,大人の俳優が新たにキャスティングされている。
 
 
 
 
 
写真1 ピエロ役は同じビル・スカルスガルド
 
 
  前作の主演だった少年ビルと少女ベバリーは,それぞれジェームズ・マカヴォイとジェシカ・チャステインが演じている。興味深い実力派俳優の起用だ。J・マカヴォイは,少年時代のジェイデン・マーテル(旧名:リーバハー)と少しイメージが違うが,ベバリーのソフィア・リリスからJ・チャステインへの成長は自然な感じがした。他の5人も,個々の個性がよく描き分けられていた。その分,各人のエピソード盛り込んで上映時間が長いが,実際には,2時間49分の長尺がさほど長く感じなかった。
 7人が故郷で再会するはずが,1人だけ姿が見えないことから,恐怖の物語が再び始まる……(写真2)。誰と誰が落命するかはネタバレになるので書けないが,しっかりスリルもサスペンスも感じさせてくれる濃厚なホラーであるとだけ言っておこう。
 
 
 
 
 
写真2 故郷のデリーに集まったのは6人だけだった
 
 
  以下は,当欄の視点からのコメントと感想である。
 ■ 7人個々の昔の姿と思い出の場所が登場する。てっきり前作の一部を回想シーンで再利用しているだけかと思ったが,どうもそうではない。しっかり,前作にはない新しいエピソードが,種明かし的に続々と登場する。15歳前後の少年少女の成長は早いから,2年も経つと,ルックスも背丈も一変してしまう。2年前に一気に撮影してあったにしては,彼らの登場場面も多過ぎる。一体どう対処したのだろうと思えば,それぞれ個々の対応があったようだ。あまり見かけの変わらない何人かはそのままの役で新たに撮影し,背丈が伸びた俳優は,顔が見えないショットでは背格好が同じ代役を立て,アップのバストショットでは顔をデジタル的にDe-agingしたそうだ(写真3)。最後に,7人全員揃った子供時代の姿が登場する(写真4)。少しデフォルメしてあるが,何人かは大人の身長に見えてしまう。
 
 
 
 
 
写真3 デジタル的に少しだけ若返らせという
 
 
 
 
 
写真4 ラストは印象的な7人の昔の姿
 
 
  ■ 前作と打って変わって,CG/VFX利用シーンはたっぷりとあった。前半は,多数の赤い風船で空に舞い上がるシーン(写真5)程度で,これはまだ序の口だった。中盤以降,巨人やクッキーから出てくる魔物(写真6),スタンリーの首が蜘蛛状の化け物に変化,ピエロに有り得ないポーズ(写真7)等に加え,CGでしか描けないような幻影のシーン(写真8)も頻出する。ピエロも顔が変形したり,巨大化したり,こちらも8本足になったりする。魔物の醜さでは『ヘルボーイ』(19年9・10月号)に負けていない。
 
 
 
 
 
写真5 遊園地から,赤い風船で空に舞い上がる
 
 
 
 
 
 
 
写真6 巨人の口から魔物が登場。いよいよVFXも本格化。
 
 
 
 
 
 
 
写真7 こんな有り得ないポーズは,脚だけCGで描き加えた
 
 
 
 
 
 
 
写真8 こちらもCGならではの描写シーン
(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
  ■ 残り40分のラストバトルは,CG/VFX満載で,ここまで大掛かりでなくてもいいと感じるほどだった。この映画には,もう少し静かな恐怖感の方がいいのに,くどく,騒々し過ぎる。CG/VFXの主担当はRodeo FXだが,他にMethod Studios, SOHO VHX,Cubica VFX, Lola VFX, Atomic Arts等が参加している。音楽は相変わらず,凛々しく,物語を引き締めていた。
 
 
 
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