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O plus E誌 2017年7月号掲載
 
 
キング・アーサー』
(ワーナー・ブラザース映画)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月17日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2017年5月26日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  既視感だらけだが,VFX的にはハイレベルな意欲作  
  単純な題名通り,著名なアーサー王の物語である。実在の人物かどうかも怪しいというのに,英国人はこの王の物語が大好きなようだ。馴染みのうすい日本人でも「聖剣エクスカリバー」や「円卓の騎士」の名は耳にしているだろう。既に何度も映画化されている。当欄では,全くの同名の映画(04年8月号)を紹介した(以下,2004年版と呼ぶ)。そこそこCG/VFXも使われていたが,歴史大作としては盛り上がりに欠ける作品であった。本作の原題は『King Arthur: Legend of the Sword』である。当初邦題は『キング・アーサー 聖剣無双』の予定であったが,その後副題を割愛したようだ。
 サクソン人の侵攻からブリテン(イングランド)を守った伝説の王とされているが,本作は王になるまでの前日譚を扱っている。いわゆる「ビギニング」もので,6部作の1作目らしい。一般的な「アーサー王伝説」より前の時代が対象なので,人物設定や物語展開に自由度がある。1作目は好き勝手に何を描いても,最後に皆が知る伝説に繋げれば納得してもらえる。まさにそのパターンの映画であった。
 ポスターや予告編でのキャッチコピーは「スラムのガキから王になれ!」「その一振りで王になれ!」「新感覚のソードアクション!」となっていた。これでは,貧民の子が聖剣を手にして,その魔力のパワーで縦横無尽に敵をなぎ倒し,王位に就くサクセスストーリーかと想像してしまう。実際は,アーサー(チャーリー・ハナム)は王のユーサー(エリック・バナ)の息子であり,王位を継承するはずが,叔父のヴォーティガン(ジュード・ロウ)が王と王妃を殺害し,息子をスラム街へと追いやってしまうという設定だ。骨格はよくある復讐譚なのだが,過酷な環境の中で幼いアーサーが生きる知恵を身につけ,暴君を倒す展開にしたかったようだ。
 監督は,『シャーロック・ホームズ』(10年4月号)のガイ・リッチー。知的な名探偵を武闘派として描いた監督だけに,アーサー王を貧民窟から這い上がった英雄として描くのは合っている。同作で相棒の医師ワトソンを演じたJ・ロウが暴君ヴォーティガンに起用され,主人公のアーサーよりも存在感が大きい。圧倒的に男性中心の映画だが,女優陣で出番が多いのはメイジ(魔術師)役のアストリッド・ベルジュ=フリスベである。魔術師らしい不気味なメイクや険しい目つきで登場するが,随所でかなりの美形であることが伺える。シリーズの続編で王妃グィネヴィアとなる想定のようだ。
 以下,CG/VFXを中心とした見どころである。
 ■ まず聖剣エクスカリバーのもつ魔力が引き起こす超常現象を語りたいところだが,この聖剣がほとんど登場しない。名前と存在だけは前半から出て来るが,アーサーがこれをいつ手にするのかが思わせぶりだ。艱難辛苦の果て,ようやく終盤にこの聖剣を手にして王になる(写真1),という物語になっている。剣戟の斬新さを期待したが,それも外れだった。なるほど「聖剣無双」という副題をやめたのも納得が行く。「円卓の騎士」もしかりで,最後に円形に並べた机が登場して,「続編を,乞う!ご期待」という訳である。
 
 
 
 
 
写真1 聖剣エクスカリバーの登場シーンはごく僅か
 
 
  ■ 2004年版はCGがプアだったが,本作は冒頭シーケンスからフルパワーで疾走する。城(写真2)も壮大だが,巨象が凄い(写真3)。角度によっては恐竜に見える。随所に『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(01〜03)の影響を感じ,映画としては既視感に溢れている(写真4)。J・R・R・トールキンの「指輪物語」がアーサー王伝説の影響を受けているというから,その意味で当然だと言える。
 
 
 
 
 
写真2 崖の上の城も塔も,なかなか良いデザインと配置
 
 
 
 
 
 
 
写真3 冒頭シーケンスに登場する巨象に圧倒される
 
 
 
 
 
写真4 CGで生成した大群衆を前に演説。もうこれに類したシーンは何度も観た気がする。
(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
  ■ 物語としては凡庸で退屈するが,映像的には,英国ハイランド地方の光景が雄大で,目を楽しませてくれる。城や港,町の建物等々の美術も素晴らしい。城の地下など,少しゲーム風のデザインだ。どのシーンも,どこまでセットでどこからCGか,簡単には見分けられない。
 ■ メイジが,色々奇妙な動物を登場させる。いずれも斬新な造形だ。特に鷲と蛇が印象的で,終盤この蛇が巨大化して暴れ回る。CG/VFXの主担当はFramestore, 副担当はMPCで,他にMethod Studios, Scanline VFX, Nvisible, Lipsync Post等も参加している。プレビズは大手のThird Floor, 3D変換はStereo Dが担当で,この一流どころの勢揃いなら,高品質は保証付きだ。  
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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