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O plus E誌 2018年5・6月号掲載
 
 
ランペイジ
巨獣大乱闘』
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [5月18日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2018年4月10日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  いかにもB級怪獣映画だが,これが素直に面白い  
  何というつまらない,下品な題名だ。原題は単なる『Rampage』で,「大暴れ」「たけり狂う」の意味だが,よく知られた英単語ではなく,このカタカナ題名だけでは内容が理解されないと判断して副題を付けたのだろう。これじゃ全くのB級怪獣映画で,着ぐるみの怪獣同士がぎこちない動きで対決する低品質のTV番組しか思い出さない。もっとも,単館系の文芸映画好きの観客が本作を観に来ることはないだろうから,レトロ感覚の怪獣映画好きにターゲットを絞って呼び込もうという高等戦術かも知れない。それなら,この副題も理解できる。
 なぜこういう苦言から入ったかと言えば,根っからの怪獣映画オタクでなくても,普通のアクション映画ファンが十分に楽しめる良質のパニック映画に仕上がっていたので,余りにもったいないと感じたからだ。アクションのノリ,分かりやすさでは,(良い意味での)B級映画のテイストを継承しているが,CGのクオリティは全くB級ではなく,しっかりA級であった。
 元は1986年に発売された米国製のアーケードゲームで,かなり人気を博したようだ。本作では,1993年に開発された遺伝子技術が2016年に禁止されたのに,秘かに宇宙空間でDNA実験が続けられていたという設定である。その宇宙実験設備が事故で破壊され,生物を巨大化するDNA物質が地球上の動物保護区に落下したという展開で物語は進行する。さあ,大変だ。
 ある種のパンデミックものであるから,多数の動物が感染し,巨獣たちが世界中で入り乱れるのかと,勝手に思い込んでいた。実際に巨大化するのは,ゴリラ,オオカミ,ワニの3匹だけで,すべてシカゴの市街地に集結するので話が分かりやすい。巨獣の数が少ないのも,破壊や戦いを描きやすく,これはこれで正解だ。
 監督は,『カリフォルニア・ダウン』(15年9月号)のブラッド・ペイトン。主演は同作でもタッグを組んだドウェイン・ジョンソン。これが3度目の起用だから,よほど監督と相性がいいのだろう。彼は元プロレス世界チャンピオンの「ザ・ロック」だが,今やその前歴を述べる必要がないほど,映画界で確固たる地位を築いた。肩幅が広い巨漢はアクション映画で頼りがいのあるリーダー役に相応しい上に,演技力も備わってきた。既に主演作は10数本に達し,『ワイルド・スピード』シリーズでも準主役級で登場している。映画賞の演技賞部門とは無縁であり,ヒロインとのラブロマンスもない。実に単純明快で逞しい男を演じ続けている(写真1)。恋に落ちないお相手役は, 007シリーズの新マネーペニー役のナオミ・ハリス。なるほど,この2人ならパニックの収拾を託すことができる。
 
 
 
 
 
写真1 すっかりアクション大作の主役らしくなった
 
 
  以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ 時代背景と前提解説があった後,宇宙空間でのドラマから始まる。この数年で何作も宇宙ものの大作が続いたので,宇宙ステーションや宇宙船の描写は格別珍しく感じない。その一方,無重力状態での船内活動の描写は益々向上し,全く違和感がなく自然だなと感じる。ワイヤーアクションなのか,CG/VFXの産物なのか,全く見分けがつかない。
 ■ 巨大化する3匹の大きさは,常にゴリラ<オオカミ<ワニの順だ。ゴリラやオオカミが大きいのは解せないが,ワニやオオカミの順で巨大化が始まり,その後も同じ速度で進行するので,大きさの順序は変わらないということなのだろう。見る度にデカくなり,驚くほどの大きさに達するのは,結構楽しい。これぞ映画だ。
 ■ 3匹の内,質感も動きも抜群なのは白毛ゴリラのジョージだ(写真2)。『キング・コング』(06年1月号)や『猿の惑星』シリーズ(11~17)で類人猿を描き続けているWeta Digital社であるから,ゴリラの描写が世界一なのは当然だ(写真3)。ジョージに高層ビルを登らせるのは,当然キング・コングへのオマージュだろう。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 白ゴリラのジョージはキング・コング風の演技
 
 
 
 
 
 
 
写真3 もはや類人猿の描写は手慣れたもの
 
 
  ■ オオカミは巨大化すると同時に飛翔能力を得て,ヘリに襲いかかる(写真4)。これは,アイデア賞ものだ。最も巨大化するワニは,どんどん醜悪になり,これじゃまるで恐竜である(写真5)。終盤,怪獣と怪獣を対決させて収集を図るのは定番パターンであり,しっかり観客を楽しませてくれる。CG/VFX制作には上記Weta Digital の他にHydraulx, Scanline VFX等で,プレビズには3rd FloorとProofの2社が参加している。  
 
 
 
 
 
 
写真4 飛翔能力を備えたオオカミがヘリを襲う
 
 
 
 
 
 
 
写真5 最も巨大化して咆哮するワニは,まるで恐竜
(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.n
 
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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