head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2018年3・4月号掲載
 
 
purasu
ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
(コロンビア映画 /SPE配給 )
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月6日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2018年2月22日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
   
 
トゥームレイダー ファースト・ミッション』

(MGM映画&ワーナー ・ブラザース映画 )

      (C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月21日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2018年3月7日 GAGA試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  かつての名作をリボーンした冒険もの2作品  
  隔月刊化に伴い,カバーする公開時期を少し拡げたところ,メイン欄は7本の大盤振舞いになってしまった。紙幅が足りないので,内6本は2本ずつ3組を作って語ることにしよう。まずは,CG/VFX史に残る懐かしの作品『ジュマンジ』(95)と『トゥームレイダー』(01年9月号) をリブートした2作品からである。ともにジャングルが登場するのも見どころだ。
 
 
  今度は現実世界でなく,ゲーム世界に入り込む  
  ジョー・ジョンストン監督,ロビン・ウィリアムズ主演の前作『ジュマンジ』は,1982年発行のクリス・ヴァン・オールズバーグ作の絵本を原作とした良質のファミリー向けのアドベンチャー・ファンタジーであった。ボードゲームの舞台であるジャングルの動植物や悪人たちが,ゲームの進行に連動して現実世界に登場するというアイデアが肝で,まだ未熟だったCG技術だけに頼らず,ミニチュアやアニマトロニクス等の伝統的なSFXも駆使して,楽しさを演出していた。同じ作家の童話を映画化した続編として,『ザスーラ』(05年12月号) も製作され,こちらはボードゲームの架空世界に取り込まれた兄弟が家ごと宇宙空間に飛び出す仕掛けであった。
 本作は前作のエッセンスは残し,同じくジャングルを舞台としているが,ゲームの参加者がジュマンジ世界に取り込まれる形を取っている。最も大きな違いは,「ジュマンジ」は昔のボードゲームではなく,既にビデオゲームになっていることだ。時代的には,前作の翌年の1996年にまず1人の高校生が不思議な現象に遭遇し,それから21年後の現代に,男女各2名の高校生が古いビデオゲームに興じる内にゲーム内の世界にワープしてしまう。そのゲーム空間では,自分自身ではなく,自分が選んだキャラクターの姿形で登場する。即ち,各プレイヤーは自分が選んだアバターの中に入って,ジュマンジ世界をRPG体験する。アバターだから性別も年齢も関係なく,元の高校生とは全く違う博士や教授の男性3名,女戦士1名のチーム編成であることが面白い(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 これが現実世界の高校生4人。ジュマンジ世界では表題欄中の4人に変身する。
 
 
  監督はジェイク・カスダン。既に何作か監督経験はあるが,ほぼ無名であり,これが最初の抜擢作となる。高校生4名も無名の若手俳優4人だが,ジュマンジ世界側でドウェイン・ジョンソン,ジャック・ブラックら名のある俳優陣が登場する。キャスティングには金をかけず,その分,しっかりロケ費用やCG/VFX処理に製作費をかけた感じだ。
 以下,当欄の視点からの解説である。
 ■ 全編の大半をハワイで撮影したというだけあって,ジャングルがリアルだ。物語は,ゲームらしく3つのステージに分かれていて,それぞれ別の場所を基点に選んでいる。現地でセットを組み,ツリーハウスも作ったという。ハワイの自然を活かしての撮影のはずだが,それをどの程度VFX加工しているのかは識別できない。明白過ぎて面白かったのは,各アバターの能力・属性を昔のゲーム風に2DのビルボードとしてAR(拡張現実)表示していることだ(写真2)。1990年代の2Dゲームのイメージを与えるためだろう。ジュマンジ世界と現実世界の往復の際,身体が崩れてゲーム機に吸い込まれる(写真3)。これも単純なCG表現であるが,効果的な使い方だ。
 
 
 
 
 
写真2 RPG風に登場人物の属性をAR表示
 
 
 
 
 
写真3 身体が崩れ,ゲーム機に吸引される
 
 
  ■ 22年前とはCG技術の差は歴然なので,これでもかとばかりにVFXならではのシーンが登場する。その最たるものはやはり動物の表現だ。前作でもCG製の象が本物の自動車を踏みつぶしていた一方で,アニマトロニクス製のライオンはいかにも作り物でお粗末であった。本作では,ワニ,蛇,アルマジロ,コウモリ,カラス,クマ,サソリ等々が登場する(写真4)。その多くは,前作のボードゲームに登場する動物たちだが,前作で現実世界に登場しなかった動物もある。即ち,しっかり前作に敬意を払い,かつしっかり現在のCGパワーも見せつけている訳だ。最も見事だと感じたのはジャガーだ(写真5)
 
 
 
 
 
写真4 前作に敬意を表して多数の動物が登場するが,質的には格段に進歩
 
 
 
 
 
写真5 これが最新技術で描いたジャガー
 
 
  ■ シーケンスとして見応えがあったのは,多数のサイに追われる場面である(写真6)。ここで,ヘリコプターが大きな役割を果たしているが,大半はCG製ではなく,ジンバルに載せた実物大のヘリコプターに俳優を乗せて撮影し,谷のシーンと合成している(写真7)。この谷を抜けて飛行するカメラワークも見事で,これもCG/VFX技術の進歩の賜物である。
 
 
 
 
 
写真6 最大の見どころは,サイの群れに追われ,ヘリで脱出するシーン
 
 
 
 
 
写真7 俳優を実物大ヘリに捕まらせて撮影し,谷と景観と合成した
 
 
  ■ 一方,ジュマンジ世界の人々が信仰するジャガーの石像はてっきりCG製だと思ったが,発泡材とコンクリートで高さ12mの頭部を作り,これにVFX合成を加えたようだ(写真8)。本作のCG/VFXの主担当はMPC,副担当はILMで,他にIloura, Rodeo FX等が参加している。
 
 
 
 
 
 
 
写真8 上:12mの頭部を作ってスタジオ撮影,下:完成映像
 
 
  一見華奢な2代目ララだが,凛々しく好感がもてる  
   『ジュマンジ』がゲーム世界と現実世界の交錯をテーマにしているのに対して,もう一方は世界的な人気ゲームの「トゥームレイダー」を再度映画化した作品である。原題は単に『Tomb Raider』だが,邦題が副題を付しているのは,主人公ララ・クロフトにとって最初の冒険であり,これがシリーズ第1作だという宣言なのだろう。
 ビデオゲームでのララ・クロフトは既に冒険家であり,「女インディ・ジョーンズ」と呼ばれていた。トゥームは「墓」,レイダーは「発掘者・盗掘者」の意で,「インディ・ジョーンズ」シリーズの第1作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)のあのレイダーである。本作のララは,まだバイク便のバイトをしている大学生で,父の死の真相を探る内に伝説の島を探して冒険の旅に出るという設定となっている。この前日譚から始めるスタイルは,リボーンの成功事例の踏襲とも言えるが,1996年に始まったゲーム・シリーズが2013年にリブートされ,若き日のララから描いているので,その映画化作品と位置づけることもできる。
 墓の発掘となれば,エジプトかギリシャ,アラビア半島からせいぜいインドまでかと思ったら,日本の古代の邪馬台国が舞台で,女王・卑弥呼の墓が日本近海の無人島にあるという。この設定自体も,スクウェア・エニックス社が上記のゲームのリブートで使った世界感である。余談だが,劇中で登場する地図で,邪馬台国の位置は奈良県付近に描かれていたように見えた。墓が孤島にあるというので,てっきり九州地方のどこかの小島であると思ったのに,これは意外だった。リブート版のゲーム自体でもそうなっていたのか,本作の歴史考証担当者がそうしたのかは不明だが,いずれにせよ関係者は「九州説」ではなく,「畿内説」を採用していることになる。
 監督は,『THE WAVE/ザ・ウェイブ』(16)のロアー・ウートッグ。当欄ではこれが初登場だ。主人公のララ・クロフト役に抜擢されたのは,『エクス・マキナ』(16年4月号)『リリーのすべて』(同3月号)のアリシア・ヴィキャンデル。後者でオスカーを得て,いま最も輝いている女優の1人だが,このララ役への起用はピンとこなかった。ゲーム中のララは巨乳,タラコ唇,身長180cmの大女で,前2作のアンジェリーナ・ジョリーはハマり役だった。ところが,A・ヴィキャンデルは,少し華奢で知的な感じがする女性で,166cmしかない。これでは,およそ男勝りの冒険家には見えないではないか。という先入観で試写を観たのだが,悪くなく,後半ではすっかりファンになってしまった。
 前作では,ララは亡き父親リチャード・クロフト卿が残した手紙と遺品を手掛かりに謎解きの冒険に関わり,やがて再会を果たすが,クロフト卿は実の父親のジョン・ボイトが演じて父娘共演を果たしていた。本作でも死んだと思われた父親との再会という設定は踏襲されていて,これが物語の大きな役割を果たしているが,父親役は英国人俳優ドミニク・ウェストが演じている。A・ヴィキャンデルの母親は女優だが,さすがに精神科医の父親を駆り出すのは無理だったようだ。
 以下は当欄の視点での感想とコメントである。
 ■ 上記のようなララ・クロフトらしくないという観客の目を意識してか,いきなり格闘技のリングで闘い,ロンドン市中の自転車チェイスで運動神経の良さ,戦闘能力の高さをアピールする。行方を絶った父を追って,香港でのジャンク船上でのアクションを経て,日本近海の魔の島へと向かう内に,次第に逞しくなってくる。汚れたタンクトップ姿で登場するだけで,ララ・クロフトらしく見えてくる。そして,嵐の海への大ジャンプ・シーン(写真9)で,いよいよ冒険家ララ・クロフト誕生だなと感じさせる。
 
 
 
 
 
写真9 決死の覚悟で,嵐の海に向かって大ジャンプ
 
 
   ■ 魔の島では,採掘現場,ジャングル,そして地下の要塞へと舞台が移るが,やがて敵の姿が明らかになり,物語の進行に比例してCG/VFXの利用が増加する。奇妙な形をした魔の島自体がCGの産物だろう。出色なのは,滝の上で見つかった朽ち果てた飛行機の残骸の描写だ(写真10)。その翼の上に立つララの姿は凛々しく,惚れ惚れする。小道具では,日本のカラクリが随所に登場する。大仕掛けな物はCGで描いていると見えたが,一部は本当にカラクリ仕掛けを実現しているのかも知れない。VFXの主担当はScanline VFXで,Rising Sun Pictures, Soho VFX, Zero VFX, Mr. X, Factory VFX等も参加している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真10 一番の見どころのシーケンス。朽ち果てた翼の上に立つ姿が凛々しい。
勿論,ブルーバックとワイヤーを使った特撮(下)。
(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.
 
 
   ■ 地中の要塞へは,梯子の上り下り等,上下落差を使ったシーンが多く,3D上映への効果を意識した場面だと分かる。卑弥呼の棺が発見され,ミイラ化した卑弥呼が登場するが……。予想通り,CG/VFXの出番であるが,これは見てのお愉しみとしておこう。当然,クライマックスはこの地中で,ララが敵と対峙するアクションシーンである。桁外れの戦闘能力がある訳ではないので,敵もアクションの激しさもほどほどで,荒唐無稽ではなかった。むしろ,背伸びしない,この真面目な描写に好感をもった。そして,一件落着後のラストシーンのララはひたすら恰好よく,いよいよ冒険家,トレジャーハンターとして活躍する次回作への期待も膨らんできた。  
  ()
 
 
 
 
  (本稿はO plus E誌掲載分に加筆し,画像も追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next