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O plus E誌 2005年12月号掲載
 
 
『ザスーラ』
(コロンビア映画/SPE配給)
       
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2005年11月14日 SPE試写室(大阪)  
  [12月10日よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  単純明快で理屈抜きの面白さ。レトロ調も嬉しい。  
 

 ファミリー映画3連発の最後は,『ジュマンジ』 (95) の続編で,同じくボードゲームの世界が現実に現われて大騒動になる話だ。今度は家ごと宇宙にまで飛び出すという想定だけに,SFX/VFXの活躍の場が一段と拡がっている。米国では1週間おきに『チキン・リトル』,本作,『ハリポタ4』の公開順だが,日本ではその逆順で2週間おきの公開となる。前後を話題作に囲まれて,広報面では劣勢を否めないが,家族にせがまれて映画館に足を運ぶなら,この映画が一番面白い。オヤジ世代も童心に戻って素直に楽しめる。
 原作は,クリス・バン・オールスバーグの童話で,これが『ジュマンジ』『ポーラー・エクスプレス』(04年12月号)についで3本目の映画化作品となる。監督は『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』 (03) のジョン・ファブローで,彼にとってはこれが第2作目の監督作品である。
 ボードゲームの架空世界に取り込まれる兄ウォルター(ジュシュ・ハッチャーソン)と弟ダニー(ジョナ・ボボ)は,それぞれ 500 人以上のオーディションから選ばれた少年で,この2人の演技が素晴らしい。見事に息も合っている。彼らの父親役は『ショーシャンクの空に』 (94) 『ミスティック・リバー』 (03) の名優ティム・ロビンス,姉リサは『パニック・ルーム』 (02) でジョディ・フォスターの娘役を演じたクリスティン・スチュアートが選ばれた。この前までまだ子供だったのに,随分大きくなり魅力的になったものだ。残る出演者はゲームの中から登場する宇宙飛行士(ダックス・シェパート)だけで,後にも先にもこの5人しか登場しない映画だ。
 俳優のギャラが少なくて済む分,しっかり特殊効果/視覚効果には力が入っていた。VFX担当は,Sony Pictures Imageworksで約100人が関わっている。地球から吸い上げられ,宇宙空間を漂い,隕石やエイリアンに襲われて破壊される家の描写はよくできている(写真 1)。実物大のセットにCG合成,ミニチュアとクロマキー合成が基本だろうが,フルCG表現のシーンもかなりある。「ザスーラ」なるボードゲームが古くさいブリキ製ならば,そこから登場するロボットやエイリアンも意図的にレトロな感じを出している。
 このロボットは武骨な鉄の塊り然としたデザインで(写真 2),実機が5台作られ,兄弟を実際に追いかけたという。ゾーガンなるエイリアンは,いかにも怪獣といったルックスで,肉食恐竜のラブターに似ている(写真 3)。素早く飛びかかるシーンはCG製だろうが,大半は着ぐるみ姿でのっしのっしと歩き回る。いや,懐かしい。いずれもクリーチャー・デザインを専門とするスタン・ウィンストン・スタジオの作だ。ゾーガンの宇宙船(写真 4)もかなり旧式で,この点では一貫している。

 
     
 
写真1 宇宙に漂い,攻撃を受ける家の表現が秀逸だ
 
写真2 この旧式ロボットは相当な年代もの
 
 
 
 
写真3 こちらも負けずにクラシックな怪獣風
 
写真4 このレトロな感じは首尾一貫
 
   
 

 話はシンプルで,次々と起こる危機をいかに切り抜けて地球に戻るかだけなのだが,結構最後まで真剣に観てしまう。エンターテインメント作品の脚本とはかくあるべし,という手本だ。結末近くでタイム・パラドックス風のひねりがあるが,これも悪くない。それに伴い発生するモーフィングも,これまたレトロで味がある。
 想定主要観客層は,『ハリポタ4』が中高生以上,『チキン・リトル』が小学校低学年以下なら,この映画は小学校高学年,中学校くらいだろう。かつて「宝島」や「トム・ソーヤの冒険」を読んで育った年齢の少年達は,いま名作本を読んでいるのだろうか? テレビしか観ず,ビデオゲームに興じているだけで本を読まないなら,こうした映画で冒険心をかき立てると良い。

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