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O plus E誌 2000年12月号掲載
 
 
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『ダイナソー』
(ウォルト・ディズニー映画
/ブエナビスタ配給)
 
(c) Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
       
      (ブエナビスタ試写室 00/10/31)  
         
   
  CG史上最大のリソース投入  
   これまでに何度か話題にしたし,9月号の「4度目のSIGGRAPH(上)」でも紹介したのだが,ようやくの本邦公開前に正式に本欄で評しておこう。
 ディズニーの長編アニメーション部門が担当した恐竜映画であるが,『ターザン』のようなセルアニメ風でも,『トイ・ストーリー』のようなフルCGアニメでもない。世界中をロケし,白亜紀に適した実写背景に恐竜を中心に30種類以上のCGキャラクターを登場させたSFX巨篇である。『ジュラシック・パーク』のように人間は登場しないが,その代わりに恐竜やキツネザルたちが言葉を話すのは,他のディズニーアニメと同様,童話風の物語だからだ。
 ストーリーは単純そのもの。ふとした偶然から,誕生以来キツネザルに育てられた恐竜イグアノドンのアラダーが主人公で,突然の大隕石の襲来で焼け果てた荒野の中,苦難の旅を続け,やがて仲間を率いて目指す緑豊かな「生命の大地」にたどり着くというお話である。途中,肉食恐竜との戦いやロマンスも繰り広げられるが,単純明快で健康なディズニー映画の中でも,このシナリオは飛び切り単純だ。
 全米公開日は5月19日。その週は断トツのNo.1になったが,翌週はあっさり『M:I-2』にその座を明け渡した。当然,日本では夏休みの公開と思ったが,なぜか暮れまで見送られた。広報戦術の上では,CGの出来栄えを吹聴するなら,SIGGRAPH報道や『パーフェクト ストーム』との相乗効果を狙った夏の方が正解だったのではと思う。
 そう思いながら改めて試写を見たが,やっぱりこの映画のCGは凄い。SIGGRAPHで3.5時間のメイキングを聴講し,ニューオーリンズのシネコンでじっくりこの映画を見ていたのだが,何度見ても凄いものは凄い。現在のCGの最高峰である。『パーフェクト ストーム』が波と嵐だけなのに対して,この映画の方が多彩な分,レベルの高さを感じる。
 製作費は公称1億5千万ドル。実際は2億2千万ドル,いや2億5千万ドルはかけたはずだと噂されていた。今回,配給会社は3億ドルと公言している。レンダリング計算は,『パーフェクト ストーム』の130万時間に対して,こちらは320万時間だという。予算オーバーを今まで隠していたのに,今度は逆に誇大広告気味に数字を利用している。話半分としてもCG史上最大のリソースを投入したことは間違いない。
 
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(a)恐竜は計30種類 (b)色調調節の見事さに注目 (c)この草原までがCGとは!?
写真1 ダイナソー
(c) Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
恐竜の老若男女が見分けられる
実写とCGの違和感のない合成を聞かされていたので,かなり先入観をもって見てしまいました。予想していた以上に見事な仕上げですね。
色調の調整や恐竜の肌の質感は驚異的です(写真1)。『ジュラシック・パーク』(93)を見直したら,全く幼稚に感じました。あちらも『ジュラシック・パーク3』で向上させてくるでしょうがね。
キツネザルの毛も素晴らしかったし,隕石の墜落,火山の爆発もよく出来ていました。「生命の大地」の草原がCGだなんて,とても信じられません。
私は,乾いた大地と雨に濡れた時とで,恐竜の皮膚をあそこまで使い分けられるようになったかと感心しました。背景は基本的には実写ですが,岩や木や草も,かなりCGで描き込んであります。
そういうリアルさの中で,恐竜の老若男女が識別できるよう表現しているのは,ディズニー・アニメーションの腕ですね。
この映画のCG合成のために,Disney Feature Animationは,CGで実績のあるDream Quest Images社を吸収してThe Secret Lab (TSL)を作りました。
強いていえば,多頭数が移動するところの鳥瞰シーンが,少し嘘っぽく感じられました。
我々がそういう恐竜像を見慣れてないからかも知れませんね。この映画の場合,アップの演技の方が,擬人化して演出しやすかったのでしょう。
でも,ここまでリアルな表現力をもちながら,それほど面白くないのが残念で…(笑)。
3種のアニメ製作方法を手の内に入れたけど,それをどう生かすかはこれからの課題ですね。『トイ・ストーリー』も2作目でぐっと良くなりましたから。
では,アラダーとニーラの子供たちが活躍す『ダイナソー2』に期待しましょう(笑)。
   
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