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O plus E誌 2001年8月号掲載
 
 
star purasu
『PLANET OF THE APES/猿の惑星』
(20世紀フォックス映画)
 
(c)2001 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語/英語   (2001/7/19 よみうりホール(完成披露試写会))  
         
     
  ストーリーは言わぬが花  
   ILMがVFX担当として参加する夏の大作4本目は,SF映画史に輝く名作の再映画化である。先月の『A.I.』に負けじと日米同時公開してくれるから,メイキング情報もVFXのスチル写真もなく,今月も評論家泣かせだ。
 今から30年以上前の1968年当時は,猿の顔の特殊メイクの精巧さに驚かされ,ピエール・ブールの原作小説にはない衝撃のエンディングも話題になった。主演は当時の大スター,チャールトン・へストン。今回の作品でも少し登場する。これは,『華麗なる賭け』(68)のヒロイン,フェイ・ダナウェイをリメイク版の『トーマス・クラウン・アフェア』(99)に登場させたのと同じ趣向の話題作りだ。この両作品に加えて,『ロミオとジュリエット』『ブリット』『冬のライオン』『オリバー!』『ファニー・ガール』等の名作や,SF超大作『2001年宇宙の旅』も同じ年に製作されている。
 90年代の始めから再映画化が何度か話題になり,主演はアーノルド・シュワルツェネッガー,監督はジェームス・キャメロン,オリバー・ストーン,クリス・コロンバス,マイケル・ベイなどが取り沙汰され,結局は『バットマン』(89)『マーズ・アタック』(96)『スリーピー・ホロウ』(99)のティム・バートンに落ち着いた。
 主演は,不時着する宇宙飛行士レオに,昨年ジョージ・クルーニーと共演の『パーフェクト ストーム』(00)でブレークしたマーク・ウォルバーグ。人間のヒロイン,ディナ役には,前述の『ドリヴン』にも出演のエステラ・ウォーレン,猿人のヒロインのアリ役には『ファイト・クラブ』のヘレン・ボナム=カーター。敵役のサル軍団のセード将軍は『海の上のピアニスト』のティム・ロス,その配下のアター隊長役で『グリーンマイル』のマイケル・クラーク・ダンカンらが,猿人マスクを着けて登場する。話題作りに力を入れた割には,やや地味なキャスティングだ.
 宇宙船が不時着した惑星では猿が人間を支配していたという枠組みは踏襲しているが,登場人物やストーリーはかなり違う。ティム・バートン監督は「リ・メイク」でなく「リ・イマジネーション(再創造)」だというが,作る方も見る方も前作を十二分に意識している。『猿の惑星』であって,どこまで別の映画にできるかが腕の見せ所だ。誰しもエンディングがどうなるか気になるだろうから,楽しみのため,ストーリーは一切伏せておこう。
 
     
 
サル軍団の指揮者セード将軍聡明な女性チンパンジーのアリセード将軍配下のアター隊長
 
 
写真1 伝統の特殊メイクも大きく進歩
(c)2001 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.
 
     
 
 
写真2 猿軍団の甲冑デザインも見もの
(c)2001 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.
売り物の特殊メイクは,『ナッティ・プロフェッサー』『メン・イン・ブラック』『グリンチ』等でオスカーを6回も受賞した当代随一のリック・ベイカーが担当した。500体に及ぶ猿人の顔を1つずつ造作したという(写真1)。サル軍団のコスチューム・デザインにも力を入れていて,ティム・バートンならではの美意識とこだわりが感じられる(写真2)。
 一方,ILMが主担当のVFXはといえば,分量的にはそこそこ使われているものの,特筆すべきものが感じられなかった。特殊メイクに製作費の多くを使われてしまったためだろうか,凡庸で,視覚効果としては可もなく不可もなくといったレベルに受け取れた。
 
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  一段と進歩した猿面メイクアップ  
 
あなたはまだ生まれてなかったから,オリジナルは観てないでしょう。
68年なら生まれてましたけど,まだ幼児です。テレビで何度か観たのは,ずっと後ですね。
1974年までに続編が4本も作られる人気シリーズでした。もっとも,第1作目以外は,メイクアップだけが売りのB級SF映画に終わってしまいましたが(笑)。
今回のメイクアップは,最初スチル写真だと違和感がありましたが,映画だとやはり表情が豊かになっていて進歩を感じました。セード将軍や奴隷商人のオランウータン,リンボーの表情が印象的でしたね。
30年以上も経っているので,素材や加工法もずっと進歩していて当然です。目と口の周りの動きがスムーズだから,俳優本人の表情がかなり活かされてます。
ゴリラのアター隊長など,マスクの下にM・C・ダンカンの顔が浮かんできました(笑)。
『グリンチ』でのジム・キャリーを思い出せばこれくらいは予想できましたが,この映画は数がハンパじゃないです。
メイクアップ・アーティストだけで,50〜60人の名前がありました。
もっとも,老人になると人間も猿も似てくるので,あまりメイクは要らない感じでしたね(笑)。主役のマーク・ウォールバーグは,若くて人間役だけど,結構サル面でした。周りがそうだと似てくるのかな(笑)。
ハハハ。確かに『パーフェクト ストーム』の時とはかなり印象が違いましたね。
チャールトン・へストンの登場はすぐ分かりましたか?  
意識して観てないと,ちょっと分かりませんね。
これは,クイズ風の観客サービスというだけですね。特殊メイク担当のリック・ベイカー自身も老猿として出演してたようですが,本人の余興かメイクの感触を自ら試したかったからでしょう。
視覚効果は,宇宙船とか爆発シーンとかに使われてたようですが,それほどの役割じゃないですね。
圧倒的に特殊メイクが主役です。VFXを楽しむなら『パール・ハーバー』へどうぞ(笑)。
メイクの進歩はあるものの,前作ほどの面白さは感じられませんでした。
絵作りでは,良くも悪くもティム・バートンらしさは随所に出ていましたよ。撮影監督は変わっているのに,やはりバートンだなと感じました。それでも,偉大な前作に名前負けしてますかね。
テンポは遅くないのに,緊迫感に欠けます。名前が上がっていたJ・キャメロン監督・脚本,シュワちゃん主演の『猿の惑星』を観てみたかったです。
 
   
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