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plus E誌 2013年8月号掲載 |
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『ローン・レンジャー』
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(ウォルト・ディズニー映画)
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(C) Disney Enterprises, Inc. and Jerry Bruckheimer Inc.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[8月2日より丸の内ピカデリー他にて全国ロードショー公開予定] |
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2013年7月8日 東映試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) |
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壮大な大自然と列車アクションが見ものの西部劇 |
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| パニック映画がもう2本あるが,思い出して語るだけでも疲れるので,少し趣向を変えて,西部劇を1本挟もう。何しろ懐かしい表題の登場で,嬉しくなる。筆者のような団塊の世代は,1950年代後半から1960年代前半,多数の米国製のTV劇映画を観て育った。その中の人気番組で,毎週欠かさず観ていた。軽快な音楽に乗せて,白ハット,黒マスクの正義の味方が,白馬に跨がり,颯爽と駆けていた姿は,今でも目に浮かぶ。言わば,西洋版「鞍馬天狗」だった。
今回調べて,米国では既に1930年代からラジオドラマとして放送されていたことを知った。これまでに3回映画化されている。この主題曲がロッシーニの「ウイリアム・テル序曲」であると知ったのは後年で,てっきり専用の「ローン・レンジャーのテーマ」だと思い込んでいた。『2001年宇宙の旅』(68)に使われた「ツァラトゥストラはかく語りき」が,リヒャルト・シュトラウスの交響詩の導入部だとは知らず,SF宇宙もののテーマ・ミュージックだと思われているのと好一対である。
米国人,いや世界中の熟年層なら誰もが知っているこの懐かしいキャラクターの新たな映画化を,『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのトリオ(ジェリー・ブラッカイマー製作,ゴア・ヴァービンスキー監督,ジョニー・デップ主演)がするという。それなら,旧作を知らない若いジョニデ・ファンも呼び込める訳だ。小難しい,気取った西部劇など興味半減だが,このサービス精神たっぷりの製作陣なら,痛快娯楽大作が期待できる。ただし,どう考えても,ジョニー・デップは黒マスクの男に似合わないと思ったら,何と相棒のトント役だった! 投げ斧の名人で,相棒を「キモサベ」と呼ぶ,あのインディアン青年の役だったとは……(写真1)。
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| なるほど,彼にはチェロキー族の血が流れているというから,ピッタリだ。カラスを頭に乗せ,顔に縞模様を描いた個性的なメイクは,まるでジャック・スパロウ船長を西部劇に登場させたかのようだ(写真2)。白塗りの顔は,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)の帽子屋,『ダーク・シャドウ』(12年6月号)のヴァンパイアでもお馴染だから,ジョニデ・ファンの抱くイメージを壊さない。これは,大正解だ。
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| では,肝心のローン・レンジャー役はといえば,『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)で双子のエリート兄弟を,『J・エドガー』(12年2月号) でフーバー長官の相棒を演じたアーミー・ハマーが抜擢された。将来性のあるいい男優だと思うが,本作に限っては,存在感はトントに敵わず,助演的役割であった。
以下,CG/VFXを中心とした見どころである。
■ 予想通りの大作,豪華なロケで,著名なモニュメント・バレーを初め,米国西部の壮大な大自然をたっぷりと堪能できる。それでいて,随所でCG/VFXを付加したに違いないと思しき斬新なシーンも登場する。VFXの主担当は老舗ILM,副担当はMPCで,参加CGアーティストの数からも,かなりのVFXが駆使されていることが分かる。残念なのは,これが3D作品ではなかったことだ。写真3のようなスペクタクル・シーンこそ,IMAX 3Dにピッタリではないかと感じた。
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写真3 壮大な大自然をバックに,随所でVFXも登場する
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| ■ もう1つの映像的なウリは,19世紀の列車の描写だ。冒頭の悪党のブッチ・キャヴェンディッシュの脱走劇で派手な列車アクションが見られるが,それだけでなく,クライマックス部分でもう一回り大きな見せ場がある。人,馬,列車の絡みはコメディ・タッチだが,映画史上最高の列車アクションだと言える。勿論,しっかりプレビスして,演出されている。ここで再度流れる「ウイリアム・テル序曲」の使い方は躍動的で,映画音楽ならではの楽しさだ。さすがハンス・ジマーだと唸った。
■ このために3台もの機関車を造り,内2台は実際に走らせている。複線区間を含む8kmもの線路をロケ現地で敷いたというから,さすがハリウッド大作だ(写真4)。それでいて,あちこちはCG/VFXで加工しているのだろうが,どこがそうかは,簡単には識別できない。ただし,予告編でも流れる鉄橋の爆破,列車の墜落シーン(写真5)はCG表現だろうが。
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写真4 本物の機関車を建造し,実際にレールも敷いた
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写真5 さすがに,このシーンの列車はCG製だろう
(C) Disney Enterprises, Inc. and Jerry Bruckheimer Inc. All Rights Reserved.
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| ■ ローン・レンジャーが事件を解決し,愛馬シルバーに疾走を促す決まり文句は「ハイヨー,シルバー」だった。当時の流行語であり,今でも色々なところで耳にする。ジブリの『紅の豚』(92)にも使われていたはずだ。この映画で,これがそのまま登場して,少し驚いた。長年,筆者はこれを日本語だと思いこんでいたためだ。そうか,「Hi-yo」は英語で,日本語での馬への掛け声は「ハイドウ」だったかと……。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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