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O plus E誌 2013年1月号掲載
 
 
もうひとりのシェイクスピア』
(コロンビア映画/ファ
ントム・フィルム配給)
      (C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月22日よりTOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開]   2012年11月25日 DVD観賞
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  さすがエメリッヒ!と感嘆する16世紀末倫敦の描写  
  新シリーズでも完結編でもないが,別の意味で待ち遠しかった一作である。当欄では何度か言及しているが,VFX 分野最高の専門誌は米国のCinefexである。1980年創刊の季刊誌で,標準的には各号でSFX/VFX多用作品4本のメイキングが,20頁前後の記事で詳細に解説されている。かつて『ターミネーター2』(91)『ジュラシック・パーク』(93)『タイタニック』(97)等は,丸ごと1冊大特集であったが,VFX利用作品が増えた最近は上記のスタイルで落ち着いている。即ち,業界人のバイブルである同誌の年間16本という枠に入っただけで,VFX注目作であるお墨付きを得た訳である。
 当然,製作費が多いブロックバスター映画が大半で,月刊誌の当欄ではほぼそのすべてを取り上げている。ところが,2011年10月号掲載の『Anonymous』(直訳は「匿名」)は,一向に本邦公開される気配がなかった。コロンビア映画作品なのに,ソニーピクチャーズ配給のラインアップにも挙がって来ない……。忘れかけた頃,こんな題名で,単館系公開で登場するとは思わなかった。あわや見逃すところであった。
 この題名からは,すぐに『恋におちたシェイクスピア』(98)を思い出すが,連想させるのが営業戦略なのだろう。史上最高の劇作家とされるウィリアム・シェイクスピアの別人説は18世紀からあったらしいが,本作では,実際の著作者が第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアだと想定しての物語である。処女王エリザベス1世統治下の英国で,当時の衣装や宮殿内の様子を克明に再現し,権謀術策入れ乱れる政治劇の様相は,『エリザベス』(98)とその続編『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(08年2月号) を思い出す。映画のタッチとしては,本作はこの2本に近い。
 監督は,『インデペンデンス・デイ』(96)のローランド・エメリッヒ。おーそうだった,そうだった。彼でなければ,歴史ミステリーにCinefexが取り上げるようなレベルのVFXを絡ませることができるはずがない。出演者は,主演のリス・エヴァンスはじめ,英国の舞台俳優が多数起用されているが,あまり馴染みがない。エリザベス1世役は,晩年がヴァネッサ・レッドグレイヴ,若き日がジョエリー・リチャードソンで,顔立ちが似ていると思ったら,実の母娘だった(写真1)。これも,エメリッヒの監督の拘りの1つだろう。
 
 
 
 

写真1 若き日と晩年のエリザベス1世。実の母娘が演じている。

 
  監督として,大きな路線変更で臨んだ歴史劇であるが,正直なところ,成功作とは言えない。よほど登場人物の人間関係に精通していないとこの物語について行けない。皆似たような格好をしている上に,時代を行きつ戻りつ,回想シーンが入るので,物語の展開を把握し難い。それでも,最後に明かされる真実は驚愕ものだった。
 さてさて,お目当てのCG/VFXはと言えば,16世紀末のロンドン市内や城を見事に再現している(写真2)。見どころはロンドン塔,ロンドン橋を中心とした俯瞰シーンだ(写真3)。木々の1本1本やテムズ河の船も丁寧にモデリング&レンダリングされているし,円形劇場に向かう人々の列まで克明に描いている。終盤に登場する女王逝去を象徴する雪のシーンにも圧倒される。積雪から弔問の群衆までCGで描かれている(写真4)。『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)『2012』(09年12月号) を指揮した監督なら,破壊シーンを伴わない建造物の描写には,これくらいの要求水準は当然なのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 この程度のVFX合成は,まだ序の口
 
 
 
 
 
 
 
写真3 木々まで綿密に描き込まれたロンドン塔周辺やテムズ河の光景。さすが,エメリッヒ監督は要求水準が違う。
 
 
 
 
 
写真4 雪のロンドン橋や多数の弔問者も当然CG製
 
 
  VFX主担当は,Uncharted Territory社だ。大手ではないが,エメリッヒ監督が上記2作品にも起用したお気に入りのVFXスタジオである。監督の好みを熟知しているのだろう。円形劇場の内部や舞台劇のシーンの大半は実写だが,その歴史的再現の一部にもVFXが活用されているようだ(写真5)  
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写真5 劇場内部は実写で,時代考証もしっかり
(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC All Rights Reserved
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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