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O plus E誌 2012年4月号掲載
 
 
 
 
『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』
(ニューライン・シネマ/
ワーナー・ブラザース映画配給)
 
 
      (C) 2011 NEW LINE PRODUCTIONS

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [3月31日より新宿バルト9ほか全国ロードショー公開予定]   2011年2月29日 東映試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  物語は単純だが,3Dは上々のテーマパーク風映画  
  前作は,今回の3Dブームの先頭を切って公開されたデジタル3D作品で,19世紀の作家ジュール・ヴェルヌの代表作「地底旅行」(1864年刊)をモチーフとした冒険物語だった。映画の原題は小説の英題『Journey to the Center of the Earth』そのものだったが,「地底旅行」では古めかしいし,丸ごとカタカナでは長いので,前をカットしたのだろう。この題に「2」を付した続編となると,やはり地中が主舞台だと思うのが普通だが,本作は地底の世界は全く無縁で,副題の「神秘の島」が舞台の冒険物語である。
 実は,「神秘の島」はJ・ヴェルヌが1875年に著した別の小説の題である。第1作と同様,この本に書かれた世界が地球上に実在することを確かめる旅に出るので,同じ趣向の続編になっている。本作の英題は,「2」を「To」の掛け詞に使って『Journey 2: The Mysterious Island』とうまく収めたのに,邦題は前回「Journey to」を外してしまった故に,全く妙な邦題になってしまった訳だ。J・ヴェルヌの熱烈ファンから苦情が出そうな題だが,最近の若者たちはJ・ヴェルヌの名前すら知らないだろうから,と配給会社は判断したのだろう。
 監督は,前作から変わって『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争』(10)のブラッド・ペイトン。カナダ出身の若手監督だ。前作の主演ブレンダン・フレイザーは出演せず,引き続き登場するのは,甥っ子ショーン役のジョシュ・ハッチャーソンで主役に昇格している。
 ヒロインは,南の島のガイド役カイラニで,『ハイスクール・ミュージカル』シリーズのバネッサ・ハジェンズが演じている。この2人だけだとちょっと弱いが,ショーンの義父役でドウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)と祖父役でマイケル・ケインが脇を固めている。
 今回の冒険は,避難信号をキャッチしたショーンが義父に帯同されて危険水域にある謎の島を訪れたところ,そこには行方不明だった冒険家の祖父が暮らしていたという設定だ。冒険はヴェルヌの「神秘の島」をなぞる形で展開するが,加えてこの島は,スチーブンソンの「宝島」とスウィフトの「ガリバー旅行記」に登場する島の形状が合体したものという位置づけだ。子供の頃,少年冒険小説集を読み漁った世代にはワクワクするネタのオンパレードで,米国での週末映画観賞に同伴する父親へのサービスかと想像する。
 この映画の第一印象は,劇場用映画というより,テーマパークの冒険アトラクションである。最後までその気分で観たのだが,帰宅後に確認したら,前作でも同じ感想を書いていた。その意味では,まさに同じコンセプトでの続編であり,3D映画としては見せ方でかなり進歩していると感じられた。
 この「神秘の島」は大規模なハワイ・ロケを敢行しているが,その素晴らしい自然に加えて,3D演出効果を意識し,VFXで強化したシーンが続出する(写真1)。祖父が住む木の上の家(写真2)は,J・ハッチャーソンが主演した『テラビシアにかける橋』(08年1月号)を思い出させてくれる。同作品も童話の映画化だったから,世界観は少し似ている。浮世離れした祖父のアレキサンダーは,オスカー俳優のM・ケインが演じるには軽過ぎる役だが,これはこれで味があった。小柄なショーンとお爺ちゃんの掛け合いは,『バック・トウ・ザ・フューチャー』シリーズでの,マーティとドクを彷彿とさせる(写真3)。そう言えば,同PART3でドクが意中の女性クララと意気投合するのは,共にジュール・ヴェルヌの大ファンであったことだった。
 
   
 
 
 
 
 
写真1 これが辿り着いた「神秘の島」の情景。雄大だが,3D上映での演出効果も巧みに配してある。
 
   
 
写真2 木の上の家は『テラビシアにかける橋』を思い出す
 
   
 
写真3 マイケル・ケインとジョシュ・ハッチャーソン
 
   
   そうした既視感一杯のファミリー映画だが,後半は「神秘の島」のCGクリーチャー達が続々と登場する(写真4)。メガみつばちの背に乗っての飛翔シーンは3D効果抜群で,『アバター』(10年2月号)でも,見せ場は空中飛行だったことに学んでいるようだ。前作に比べて,画面が明るく,その点でも好感が持てた。  
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写真4 最初に登場するトカゲキングが一番好い出来
(C) 2011 NEW LINE PRODUCTIONS
 
   
   
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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