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O plus E誌 2010年12月号掲載
 
 
 
 
『シュレック フォーエバー』
(ドリームワークス・アニメー ション
/パラマウント ピクチャ ーズ配給)
 
 
 
      Shrek Forever After (TM) & (C) 2010 DreamWorks Animation LLC.

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [12月18日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2010年10月18日 ギャガ試写室(大阪)   
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  3D化も上々なのに,これが見納めとは,ちと惜しい  
   当初は,今月号の本欄で『ゴースト もういちど抱きしめたい』を取り上げるつもりだった。別記したように,余りの期待外れにメイン欄での紹介は断念し,その身代わりに格上げとなったのが,同じパラマウント映画配給の本作品である。といっても,フルCGアニメの人気シリーズで,第4作目となる作品に代役扱いは失礼なのだが,試写を観るまでは,今更CGの出来映えで詳しく語ることもないだろうと思っていたためである。
 正直言って,予想を上回る楽しい作品だった。いや単に楽しいというより,筆者自身が4作中最も楽しめた作品である。作品単体の出来映えは2作目よりは少し劣り,3作目よりも立て直した感じがするが,本シリーズをよく知るファンを意識したサービス精神溢れた作りになっている。試写会で観たのは,2Dの日本語吹替え版であるが,一言で言えば,手慣れたキャラ達をこなれた描画力・演出力で描き,完成度が高い作品に仕上がっていると感じた。この「こなれた」という感じは,CG描画と主人公たちの活躍の両方に表われていた。
 2001年製作の第1作以来,キャラクターの身体や衣服の動き,髪の毛や動物の体毛,炎や水の表現等で,業界のCG技術レベルの向上に貢献して来たシリーズであるが,改めて前3作のDVDを観て,その進歩の程を実感した。本作でも,目立たないながら,リグの付け方が複雑になり,キャラの動きが滑らかになっている。多数の松明の描き方なども絶品である。
 映像としての驚きは,2D版なのに冒頭から3D効果を感じさせるシーンの連続だったことだ。勿論,フルCGアニメであるから,CGオブジェクトは3D空間内に自由に配置できるし,アーティスト達はReal D眼鏡をかけて,各シーンをデザインしたというから,3D版は無理なく,かつ効果的な立体映像が提示されているはずである。2D版は左目用の単眼映像が上映されているに過ぎないのに,立体感を感じさせてくれる素晴らしい映像に仕上がっている。その原因の1つは画面の中心付近に注目すべき人物や物体を置き,視差を感じやすいカメラワークを採用していることだ。映画のカメラワークの基本はパンであり,次に人物の動きに「付ける」形でのドリー移動であるが,3D映画の流行以来,光軸方向,即ち前後方向のカメラ移動が目立つ。『アバター』(10年2月号)のジェームズ・キャメロン監督の助言を得て,3Dオブジェクトへの焦点や光の当て方を工夫したというから,単眼映像でも立体感が増すのだろう。背景の描き込みが,以前よりずっとシンプルになっている。フルCGアニメは,ひたすら映画的で複雑な背景描写や,ノイズ・ボケ・揺れ・焦点移動といった映画カメラ特有の映像表現へと傾斜していたのに,3D版の出現により,少し別の方向に歩み出したようだ。
 演出にも「こなれた」感があるのは,主要キャラクターの性格付けがはっきりし,各国の声の出演者たちも,それだけセリフ回しが上手くなったからだろう。かつて,吹替え版のシュレックの声に濱ちゃん(濱田雅功)は似合わないと書いたが,どうしてどうして,今では立派な堂々たるシュレックである。また,改めて名コンビであるドンキーの演技に感心し,偉大さを感じるほどである (写真1) 。声の出演者エディ・マーフィ,山寺宏一は共に,アカデミー賞助演男優賞ものだ。
 
   
 
写真1 改めて,助演のドンキーの偉大さを感じる
 
   
   本作の設定は,お城の生活に飽き,昔の森の生活を懐かしむシュレックが,ペテン師に騙されて契約書にサインしたことから,異次元の世界が登場することだ。何もかも失って,必死に元の世界を取り戻そうとするシュレックの奮闘が描かれているが,敵役がランプルスティルスキンなるペテン師1人というのもシンプルで良い (写真2) 。長ぐつをはいたネコ (写真3) ,ピノキオ,クッキーなどの定番キャラの使い方も上手い。挿入曲の選曲にも定評があるが,カーペンターズの「Top Of The World」,スティーヴィー・ワンダーの「For Once In My Life」などの懐メロとオリジナル・スコアの使い分けも見事だ。
 前作では少しマンネリを感じたのだが,これが最終編というのは,ちと惜しい! これだけの人気キャラが揃っているなら,邦画だと10数作か20作くらいまで作り続けると思えるほどだ。
 
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写真2 本作の敵役はペテン師ランプルスティルスキン(中央)
 
   
 
 
 
写真3 名脇役も飼い馴らされてメタボ状態に
Shrek Forever After (TM) & (C) 2010 DreamWorks Animation LLC.
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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