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『グラディエーター』+『ブレイブハート』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
独立記念日休暇の週に『パーフェクト ストーム』と争って敗れたが,それでも興収1億ドルは突破し,ブロックバスター映画の仲間入りした夏の大作である。物価上昇のためもあるが,主演のメル・ギブソンが史上最高のギャラということでも話題になった。 ラッセル・クロウの『グラディエーター』を「映画らしい映画,主役らしい主役」と評したが,この映画にもその形容がピッタリ当てはまる。大作らしい重厚さ,民衆の支持を得る主人公,不屈の精神,理想の父親像…。そんな点もそっくりだ。 時代は1976年,アメリカ独立戦争の真っ只中。フレンチ・インディアン戦争の勇者,ベンジャミン・マーチン(メル・ギブソン)は農夫となり,妻を亡くした後,7人の子の良き父親として平和な日々を送っていた。やがて独立戦争が起こり,サウスカロライナの地にもその波が押し寄せる。志願して参戦した長男ガブリエルが捕らわれ,次男トマスが残虐なイギリス軍ダビントン大佐(ジェイソン・アイザックス)に殺される。その怒りと悲しみから,マーチンは民兵を率いて立ち上がる。というのが,ストーリーである。 「スコットランド軍 vs. イングランド軍」「アメリカ軍 vs. イギリス軍」という構図の違いはあるが,民衆の支持を集める英雄メル・ギブソンの姿は『ブレイブハート』(95)にそっくりだ。まさにハマリ役である。広い草原での野戦シーンも,名作『ブレイブハート』を彷彿とさせる。 脚本は『プライベート・ライアン』のロバート・ローダット。戦闘シーンとヒューマンドラマのバランス,盛り上げ場を心得ていて,実に上手い。編集は『7月4日に生まれて』のデビッド・ブレナー,衣装デザインは『タイタニック』のデボラ・スコット,音楽は『ジョーズ』『スター・ウォーズ』『E.T.』でお馴染みのジョン・ウィリアムズとオスカー・ウィナー揃いだ。200年前はもはや時代劇だから,当時を生き生きと再現するのには,こういうベテラン・スタッフの力は欠かせない。 意外なのは監督ローランド・エメリッヒ,製作ディーン・デブリンのコンビだ。『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』等の大味なSF専門かと思ったら,こういう史劇大作も卒なくこなしている。ドイツからハリウッド入りして一線で活躍しているだけのことはある。 問題は,彼らのセントロポリスFX社のVFXの出来栄えだ。全く情報がない段階で予想していた通り,戦争シーンでの兵士の水増し,時代を感じさせる建物の挿入と邪魔な背景の削除,遠景でのマット画合成等にディジタル処理を使っていた。SPE社のオフィシャル・サイト(http://www.spe.com/movie/thepatriot/)には,代表的な処理例もたくさん載っている。 兵士は,実写画像をコピー&ペーストしているだけでなく,CGでも描いているようだ。写真1は映画前半のシーンだが,後半の合戦シーンはよくできていた。クライマックスのこの部分はしっかり時間をかけて作られたのだろう。 その皺寄せが他のディジタル・マット合成に行ったようだ。これが何とも不出来である。実写同士の合成シーンはまだ許せるが,手書きのマット画がいかにも嘘っぽい(写真2)。絵そのものの質がよくないのだろう。加えて,画質・色調の調整も上手くない。つなぎ目部分だけの連続性は処理してあっても,それぞれの部分のコントラストやトーンが,何か今一つしっくり来ないのである。ランドサット画像で作ったモザイク日本列島を見ているかのようだった。VFX使い方も同じならば,違和感の方まで『グラディエーター』とそっくりだ。 要するに,手間ヒマかけて画質を調整していないということだ。『ダイナソー』や『パーフェクト ストーム』の丁寧で高度な仕上げを見てしまうと,この欠点は目立ってしまう。このため,前半30分の映像は,何かバタバタした落着かない感じだった。この映画は全体に明るめだが,もっと全体を暗くして,合成のアラを目立たなくしても良かったかと思う。後半の締まり具合を見ると,撮影監督のせいではなく,後処理のVFXが悪さをしているとしか言いようがない。 後半が素晴らしかったので,前半の欠点は許そうかと思ったら,エピローグのフランスからの援軍到来シーンで再び興醒めてしまった。監督がVFXスタジオを経営していると,使わなくてもいいところに拙い技術を使ってしまうのだろうか。映画そのものは力作だけに残念至極だ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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情状酌量の余地なく有罪 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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