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O plus E誌 2008年5月号掲載
 
 
 
スパイダーウィックの謎』
(パラマウント映画)
 
  (C)2008 Paramount Pictures
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [4月26日より日比谷スカラ座他全国東宝洋画系にて公開予定]   2008年3月3日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CGキャラも美術装飾も見どころの多い力作  
 

 またまたファンタジーである。食傷気味と言われながらも,よくぞこれだけ次々と出てくるものだ。大半は,『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(01〜03)が完結し,『ハリポタ』シリーズ(01〜)の大成功を見てから,4, 5年前に企画されたに違いない。劇場公開ではヒットしなくても,世界中がマーケットなので,2次利用を含めた累計で大型製作費回収の帳尻を合わせているようだ。一般観客には飽きられても,結構デキのいい作品が多い。原作がしっかりしているからだろう。加えてCG/VFXで見どころが多いとなれば,当欄では語らざるを得ない。この映画は,正にその範疇である。
 原作は,絵:トニー・ディテルリッジ,作:ホリー・ブラック「スパイダーウィック家の謎」(文渓堂刊,全5巻)で,2003年のベストセラーというから,古典的な児童文学ではない。物語は,様々な生物標本に溢れた実験室から始まる。博士然とした男が奇妙な生物の観察記録を書き終えて,その書を封印した途端に不気味な叫び声が響き渡る……。
 この導入部が巧みで,冒険小説好きはワクワクとしてしまう。そう,自分もトム・ソーヤーやハックルベリー・フィンになりたくて,映画なら『グレムリン』(84)『ジュマンジ』(95)が大好きな層(筆者もその1人だ!)向けの映画だ。主たる物語は,その80年後に展開する。森の中のスパイダーウィック家に移り住んできた姉弟が,封印されていた禁断書を開けてしまったため,邪悪な妖精たちと必死に戦うことになってしまう。
 監督は『フォーチュン・クッキー』(03)のマーク・ウォーターズ。まだメジャー系映画は数作品の中堅どころだが,語り口の上手い監督だ。主演は,『ネバーランド』(05年1月号)『チャーリーとチョコレート工場』(同9月号)の名子役フレディ・ハイモア君。その後,『プロヴァンスの贈りもの』 (07年8月号) 『アーサーとミニモイの不思議な国』(同9月号)にも出演していたし,撮影済みの『奇跡のシンフォニー』(07)もまもなく公開される。かつてのハーレイ・ジョエル・オスメント君か,それ以上の活躍ぶりだ。この映画では,冒険心に富むジャレット,物静かなサイモンという双子の兄弟を,一人二役で演じる。背格好の似た吹き替え役を使っているシーンが多いが,同時に顔を見せるシーンは勿論デジタル合成の産物だ(写真1)

 
   
 
写真1 双子の兄弟(右2人)は,勿論デジタル合成  
 
     
   この作品のウリは,映画全体が「妖精学入門」ともいうべき設定で,大叔父のアーサー・スパイダーウィックが残し,シンブルタックが守り通してきた「謎の書」(写真2)が「妖精図鑑」に相当している。妖精といえば,ティンカーベルのような羽のある可憐な存在を思い浮かべるが,この映画に登場する各種妖精は,醜悪で邪悪な種族も存在する。「妖怪」ともいえる存在もあり,言わば西洋版「水木しげるの世界」だ。グリム童話に通じるテイストも感じられる。  
   
 
写真2 これが妖精の手引書とシンブルタック  
 
     
   ここ数年,形あるものなら表現できないものはないとまで言えるCG/VFX技術の進歩であるから,VFX大作には,利用カット数を競うだけでなく,何か個性的な表現を求めたくなる。この映画の場合,妖精キャラクタのデザインと質感のある表現に力点を置いている。まるで,人形そのものだと思える質感であり,それが実物ジオラマの中に配置されて映えている。
 キャラクタ・デザインはTippett Studio,VFXは老舗ILMが担当している。これ以上ない組み合わせだ。ホグスクィール(写真3),ゴブリン(写真4),レッドキャプ(写真5),マルガラス(写真6),スプライト (写真7)等,いずれもかなり個性的でいいデザインだ。CG製の妖精(妖怪?)の動きはいいし,その 配置や照明効果も完璧だ。風の精が巻き起こす雲のような存在,ジャレット達を背に乗せて大空を飛翔する鳥なども上出来で,さすがILMと掛け声をかけたくなる。
 もう1つ特筆すべきは,美術装飾にも力を入れていることである。冒頭の実験室だけでなく,80年後の屋敷や調度のデザインや質感も,なかなかのものだ。映画美術,舞台美術を志す若者には,いいお手本になるだろう。一般観客も観て損はない。  
 
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写真3 豚とカエルの混血のホグスクィール(左)   写真4 イタズラ好きで醜悪なゴブリン
 
 

 
 
写真5 マルガラスに仕える凶暴なレッドハット軍団   写真6 世界征服を企む邪悪なマルガラス
 
 

 
 
 
 

写真7 これはイメージ通りの花の妖精スプライト
(C)2008 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 
     
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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