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O plus E誌 2005年7月号掲載
 
 
逆境ナイン
(アスミック・エース配給)
         
  オフィシャルサイト[日本語]   2005年4月28日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
 
  [7月2日より渋谷アミューズCQN他にて全国公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  このハチャメチャな青春ムービーに拍手  
 

 先月に続き,本欄で日本映画を 2本も紹介できるのは喜ばしい。来月も2本が候補に上がっているから,日本映画のVFX活用も本格的になって来たということだ。
 しかも『ローレライ』『亡国のイージス』『男たちの大和』といった話題大作でなく,思わぬところからこういうマイナーな伏兵が現れるのは嬉しいではないか。それもハチャメチャなストーリーで,まず企画会議を通りそうにない映画が陽の目を見たのである。「日本映画がツマラナイのは制作決定権がジジイにしかないからだ!」とは,よくぞ言った。いや,年齢のせいでなく,市場を開拓する気のないジジイしかいないからで,それに遠慮してロクな企画を持ち込まないからだ。何であれ,その障害をくぐり抜けて映画化したのだから,エライ!
 広報宣伝でも当初は香港映画『少林サッカー』(02年5月号)を意識したコピーが使われていたから,それに啓発されて思いついた野球版かと思ったが,しっかりと原作があった。島本和彦作で1988年から「少年キャプテン」に連載されていた同名コミックだそうだ。試写を観た時点では絶版だったが,映画の公開に合わせて復刊されるらしい。とはいえ,やはり『少林サッカー』の成功あったからこの企画が通ったのは間違いないだろう。急増の高校野球チームが甲子園を目指して勝ち進むのも,愛嬌のあるデブの捕手が登場するのもそっくりだ。
 監督は『海猿』 (04)でデビューしたばかりの羽住英一郎。主演のエース不屈闘志役の玉山鉄二の演技は,チャウ・シンチーやジム・キャリーを意識している。紅一点のマネージャー月田明子役に堀北真希で,彼女は上記の『HINOKIO』でも美少女役で登場していた。野球部監督の田中直樹のとぼけた味もいいが,校長の藤岡弘の堂々たるバカバカしさはもっといい。この映画が次々と繰り出す妙な名言の数々は,彼のどっしりかつ人を喰った存在感によって引き立っている。
 とにかくバカバカしく楽しい青春ムービーだ。「それはそれ!これはこれ!」の名言も,とんでもないスコアのスコアボードも,「自業自得」の巨大な石碑もひたすら楽しい。この弱小チームのユニホームが,何となく楽天イーグルスのそれと似ているのは偶然だろうか?
 VFXシーンはといえば,オムニバス・ジャパン担当で330カットもある。冒頭の宇宙のシーンから,いかにも作り物の雨,炎のボール,グランドでの飛んだり跳ねたりまで多彩だが,少し大人しく,「想定の範囲内」に留まっているのが残念だ。クオリティは低くていいから,『少林サッカー』を超える使い方,もっとハチャメチャな感じを与える使い方をして欲しかったところだ。ケシカランのは,そのVFXシーンの1枚もスチル画像が公開されないことだ。予告編にはVFXシーンがあるのに,プレスシートにも広報用のCD-ROMにも全くないのは片手落ちだ。
 ところで,楽しいことは楽しいが,この映画に『ロード・オブ・ザ・リング』『アビエイター』と同じ入場料金は高いなと感じる。はるか低予算映画であれば, 1,000円位で観せてもいのではないか。「夫婦50割引」だけでなく,こういう青春デートムービーに「ヤングカップル割引」があれば,もっと入場者も増え,みずみずしい企画の日本映画が出てくると思うのだが。

 
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