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O plus E誌 2004年7月号掲載
 
 
 
『トロイ』のVFX補遺
 
      (c)2004 Warner Bros. Ent.  
         
   
   二番煎じゆえに評価しよう  先月号で語り切れなかったことを記しておきたい。☆☆☆は少し点数が甘いのではとの声もあったが,映画そのものはその通りだ。批評家たちの評価は予想通りで,この種のスペクタクル映画に高い点数がつく訳がない。ドラマのレベルは標準的だが,ブラピ・ファンは十分満足したようだし,かつてのスペクタクル大作を知らない若年観客層には,これだけのスケールの映画は観賞に値し,純粋に料金分の価値はあったようだ(筆者の授業を受講している学生から聞いた感想である)。
 予想通り,オーランド・ブルームの弓の名手ぶりは観客の笑いを誘ったようだ。まるで『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスそのままだからだ。ボロミア役を演じたショーン・ビーンもほぼおなじ風貌で登場する。これはパロディやオマージュというより,純粋にファン・サービスと捉えるべきだろう。予告編を観ただけで『ロード…』そっくりだと思えるから,それを承知で観に来てくれたファンへのお返しなのである。
 本欄は,その追随精神を評価し,二番煎じゆえに最高点の☆☆☆を与えた。『ロード…』が示した映像表現のスケールの大きさ,視覚効果の有効性で素直に影響を受け,しかもある点でそれを勝っていたからである。じゃんけん後出しでもいい。技術を進歩させるのは,先人を真似,それを超えようとする努力である。
 例えば,予告編にも登場するスパルタ船の航行シーンだ。数艘の船のアングルからどんどんカメラを引いて,千艘もの船が海を埋めつくす光景へと移る。このシーンには息を飲む。実写は勿論,ミニチュアでも表現し得なかったシーンだ。細部を観れば,船正面の装飾,帆のデザインは一艘ずつ変えてあるし,それぞれが起こす波も丁寧に描き込まれている。通常この種の目玉シーンは1カットだけだが,この映画では,再三色々なアングルで描いて見せる。トロイの海岸でも同様な描写を再現していた。実物は4艘だけだが,ここに多数の船や兵士を描き加えられている(写真1)。
     
 
 
 
写真1 (左)実際に建造されたスパルタ軍船は4艘,(右)残りはもちろんCG製。
(c)2004 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
 
 
 
   多数の兵士の戦闘シーンも同様だ。エキストラそのものもかなりの数に上るが(写真2),実写での戦闘シーンとCGで描いた大軍同士の戦闘の光景とが違和感なく融合されている。同じ戦闘を様々なアングルとスケールから描いている点も見逃せない。この点に関しては,間違いなく『ロード…』を超える描写になっている。CG製の兵士の形状には,3次元スキャナで精密に計測された人体の形状モデルを用い,動きはニューラル・ネットワークによる計算で,個々の兵士の反応や行動を描いている。こうした技術面の進歩があってこそ,さらに進化した視覚効果が生み出されているのだ。このVFXの主担当は,Framestore CFC,Moving Picture Co.の両社だ。
 さる3月号,4月号で『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』がVFXの一時代を築いたことに触れたが,早くもそれに追いつき追い越す勢いの作品がいくつも出始めている。『トロイ』だけでなく,今月号で取り上げた2本『デイ・アフター…』『…アズカバンの囚人』もそうだ。あまりの勢いに,5年来本欄を担当して来た筆者も驚きを禁じ得ないでいる。同時代体験を綴るCIFシリーズとしては,まだまだ見逃せない動きだ。
     
 
写真2 CG製でない兵士も1250人を投入
(c)2004 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
 
写真3 どこまで本物でどこからがCGなのか区別できない
 
 
 
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