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O plus E誌 2002年2月号掲載
 
 
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『ジェヴォーダンの獣』
(ストゥディオカナル&デイヴィス・フィルムズ作品/ギャガ-ヒューマックス配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][仏語   (2001年11月6日 ギャガ試写室)  
         
     
  若手スター勢揃いの仏No.1ヒット作  
   日本語のオフィシャル・サイト名からも分かるように,これもフランスでのNo.1作品だ。ただし,本国での公開は『アメリ』の2001 年4月,『ヴィドック』の9月より前で,年初に公開され『クリムゾン・リバー』を超える動員を記録した。
 先月号で紹介した『フロム・ヘル』と同様に,史実に基づく未解決事件の新解釈がテーマだ。同じジョニー・デップ主演の『スリーピー・ホロウ』(99)にも印象が似ている。地方の村で起きている難事件の解決に,中央から派遣された探偵役の主人公が臨むという設定やヒロインとの結ばれ方も良く似ている。
 時代は『ヴィドック』よりもさらに半世紀以上前で,まだ革命前の18世紀のフランス,ルイ15世の治世である。1764年から1767年にかけ,南部のジェヴォーダン地方に100人以上の農婦や子供達を食い殺す野獣(ベート)が現われ,人々を恐怖の底に落し入れた。3度の討伐隊の派遣で巨大な狼が捕えられ,これが正体とされたが,その後も虐殺が続き,事実は今も謎のままとなっている。原題は『le Pacte des Loups』,英題は『Brotherhood of the Wolf』だが,邦題は分かりやすい題が選ばれた。
 主人公の科学者探偵フロンサックに『トリコロール/赤の愛』(94)のサミュエル・ル・ビアン。地元貴族の令嬢でヒロインのマリアンヌに『ロゼッタ』(99)でカンヌ映画祭主演女優賞を獲ったエミリエ・デュケンヌ。マリアンヌの兄で,フロンサックとの仲を嫉妬する敵役ジャン=フランソワに,『ジャンヌ・ダルク』(99)『クリムゾン・リバー』(00)で若手No.1スターの座を得たヴァンサン・カッセル。そして,フロンサックを慰める美しい娼婦シルヴィア役には『マレーナ』(00)のモニカ・ベルッチというキャスティングだ。フランス映画界の若手スターの勢揃いというから,最近フランス映画に馴染みのない観客もこれで顔が覚えられる。
 シナリオは良く出来ていて,それぞれの人物像が上手く描き分けられている。フロンサックの従者でアメリカ・インディアンのマニ(マーク・ダカスコス)と娼婦シルヴィアの役どころが実にいい。人間ドラマかと思えば,後半は派手なアクションで堪能させられる。  むしろ欠点は,別の意味での主役の獣の描写だ。この獣は『ベイブ』『101』シリーズでお馴染みのジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップが製作した。アニマトロニクスとCGの両方が用意され,現場での判断で使い分けたり,両方とも試して選んだという。当然,動きの激しい場面ではCGが主だったろう。ロケ場面が多いので,アニマトロニクスの場合もスタジオ内で撮影し,後で合成された場面が多いと考えられる。残念ながら,この獣の描き方はあまりいい出来ではない。VFXとしては『スリーピー・ホロウ』に比べてかなり劣る。『ヴィドック』に比べたら,1/10もない。
 カメラワークも,アップのショットや短いカットが多く,大作感を損なっている。カメラを引いた構図や,最近流行の長回しのカットも見られない。『グラディエーター』(00)や『パトリオット』(00)がスケール大きく感じたのは,屋外の戦闘シーンのワイドアングルのせいだった。この映画も,上質のマット画や部分修正にディジタル処理を用いれば,もっと重厚感のある素晴らしい映像になったのにと惜しまれる。
 
   
     
  アクションは秀逸,VFXは予算不足  
 
私は『ヴィドック』は見ていませんが,この映画はハリウッド的ですね。ただし,英語だとセリフも少しは分かるのに,フランス語だと字幕に頼りすぎて疲れます(笑)。
疲れるのは,カメラワークのせいもあるでしょう。私は音がうるさいのが気になりました。
獣の出し方はもったいつけ過ぎですね。登場の仕方も感心しませんでした。ネタバレになるからと,スチル写真でくれなかったのも残念でした。
フランス映画なのにハリウッド的な味付けですが,ハリウッド並みの製作費をかけてたら,もっと別の演出があったでしょう。アニマトロニクスとCGの選択を現場で決めたというのは,事前にCGでアクションのシミュレ−ションをしてないからです。
なるほど。
白い狼も重要な役回りですが,これも予算があればCG版も用意できたでしょう。
冒頭の狼を殺すシーンも,CGで作ればもっと詳しく描けてましたね。
あーあ『ヴィドック』のVFXをこちらに,この映画の脚本家をあちらに回せば,どちらも良くなったのに(笑)。でも,この映画時評としては欠点ばかりを上げましたが,映画としてはかなり楽しめましたね。
後半のアクションの連続は見応えありました。フランス映画でここまでの武闘シーンをやるのかと。
ジョン・ウー作品を支えた編集者や武術指導者が付いていたようです(写真)。
最近は,こうした盛り上がりがないと物足りなく,映画で満腹感が得られなくなりました。
しっかり死体も出て来ますが,『フロム・ヘル』ほどではありません。ご安心を(笑)。
   
 
写真 VFXは今イチでもアクションは秀逸
   
   
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