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O plus E 2022年7・8月号掲載
 
 
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
(ユニバーサル映画/東宝東和配給)
      (C)2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC.
 
  オフィシャルサイト [日本語][英語]    
  [7月29日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2022年6月16日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新3部作の完結編は恐竜も多彩で,市中に登場する  
  映画におけるCGの威力を存分に見せてくれた第1作『ジュラシック・パーク』(93)から,29年が経つ。琥珀の中に閉じこめられた恐竜の血のDNAを抽出し,遺伝子工学の力で現代に恐竜を蘇らせようというアイディアが秀逸だった。現実には難しいが,この映画以降,古代生物学を志す若手研究者が増えたという。CG/VFX技術が映画制作を一変させてしまったことは今更言うまでもない。両方の意味で,記念碑的な作品であった。
 当然続編が製作され,3部作は『ジュラシック・パークIII 』(01年9月号)で完結するが,14年後に装いも新たに『ジュラシック・ワールド』(15年8月号)として蘇る。当時も書いたが,同作は所謂リブート作品ではない。物語をリセットして最初からやり直すのではなく,コスタリカ沖のイスラ・ヌブラル島のパークは事故で閉鎖されたが,大幅な拡張とリニューアルで,「ジュラシック・ワールド」として再出発するという位置づけだった。時間をおいた続編であり,映画のスケールも大幅アップさせていた。当初から3部作が宣言されていて,2作目『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18年7・8月号)が作られ,本作が新3部作の完結編となる。
 前作(2作目)では,島の火山活動が活発化するが,救出された恐竜たちは,米国加州のロックウッド邸の広大な地下施設に収容される。恐竜を兵器として売りさばこうとする一味との攻防となり,破壊されたロックウッドから恐竜たちは世界に放たれる……。
 本作は,その4年後から始まり,解放された恐竜は世界中に散り,人間と共生する生活を送っていた。その中で,恐竜の遺伝子を人間に都合の良いように悪用しようとするバイオシン社が登場し,イタリアの山中に恐竜保護区を設けてしまう。その企みを阻止するため,人里離れて暮らしていたオーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)が立ち上がる……。
 監督は,新3部作1作目のコリン・トレボロウが復帰して,脚本にも参加している。クローン人間のメイジー(イザベラ・サーモン)はオーウェンとクレアに引き取られて暮らしていたが,14歳になっている。バイオシン社の計画を打ち砕くべく,旧シリーズの3博士が本作で勢揃いする。マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)は前作から顔を見せたが,アラン・グラント博士(サム・ニール)とエリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)までが本作に登場するのは,さすがに嬉しくなった(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 サトラー博士(前)とグラント博士(後右)の再登場は嬉しい 
 
 
  以下,当欄の視点での感想と論評である。
 ■ 少し飽きられたのか,前作から,一般観客や(普通の)評論家たちの評価は高くないが,当欄の評価は変わらず,低くない。恐竜の種類も過去最高を更新し,計35種類に達している。特筆すべきは,カラフルな羽毛をもつピロラプトルの描写だ(写真2)。表情づけも極めてリアルで,草食恐竜のパラサウロロフスには,優しい表情がつけられている(写真3)。オーウェンと信頼関係を築いているヴェロキラプトルのブルーはすぐに見分けがつく。ブルーの子供のベータの動きは可愛く(写真4),母子の連れ立ったシーンは,まるで動物愛護映画だ(写真5)

 
 
 
 
 
写真2 これが,カラフルな羽毛をもつピロラプトル 
 
 
 
 
 
写真3 オーウェンと疾走する草食恐竜のパラサウロロフス
 
 
 
 
 
写真4 一目でブルーの子供だと分かる
 
 
 
 
 
写真5 ブルーとベータ。この母子の存在で癒される。
 
 
  ■ 世界中に放たれただけあって,登場場面も多彩だ(写真6)。ロケ地も,テキサス州,ユタ州,イタリアのドロミーティ山脈の山中,地中海のマルタ島などが選ばれている。太平洋岸北西部では冬の撮影で,雪の中や凍りついた湖面にも恐竜たちを登場させている。恐竜同士のバトルは一段と激しくなり(写真7),俳優との絡みもかなり複雑になっている。俳優を3Dスキャンして,デジタルダブル化しているゆえに実現できたと思しきシーンも多々あった。恐竜はCG中心だが,アニマトロニクスも多数採用されているようだ。その区別は全くつかず,動きの量から推測するしかない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

写真6 人間社会の様々な場面に登場。(上)こんな賭け事の対象にも。
(中)史上最大の飛行動物の翼竜ケッアルコアトルス。
(下)ドライブインシアターにT-レックスが登場し,人々は逃げ惑う。

 
 
 
 
 
写真7 肉食恐竜同士のバトルは一段と激化
 
 
  ■ 恐竜の動きがスピーディになり,見せ場としては,オーウェンとのバイクチェイスに目を見張った(写真8)。マルタ島の市街地を背景としたチェイスでは,彼を追う肉食恐竜が街を駆け巡る。勿論,CG合成だ。シリーズ中の最高の出来映えで,6作目ともなるとここまで進歩したのかと感嘆してしまう。
 
 
 
 
 
写真8 バイクのオーウェンを追うチェイスシーン
(C)2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.
 
 
  ■ CG/VFXの主担当は,勿論ILMで,1社で大半を処理している。他には,Lola VFX,Hybrideの名がある程度だ。3D化はDNEGの3D部門,PreVisはProof社が担当している。本作の完成披露試写は,IMAXで観たが,低音が大迫力で,重量感がハンパではなかった。
 
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  (O plus E誌掲載本文に加筆し,画像も追加しています)  
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