head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
   
title
 
O plus E誌 2018年7・8月号掲載
 
 
ジュラシック・ワールド/炎の王国』
(ユニバーサル映画/東宝東和配給 )
      (C) Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月13日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年6月22日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  恐竜も多彩で,1作目ファンにも納得の出来映え  
  シリーズ5作目である。CG映画の金字塔となった恐竜映画『ジュラシック・パーク』(93)から8年間に続編2本が製作されたが,さらにその14年後に装いも新たに『ジュラシック・ワールド』(15年8月号)が製作・公開された。題名を「ワールド」にして,少し趣きを変えているが,シリーズをリセットして原点からやり直す流行りの「リボーン」ではなく,原3部作の前提を踏襲していた。経営者はそのままで,従来の客層に加えて,新たな顧客を呼び込もうという「新装開店」に思えた。本作は,その新3部作の2作目に当たる。
 CG/VFXに残る『ターミネーター』シリーズと同じ5作目に追いついた。ライバルの企画が迷走して,一貫性に欠けるのに対して,本シリーズはいずれもコスタリカ沖の架空の島,イスラ・ヌブラル島を舞台としている。本作は前作の素直な続編で,3年後の設定となっているが,1作目への言及やオマージュも随所に見られる。
 前作の新型恐竜インドミナス・レックスの脱走事件でパークは崩壊し,人間は引き上げるが,恐竜たちは島に棲息していた。湖に沈んだインドミナス・レックスのDNAを採集し,生き残った恐竜たちを捕獲して一儲けしようという一味が現れる。島では火山活動が活発化して,恐竜たちの生命が脅かされる。パークの運用管理者だったクレア・ディアリングは,島の恐竜絶滅を防ぐため,元恐竜監視員のオーウェン・グレイディらを募り,探検隊を島に派遣する。後半は,島から救出して本土に運んだ恐竜たちを巡っての両チームの戦いとなる。
 結論を先に言えば,当欄の評価は高い。今やCGで描いた怪獣もの,恐竜ものは珍しくないので,新規性を出すのは易しくないが,恐竜のクオリティを着実に向上させた上に,物語のエンターテインメント性も確保しようとする姿勢が好ましい。このシリーズで人生の深味を味わいたい観客はいないから,それで十分だ。
 前作の監督のコリン・トレボロウは引き続き脚本を担当しているが,新監督として『怪物はささやく』(17年6月号)のJ・A・バヨナが起用されている。スペイン出身の有望株である。主演の男女は前作と同じで, オーウェン役でクリス・プラット,クレア役でブライス・ダラス・ハワードだ。第1作と前作に登場した中国人遺伝学者ヘンリー・ウー役のB・D・ウォンも継続出演だが,1&2作目で重要な役割を果たした数学者イアン・マルコム博士役で,ジェフ・ゴールドブラムが再登場する。この物語の一貫性が嬉しい。他の助演陣としては,敵役でレイフ・スポール,個性派のトビー・ジョーンズだが,ベテラン俳優のジェームズ・クロムウェルやジェラルディン・チャップリンの姿も懐かしかった。
 以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ 恐竜の種類と数はシリーズ最多というだけのことはあり,登場場面にも凝っている。第1作目を思い出させるシーンが再三登場するのが嬉しい。看板のT-レックスに追われる姿,島で生き残っていた草食恐竜ブラキオサウルスを見上げる場面(写真1)は,第1作そのものだ。恐竜標本展示室(写真2)で展示台に隠れる場面は,第1作でラプターが迫るキッチンのシーンを思い出す(写真3)。草原の落木に身を隠すシーンは,恐竜の種類は違えど,多頭数のガリミムスの疾走場面へのオマージュだろう(写真4)
 
 
 
 
 
写真1 思わずブラキオサウルスを見上げるシーン
 
 
 
 
 
写真2 ロックウッド邸内の恐竜標本展示室。いいデザインだ。
 
 
 
 
 
写真3 第1作のキッチンのシーンを思い出す
 
 
 
 
 
写真4 木はだいぶ大きいが,あの草原シーンが懐かしい
 
 
  ■ 水棲恐竜モササウルスが水中から頭を出してガブリと噛み付くのは,前作のプレイバックだ。島に残っていた遊覧走行車ジャイロスフィアを再起動させるのも,前作の観客へのサービスだろう(写真5)。インドミナス・レックスに替わる新型恐竜は,また混血種で,これも同じパターンだ。今回はラプターとの混血のインドラプトルなので,少し小さい体長8m(前作のは12m)だが,さらに賢く獰猛になっている。皮膚表面の描写は文句の付けようがないが,本作では目の表情描写の向上が目立った(写真6)。悪人との対決が強調されていたので,恐竜たちが可愛く見え,余り怖く感じない(写真7)。もっとも,家族連れ観客の子供たちは相当怖がっていたようだが……。
 
 
 
 
 
写真5 もう一度観たかったジャイロスフィアを再起動してくれる
 
 
 
 
 
写真6 新型恐竜のインドラプトル。目が不気味。
 
 
 
 
 
写真7 こうして見ると怖いが,実際はさほどでも…
 
 
  ■ 建物も山々も雄大で,構図的にも凝った光景が多い。とりわけ,火山爆発や溶岩流の描写は見事だ(写真8)。ホログラム・ディスプレイをさりげなく小型化する(写真9)等,小物描写でも絵作りが丁寧だ。音楽も迫力満点で,さすがハリウッド大作だと感心する。強いて欠点を上げれば,オーウェンが育てたラプターのブルーの扱いが,『猿の惑星』シリーズのシーザーに似過ぎている。CG/VFXの主担当は勿論ILMで,他にOne of Us,Image Engine,Base FX等数社が参加している。  
 
 
 
 
写真8 爆発や建物にまで流れ込む溶岩流は,しっかり描かれていた
 
 
 
 
 
写真9 新しい小型ホログラム・ディスプレイが登場
(C) Universal Pictures
 
 
    
  ()
 
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
Page Top
sen  
back index next