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O plus E 2022年7・8月号掲載
 
 
(日本語吹替版)
(字幕版)
ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』
(パラマウント映画/
東和ピクチャーズ配給)
      (C)PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
 
  オフィシャルサイト [日本語][英語]    
  [8月19日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2022年5月31日 TOHOシネマズ六本木
2022年7月5日 東宝東和試写室
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  ハイテンポのVFXアクションは字幕版で観るべし  
  任天堂のマリオと並んで,世界に人気を二分する日本が生んだゲームキャラ「ソニック」を主役としてVFX映画の第2弾である。画像のクレジットに「SEGA OF AMERICA」が入っているように,やや知名度が低い日本よりも,映画も米国市場か世界市場を意識した企画であることは間違いない。
 劇場映画化1作目『ソニック・ザ・ムービー』(20年3・4月号)は大傑作ではないものの,VFX多用作としては,結構見応えのある映画だった。青いハリネズミのソニック自体のCGモデルは単純でも,彼が高速疾走するスピード感は抜群だったし,敵役ドクター・ロボトニック(以下,英語で記す)が繰り出す車輌兵器のレベルが高かった。
 それで続編の本作にも同程度の期待はしたのだが,最初の試写での評価は散々だった。表題欄の評点を見て頂ければ分かるように,この映画を「日本語吹替版」と「字幕版」の両方を観たのだが,その評価が2段階も違っている。この差異を中心に,本作を語ることにしよう。
 最初に観たのは,大きなシネコンで開催された一度限りの内覧試写会で,「吹替版」しか選択の余地がなかった。何度か書いたように,通常の大人向きの劇映画では「吹替版」は嫌いではないのだが,本作に関しては,この吹替が諸悪の根源だと感じた。今,当日の自分のメモを見ると,以下のように記している。
「前作に比べて,全く面白くなかった」
「CG/VFXは豪華。音楽も悪くない。背景,構図も壮大」「この豪華さが子供だましのような物語と合っていない」
「この映画を誰が見る? ゲーム世代より下の年齢か?」
「原因の1つは字幕でなく,吹替のせいだろう」
「Dr. Robotnik役のジム・キャリーの大げさな演技は元より分かっている。彼だと嫌みはないのに…」
「名人・山寺宏一が,なぜこの程度の役をこなせない?」
 この時点で既に,Dr. Robotnik役の吹替が最大の原因だと分析している。それで,再度「字幕版」のマスコミ試写を見せてもらった結果,映画の印象は全く変わり,2ランク上の評価に落ち着いた次第だ。
 以下,その分析と改めて考察したVFXの評価である。
 ■ 天才声優,吹替の名人と言われる山寺宏一なら,どんな役でもこなせるはずだし,ジム・キャリーの声ならむしろ最適に近い。それが本作では,まるでお子様番組のナレーターのような口調であった。元の英語のセリフと吹替版のセリフの長さの違いも原因かも知れないが,この吹替に関する全体方針が幼児対象のトーンにするよう,指定されていたのではと想像する。それゆえ,彼の声だけでなく,映画全体が子供だましの駄作の印象を与えたのだと思う。だとすると,吹替版責任者の判断は根底的に間違っている。本作は幼児用映画ではなく,もっと年長で,スピーディな展開を求めるゲーム世代を対象に考えるべきなのである。
 ■ 前作の結果,Dr. Robotnikは追放され,キノコの星で暮らしている。冒頭のCGで描いたキノコの出来映えが秀逸で,一気に物語に引き込まれる(写真1)。一方のソニックは,トムとマディのカップルとグリーンヒルズの家で平穏に暮らしていた。ところが,Dr. Robotnikが銀河系の最強の戦士ナックルズを連れて地球に戻ったことから,状況は一変する。同等以上のスピードとパワーをもつナックルズに,ソニックは全く歯が立たず,間一髪で味方のテイルスに助けられる。テイルスもナックルズも元のゲーム時代から登場するキャラクターで,毛色はハリネズミのソニックの青に対して,キツネのテイルスが黄(写真2),ハリモグラのナックルズが赤(写真3)と,極めて識別しやすい。

 
 
 
 
 
 
 

写真1 冒頭のキノコ星の描写で一気に引き込まれる

 
 
 
 
 
写真2 弟分のキツネのテイルスは心強い味方
 
 
 
 
 
写真3 ハリモグラのナックルズは凄まじい強敵
 
 
  ■ 物語は,史上最強の破壊力をもつ武器「マスターエメラルド」の在り処を探す展開となる。ここで緑色も登場する(写真4)。前半の戦いで,ナックルズのパワーは凄まじく,そのCG描写はいい出来映えだった。少なくとも,ゲーム版に比べて劇場映画のクオリティは高いと実感させられるクオリティである。(少しネタバレになるが)後半でナックルズはソニックと力を合わせ,共にDr. Robotnikを倒す戦いに参加する。このラストバトルも見応えがあった。
 
 
 
 
写真4 これがマスターエメラルドで,鮮やかな緑色 
 
 
  ■ CG/VFXの威力は,本作でも,メカを自在に操る天才発明家のDr. Robotnikが繰り出す武器の描写で発揮されている。前作に登場したドローンは,攻撃能力が進化し,随所で登場する(写真5)。彼が遠隔操縦する大型ロボット(写真6)や,海が割れて要塞が登場するシーン(写真7)も良い出来だった。CG的には平均レベルだが,テンポが良く,ノリノリの気分で観られる。
 
 
 
 
 
 
 

写真5 Dr. Robotnikのドローンは進化し,攻撃能力も増大

 
 
 
 
 
 
 

写真6 Dr. Robotnikが遠隔操作する巨大ロボットもかなり手強い

 
 
 
 
 
 
 

写真7 海が割れ,大滝となるシーンはスケールが大きい
(C)PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.

 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分の一部を入れ替え,追加しています)  
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