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O plus E 2022年1・2月号掲載
 
 
ゴーストバスターズ/アフターライフ』
(コロンビア映画 /SPE配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月4日より全国の映画館で公開予定]   2021年12月6日 ソニー・ピクチャーズ試写室
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  旧作ファンも若い映画ファンも満足する見事な続編  
  1980年代に大ヒットしたSFコメディ映画の32年ぶりの続編だ。3人の冴えない科学者と彼らに雇われた黒人労働者の4人が,幽霊退治ビジネスを始めたという設定で,『ゴーストバスターズ』(84),『ゴーストバスターズ2』(89)が作られた。若い映画ファンもこの題名を知っているのは,女性4人が幽霊退治する『ゴーストバスターズ』(16年9月号)があったためだろう。
 2010年頃から第3作が企画されていたが,イゴン・スペングラー博士役のハロルド・ライミスが2014年に死去したため,当初計画を断念し,女性4人に入れ替えてリブート作としたようだ。時流に乗った企画でそこそこの出来映えだったが,大ヒットはしなかった。
 本作は旧2作の正統な続編である。主演の少女フィービー(マッケナ・グレイス)はスペングラー博士の孫娘で,母カリー(キャリー・クーン)や兄トレヴァー(フィン・ウルフハード)ともに祖父が遺した田舎町の古い屋敷で暮している(写真1)。この町には30年間原因不明の地震が頻発していた。ある日,フィービーは地下実験室で多数のハイテク装備を発見し,地震の原因は祖父がこの町に封印したゴースト達の仕業だと突き止める。一方,兄トレヴァーは納屋の中から,古びた車ECTO-1を発見する。
 
 
 
 
 

写真1 屋敷内には,祖父を偲んでこんな写真も飾られている

 
 
  なかなか見事な理屈づけだ。フィービーが科学者を目指す少女で,トレヴァーが機械工作や修理に長けているという人物設定もリーズナブルだ。母カリーに想いを寄せる学校講師(ポール・ラッド)が,復活したゴースト達から彼らを守ろうとするモチベーションをもつのにも納得が行く。かくして,ゴーストトラップ装置は復元され,ECTO-1は修理されて動くようになり,ゴースト達の復讐劇を待ち受けることになる。
 起用された監督を知って,嬉しくなった。旧2作の製作・監督であったアイヴァン・ライトマンは,本作では単なる製作に退き,息子のジェイソン・ライトマンが監督・脚本を担当している。既に 『JUNO/ジュノ』(08年6月号) やジョージ・クルーニー主演の 『マイレージ,マイライフ』(10年3月号)で2度オスカー/ノミネートを果たしている中堅の実力派監督だ。それでも,父が大ヒットさせた映画の続編のメガホンをとるとなると気合いが入ったことだろう。「祖父から孫へ,受け継がれるプロトンパック」「父から息子へ,受け継がれる監督としてのスピリット」は,巧みな宣伝文句だ。
 過去のヒット作の数十年ぶりの続編には失敗作が少なくないが,本作は大成功作だと思う。旧作を知らない観客に対しても,少年少女が活躍する冒険譚としてしっかり作られている。楽しく,面白い。そしてオールドファンを喜ばせる仕掛けがいくつもあるとなると盤石だ。
 以下,当欄の視点からのコメントと感想である。
 ■ 先ず最初に登場するゴーストは金属の残骸を食べて生きている「マンチャー」だ。本作で初登場のCG製のクリーチャーだが,ずんぐりした体形で愛嬌がある(写真2)。鉄を食べるというのが,後で重要な役割を果たすが,そうした使い方も上手いと感じる。本作では,懐かしいECTO-1からシートが飛び出し,背もたれに内蔵のプロトンパックを使ってビームを発射する(写真3)。旧作ではビームは光学合成だったが,今では当然CG表現であり,明らかにクオリティは上がっている(写真4)
 
 
 
 
 
 
 

写真2 最初に登場するゴーストは,金属を食べるマンチャー。ずんぐりして,愛嬌のある体形。

 
 
 
 
 
写真3 ECTO-1からプロトンビームを発射する
 
 
 
 
 
 
 

写真4 (上)旧作の4人組のビームはこのレベル,(下)CGの進歩で明らかに質的にも向上

 
 
  ■ ECTO-1は旧式のキャデラック型の救急車だが,勿論,旧作で撮影に使った車輌が残っていた訳でなく,新たに中古車を入手し,それにさらに傷や錆を入れて,何十年も納屋に置かれていたように見せている。空に向かってジャンプするシーンがあるが,とてもそれは無理だろうから,別の新車のVFX加工かCG描写だろう。写真5のようなシーンもCGであっても不思議ではない。もっとも,行く先の山や黒雲のCG描写は少しプアだと感じた。
 
 
 
 
 

写真5 ECTO-1が向かう山と黒雲は少しプア

 
 
  ■ その他のゴースト達も中盤以降に登場する。極悪非道の「テラードッグ」も本作ではCG描写で,見事に恐ろしいキャラに見せている(写真6)。このシリーズのシンボルの「マシュマロマン」は身長約34mのボスキャラのはずだったのに,本作ではスーパーの棚のマシュマロの袋から,小さな可愛い姿で大量発生する(写真7)。グッズ市場で人気が出るだろうが,この形のマシュマロ菓子も販売されることだろう。本作のCG/VFXの主担当は大手のDNEGで,副担当はFramestoreとCrafty Apes,PreVisはProof社が担当している。
 
 
 
 
 

写真6 旧作でお馴染みのテラードッグもCGで登場

 
 
 
 
 
 
 
 

写真7 今回は小柄で,大量発生するマシュマロマン

 
 
  ■ 旧作ファンには嬉しい仕掛けが多数ある。国内では箝口令が敷かれているので書けないが,中盤以降で飛び切りのサービスサプライズがある。熱心なファンは,海外サイトに記載されている登場人物名を探すといいだろう。ミッドクレジットにも注目だ。
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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