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O plus E 2021年5・6月号掲載
 
 
ラブ&モンスターズ』
(パラマウント映画
/Netflix配信)
      (C)2020 Paramount Pictures
 
  オフィシャルサイト [日本語]    
  [4月14日よりNetflixで独占配信中]   2021年4月24日 Netflix映像配信を視聴
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  少しほのぼの感があり,愛らしいモンスター達  
  本号の2本目は「第93回アカデミー賞の予想」(21年Web専用#2)で予告した通り,このモンスター映画である。アカデミー賞視覚効果部門のノミネート5作品に選ばれるまで,全く知らない映画だった。様々な予想記事でも『Love and Monsters』と表記され,日本での劇場公開なしの扱いだった。米国ではパラマウント映画配給で昨年10月に公開されたので,英語版DVDを取り寄せるしかないかなと思っていたところに,思わぬ朗報が舞い込んだ。米国外ではNetflixが配給権を得て,4月14日から世界一斉配信するという。それじゃ,何度でも繰り返し見られるし,当欄の読者にも勧めやすい。という訳で,アカデミー賞の結果が判明している本号で語ることにした次第だ(残念ながら,受賞はしなかった)。
 前号で『映画 モンスターハンター』,本号で上記『ゴジラvsコング』を論じて,すっかりモンスターづいているが,サイズや醜悪さでは,本作のモンスター達は全く敵わない。むしろ,愛らしさを感じる存在で,題名に「ラブ」が入っているように,映画自体にほのぼの感があり,コメディタッチの愛すべき1作である。
 宇宙から「アガサ616」なる小惑星が到来し,その影響で多数のモンスターが地球上を跋扈し,人類の95%が死滅した近未来を描いている。といっても,征服者はエイリアンではない。小惑星の地表面衝突前にミサイルで撃破したまでは良かったが,そのミサイルが撒き散らした化学物質によって,アリ,金魚,ミミズ,ナメクジ,ゴキブリ等の小動物が巨大化し,人類を捕食した。劇中で登場する牛や犬は普通のサイズだったから,何でこんな小動物だけが対象なのか呆れるが,どうやら科学的根拠はなく,意外性と滑稽さを演出したかったようだ。
 その一大事から7年後,運良く生き残った5%の人類は地下の退避壕で暮していて,小規模のコロニーを形成している。主人公のジョエルは少しドジな青年で,戦闘能力は乏しく,危険な地上に出て食料を確保する役に立たないので,コロニー内では料理担当である。離れ離れになって別のコロニーにいる恋人のエイミーとは,無線で連絡を取り合っていたが,恋しさが募り,約130キロ離れた場所の彼女に会うために,彼は地上を7日間歩く危険な旅に出る……,という冒険物語である。
 監督はマイケル・マシューズ。国籍は南アフリカ共和国で,これが長編映画の監督2作目というが,全く知らなかった。ジョエルを演じる主演は『メイズ・ランナー』シリーズ3部作で主役のトーマスを演じたディラン・オブライエン。出演時は27歳でだいぶ大人になった感じがするが,TVシリーズ出演も含めて,まだまだ青春映画の主人公の役柄が多い。エイミー役には,ジェシカ・ヘンウィック。「李玉」なる中国名があるように,英国系,中国系のハーフだが,東洋人を感じさせる顔立ちだ。上記『ゴジラvsコング』にもクレジットされているが,どこで登場していたかは分からなかった。
 ジョエルの旅が中心のロードムービーで,サバイバルがテーマだが,サスペンス度は低く,ホラー要素はない。以下,物語の進行に沿ったCG/VFX解説である。
 ■ 最初にしっかり姿を見せるのは,巨大化したカエル(写真1)で,大きな舌で獲物を捕え,何でも食べてしまう。よく見ると醜悪だが,表情が剽軽で得をしている。続いて森の中で遭遇するボールダースネイルは巨大なカタツムリで,こちらも愛らしい(写真2)。勿論いずれもCG製だ。その一方,コロニー内にいる牛のキャロル,旅の相棒となる犬のボーイ(写真3)は本物の動物のようだ。
 
 
 
 
 
 
 

写真1 まず登場するのは剽軽なカエルのモンスター

 
 
 
 
 
写真2 森に現れるボールダースネイルも愛らしい 
 
 
 
 
 
写真3 旅の相棒となる犬のボーイ。どう見ても普通の犬だ。
 
 
  ■ 旅の道中でジョエルは,クライドとミノウなる父娘と遭遇し,しばし行動を共にする。地上で生き抜いてきた彼らから各種モンスターの危機回避法を教わる。昆虫系,爬虫類系,両生類系で特性や対処法が違うらしい。少女ミノウとジョエルの掛け合いも楽しい。
 ■ ムカデの怪物あたりから,醜悪さが増してくる(写真4)。最も凶暴で危険なサンドコブラーは,巨大化した女王蜂とのことだが,全身は登場しない(写真5)。クライマックスの浜辺でのバトルの相手は,カニの怪物だった(写真6)。大きな躯体は醜悪だが,目は意外と可愛いなと思ったら,その目が淋しげであることがこの物語の行方に大きく影響する(写真7)。いい物語だ。
 
 
 
 
写真4 一見何だか分からなかったが,ムカデらしい
 
 
 
 
 
写真5 最凶モンスターは女王蜂のサンドコブラー
 
 
 
 
 
 
 

写真6 ラストバトルは浜辺でのカニとの対決

 
 
 
 
 
写真7 この淋しげな目を見て,その後の展開ががらりと変わる
 
 
  ■ もう1つ物語に潤いを与えてくれるのは,ロボットMav1s(メイビス)の存在だ(写真8)。モンスター一辺倒でなく,こうした気配りロボットを登場させるという配慮から,この物語のラストに少し期待が持てた。丁寧に作られていて,CGのレベルも低くない。迫力,分量では『ゴジラvsコング』の比ではないが,全体的にバランスよく配されている。CG/VFXの担当はMill Film社で,ポストビズはMPC LAが担当していた。
 
 
 
 
 
写真8 旅の途中で出会ったロボットMav1sに癒される
(C)2020 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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