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O plus E 2021年3・4月号掲載
 
 
映画 モンスターハンター』
(コンスタンティン・フィルム/
東宝&東和ピクチャーズ配給 )
      (c) 2020 Constantin Film Produktion GmbH
 
  オフィシャルサイト [日本語][英語]    
  [3月26日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2021年3月8日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  同じ主演女優&監督で,別の人気ゲームを実写映画化  
  表題中に「映画」の2文字があるように,大人気ゲームの実写映画化作品である。先にアニメ化もされている。日本人ゲーマーなら知らない者はいないというヒット作だそうで,彼らの中では「モンハン」と略されている。カプコン社最大のヒット作で,シリーズ合計で既に6,500万本を売り上げているそうだ。
 第1作は2004年発売で,長寿シリーズの中では比較的新しいので,年配の映画ファンは知らない人の方が多いだろう。筆者はたまたまプレビズ技術の研究プロジェクトで,このゲームのモンスターたちを街頭でリアルタイムMR合成する機会があった。と言っても,ゲーム自体をプレイしたことはなく,モンスターの種類も全く知らない。以下は,当欄の読者のためだけの解説である。
 主演はミラ・ジョヴォヴィッチ。スチル写真を見て,『バイオハザード』シリーズのアリスと何が違うのだろうと思った(写真1)。監督・脚本が夫の監督ポール・W・S・アンダーソンであるから,まさにそのものだ。同シリーズは6作を数えたので,同じカプコン製のゲームを題材として,再度シリーズもので成功しようとしているのだろう。
 
 
 
 
 
写真1 まるで『バイオハザード』のアリスの再現
 
 
  少し比べてみよう。ゲームとしての「バイオハザード」は「サバイバルホラー」に属し,ウイルスに汚染された世界でゾンビたちと戦い,生き残るゲームである。肉体破壊,流血描写による恐怖感演出がウリだった。一方の「モンスターハンター」は大型のモンスターを狩る痛快さが売り物で,「ハンティングアクション」なる新ジャンルを作り上げたという。さほどストーリー製はないので,映画化では物語設定や展開に自由度がある。
 主人公は国連合同軍事演習の女性リーダーで,特殊部隊を率いる軍人のアルテミスと設定されている。共演はタイ人のアクション俳優トニー・ジャーで,大きな剣を振り回すハンター役だ(特に名前はない)。ハンター団の大団長として,『ヘルボーイ』シリーズの個性派俳優ロン・パールマンが配されていて,日本人若手女優の山崎紘菜も名を連ねている。
 ただただモンスターと戦うことが主眼の映画だが,映画としては「起承転結」が有ったように感じた。以下,その起承転結に沿った物語展開の概要とそこで遭遇するモンスターの解説である。
 ■ まずオープニング・シーンは多数のハンターたちを乗せた船の航海シーン。うねる波の中かと思えば,何とこれが砂漠の砂の中だった。その設定に少し驚くが,砂に住むモンスターのディアブロスが現われ,船を襲う。もうこれだけでCG全開だ。続いてアルテミス率いる部隊が現実世界で砂漠に集結するが,大砂嵐に遭遇し,大地の裂け目に落ちて異世界(「新世界」と呼ばれている)に入り込む。この砂嵐は迫力満点だ。そこで再度登場したディアブロス(写真2)と戦った上に,逃げ込んだ洞窟内で蜘蛛型モンスターのネルスキュラ(写真3)に捕まってしまう。ここまでが「起」の約30分。どのモンスターも醜悪で,なるほどゲームの世界観だ。
 
 
 
 
 
 
写真2 砂漠で遭遇する角のあるディアブロス亜種
 
 
 
 
 
 
 
写真3 有毒なトゲをもつ蜘蛛型のネルスキュラ
 
 
  ■ 冒頭の船から落ちたハンターが登場し,アルテミスと争った上で,共同してネルスキュラを倒す。次にネルスキュラの毒で獰猛なディアブロスを弱体化させた上で,ハンターがその頭頂部に剣を打ち込んで倒すまでが「承」の約30分だ(写真4)。アクション中心の目まぐるしい展開だが,洞窟や砂漠の戦いばかりで,少々退屈した。
 
 
 
 
写真4 まるで『バイオハザード』のアリスの再現
 
 
  ■ 美しい水辺のシーンが出てきて,一気に目が覚めた。アフリカロケでの実写シーンで,そこに草食系のアプケロスを配置している(写真5)。続いて,大団長率いるハンター団と合流する「転」で,物語は急旋回する。料理長のアイルーは猫型人間で愛嬌がある(写真6)。モンスターだらけの中で少し和んだ。受付嬢の山崎紘菜はこの部分で登場するが,出番は少なかった。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 ロケ先の美しい水辺には草食のアプケロスを配置
 
 
 
 
 
写真6 調査団の料理長はユーモアのあるアイルー。
 
 
  ■ 「結」のラストバトルで登場するのは,巨大火竜のリオレウスだった(写真7)。モンハン・ファンの人気投票では間違いなく上位にランクされる存在だそうだ。ディアブロスの7.6mに対して,こちらは体高14mとのことだが,もっと大きく感じる。強靭な翼を拡げると,さらに大きい。このモンスターの発する炎の迫力も凄まじい。もう四半世紀以上前のことだが,『ジュラシック・パーク』(93)のCG製の恐竜T-レックスを見て子供(小学生?)が引きつけを起こしたという報道があった。今見ると単純極まりない出来映えで,このリオレウスはその数百倍も恐ろしい。これはPCやTVモニター程度のゲーム画面では味わえない,映画ならではの迫力である。絶対に大きなスクリーンで観た方がいい。本作のCG/VFX担当はMR.Xで,ほぼ1社で全編約1,300カット,80分ものシーンを描いている。
 
 
 
 
 
 

写真7 真打ちは体高14mの巨大火竜のリオレウス(写真2と比較のこと)。強靭な翼にモンハン・ファンは痺れる。
(C) 2020 Constantin Film Produktion GmbH

 
  ■ 筆者はこのCG/VFXのクオリティを確認するためにこの映画を観たが,試写会場では,ゲームとは無縁と思える初老の映画担当記者が「後半はさすがで,思った以上の拾い物だった」と漏らしていた。世界観が何であれ,そう仕上げるのがハリウッド映画の実力だ。
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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