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O plus E 2019年Webページ専用記事#3
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「アラジン オリジナル・サウンドトラック」
(Universal Music =music=)

   
 
英語盤 日本語盤 デラックス盤
 
 
  ディズニー映画のサントラ盤紹介をするのは,今年になってからもう3度目だ。「メリー・ポピンズ リターンズ」(19年1・2月号)「ダンボ」(同Web専用#2)に続いて,本作である。元々,ディズニー映画は挿入歌にも演奏曲にも力を入れていて,主題歌には映画史に残る名曲が多く,主題歌集だけで多数のCDが発売されている。今年は,かつての名作の続編やリメイク作が目白押しだから,必然的に当欄もこうなってしまう。
 国内盤として3種類が発売されていて,その組合せは「メリー・ポピンズ リターンズ」とほぼ同じである。即ち,日本国内販売の英語盤は,日本語ライナーノーツが付くが,中身は輸入盤(国際盤)と同じで,デラックス盤は英語盤と日本語盤を(重複を除いて)併せたお徳用盤である。
 英語盤には,歌唱曲12曲が最初にまとめて入っていて,13曲目から演奏だけのオリジナルスコアが25曲収録されている。この歌唱曲は,1992年のアニメ映画(旧作)での歌唱曲がそっくり採用されている。“Arabian Nights” “One Jump Ahead” “Friend Like Me” “Prince Ali” “A Whole New World”とそのRepriseで,さらに新曲“Speechless”が加わっている。『メリー・ポピンズ リターンズ』では,劇中に前作の名曲を全く再利用せず,すべて新曲であったことが不評だった。ブロードウェイ・ミュージカルでもこの5曲が歌われているし,物語の骨格も維持した実写映画だというので,名曲の再利用を期待したが,本作はその期待以上だった。
 改めて,旧作のサントラ盤と聴き比べてみたが,音楽の録音レベルが格段に進歩している。それを殊更印象づけるのは,ジーニーを演じるWill Smithの歌唱力だ。映画本編の紹介での彼の独壇場であったことは述べたが,音だけのサントラ盤でも存在感は際立っている。本作で,エンドソングとして名曲“A Whole New World”を歌っているのは,One Directionの元メンバーZAYNと彗星のごとく現れた期待の新人女性歌手Zhavia Wardだ。旧作のPeabo Bryson & Regina Belleの朗々たる歌唱とは趣きが異なるが,現代風の見事な歌唱で,別の魅力を備えている。
 新曲“Speechless”(邦題は「スピーチレス〜心の声」)もかなりの佳曲で,これを歌うジャスミン王女役のNaomi Scottの歌唱力も素晴らしい。劇中では2度登場するが,そのPart 1,Part 2に加えて,サントラ盤ではフルコーラス版も収録されている。あまりに出来が良かったためだろう。あるいは,この新曲でアカデミー賞オリジナル歌曲賞を狙っているのかも知れない。
 実写版映画本編は旧作アニメ版と骨格は同じでも,演奏だけのスコアには再利用はなく,新曲
“Speechless”と同様にすべてAlan Menkenが書き下ろしている。旧作や『美女と野獣』(91)『ポカホンタス』(95)等々のディズニー映画でも,主題歌と演奏曲の両方を作曲してきた映画音楽史上に名を残す大作曲家で,彼を再度起用したというだけで,本サントラ盤の成功は間違いなかったと言える。
 日本語盤は,勿論,映画本編での吹替俳優の歌唱を収めているが,Alan Menkenのオリジナルスコアはそっくり同じで,やはり計37曲収録である。それじゃ,ZAYN & Zhavia WardのエンドソングやNaomi Scottの“Speechless (Full)”は聴けないのかと言えば,この2曲にWill SmithがDJ Khaledと歌う“Friend Like Me (End Title)”を加えた英語歌唱の3曲が残されている。粋なサービスだ。
 吹替俳優たちの日本語歌唱も,英語盤とは一味違う魅力がある。ジャスミン王女役は,まだ20歳の木下晴香。この女優の名前は初めて知ったが,小学生の頃からミュージカル劇団で鍛えられただけのことをある歌唱力だ。そして,注目の的は,旧作に続いてジーニーの声を務めた声優界のスーパースター・山寺宏一だ。どんな役でもこなす「七色の声を持つ男」が,「この吹替のオファーが来なかったら,声優を辞めよう」と思ったと言うから,期するものがあったのだろう。元々,彼は旧作のジーニーの故ロビン・ウィリアムズや,ウィル・スミスの他作品の吹替を担当していたから,当然の起用とも言えるが,その実力通りの吹替歌唱だ。旧作と本作の日本語盤を聴き比べると,歌唱力の向上がよく分かる。何よりも,この日本語盤の歌を聴くと,まるでウィル・スミスが日本語で歌っているのかと思えてしまう。完全無欠の声優だ。映画本編の日本語吹替版は未見だが,歌以外の場面の吹替も完璧なのだろうと想像する。
 
   
 

■「Hearts Beat Loud (Original Motion Picture Soundtrack)」
(Milan Records)

   
 
 
 
   こちらは国内盤はないので,通常は輸入盤かAmazonやiTunesでデジタル・ミュージックを購入することになる.ところが,何と,今回はプレスシートに音楽配信サービスSpotifyのバーコードが付いていて,これをスマホのカメラに向けてダウンロードするだけでサントラ盤を丸ごと無料で聴くことができた.映画中にも登場したように,この映画自体がSpotifyと提携していたためだろう.
 サントラ盤は全13曲収録で,この数はちょっと意外だった.劇中ではどう考えても30曲以上流れていたからである.エンドロールを観て数えると,オリジナル歌唱曲はたった4曲で,劇中で曲の一部(数小節程度)が流れた曲が22曲もあった.大半はレコード店主の父親のお気に入りという位置づけである.なるほど,そうした既存曲の全部の権利を得てサントラ盤に収めるのは難しかっただろう.この22曲の内,劇中ではTV画面にライブシーンが流れたMitskiの“Your Best American Girl”だけが,本サントラ盤に収録されている.
 上記オリジナル4曲の内,3曲“Hearts Beat Loud” “Blink (One Million Miles)” “Everything Must Go”がラストライブで父娘が歌った曲である.映画中で何度か歌われ,主題歌の別バージョンも収録されている.残る1曲“Shut Your Eyes”は,父親が独りで弾き語りしていた曲だ.娘サラ役のKiersey Clemonsは,女優としても歌手としても無名に近いが,改めて聴いても,この役に相応しいだけの歌唱力は備えている.本作で注目され,今後いくつかのミュージカル映画で起用されることだろう.
 サントラ盤には,他にオリジナルスコア6曲収録されている.劇中にBGMとして流れていた電子楽器中心の心地よいスコアだ.歌唱曲と同様,すべて音楽担当のKeegan DeWittの作である.
 
   
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