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O plus E 2018年Webページ専用記事#4
 
 
MEG ザ・モンスター』
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月7日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2018年8月7日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  テーマもテイストもB級だが,CG製の巨大鮫はA級  
  原題は『The Meg』。「メグ」と言われると,心優しい女性のようだが,全く違う。これだけだと何のことか分からないが,邦題には副題があるので,想像できるだろう。正式には「メガロドン」,もっと正確にはカルカロクレス・メガロドンというらしい。随分恐ろしげになったが,それでもやはり,どんな種類のモンスターか分からないだろう。チラシやポスターを見れば一目瞭然だ。
 映画ならではの架空のモンスターではなく,約200万年前に実在したが,絶滅したはずの古代の超巨大鮫であり,全長23m,体重20トン,歯は25cmだという。これも数字だけではピンとこない。船や人間と並べてみると,その巨大さがすぐ分かる。ともあれ,それだけの巨大鮫に遭遇したら,恐怖以外の何物でもない。
 サメに襲われるパニック映画と言えば,誰もがS・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』(75)を思い出すだろう。その正体はホオジロザメで体長約6mというから,メグちゃんの足元にも及ばない(足はないか(笑))。かなり大きなジンベエザメは,この両者の中間の大きさらしい。『ジョーズ』はシリーズ化され,4作目まで製作されたが,その後もサメ・パニック映画は多数製作されている。
 当欄で取り上げたのは,連載開始当時の『ディープ・ブルー』(99年11月号)と最近の『海底47m』(17)である(もっと有ったかな?)。他に『オープン・ウォーター』(03)『シャークナイト』(11)『ビーチ・シャーク』(11)『パニックマーケット』(12)『ロスト・バケーション』(16)等々があり,『シャークアタック』『シャークネード』等のTVシリーズもDVD化されている。共通しているのは,低予算で,B級テイストの映画が多いということだ。本作は,大手のワーナー・ブラザース作品で,当初から公開週の興行収入No.1が予想された大作である(実際,1週目は第1位で,その後3周連続で2位をキープしている)。当然,巨大鮫はCG製だろうから,どんな大作に仕上がっているのかが楽しみだった。
 大陸から200マイル離れた東シナ海に最新の海洋研究施設が建設され,海洋生物や深海の様子を観察・研究していた。地球上で最も深いマリアナ海溝以上の深海が発見され,その未知の海溝に向かった深海潜水艇が,突如巨大な何かの襲撃を受け,動けなくなってしまう。その救出のために急遽呼び寄せられたのは,5年前の自らの失敗の責任を取って一線を退いていたレスキュー・ダイバーのジョナス・テイラーだった……。
 監督は,『ナショナル・トレジャー』シリーズのジョン・タートルトーブ。主役のジョナスを演じるのは,当代きってのアクション男優ジェイソン・ステイサム。当欄では何度も「ハゲなのに,なぜかカッコいい」と評したが,元飛び込みの選手であり,海に潜るシーンが多い本作は正に適役だ。上半身裸で筋骨隆々たる立ち姿は,男でも惚れ惚れする。ヒロインは,研究施設の責任者のスーインで,中国人女優のリー・ビンビンが演じている。ハリウッド作品にも数多く出演しているが,小池百合子都知事の若い頃に少し似ている美形だ。その他の助演陣には目立った俳優は登場しない。ある意味で,B級パニック映画の標準形だ。結末も,何とか難敵を倒し,主人公とヒロインが助かるに決まっている。せいぜい,その過程で誰がどのタイミングで落命するか,どんな手段で巨大鮫を退治するかを楽しむのが,興味の的である。
 そもそもJ・ステイサムには,メジャー作品の主役は相応しくないと思っていた。最近は『エクスペンダブルズ』『ワイルド・スピード』両シリーズで,重要なチーム・メンバーを好演しているが,本来はB級アクション映画の孤独な主人公の方が似合っている。仁侠映画時代の健さん,『殺人拳シリーズ』『やくざ刑事シリーズ』の頃の千葉真一のような役柄と言えば分かるだろうか。
 ところが,この映画はメジャー大作であるにも関わらず,演出は徹底したB級テイストだった。サメ・パニック映画のB級くささと,J・ステイサムのB級プログラム・ピクチャーで映える主役ぶりが見事にマッチしていた。そう,彼のカッコ良さと巨大鮫だけが目立てば,その他はどうでもいいのである。
 以下,当欄の視点での評価と感想である。
 ■ まず,海洋研究施設のデザインが素晴らしい。大金持ちがスポンサで,大金を投じて作った最新施設という感じがしっかりと表れている。かなり海面から降下して,海中を観察できる海底展望室という設定も魅力的だ。そこから見える魚や海洋生物はすべてCGで描かれているのだろう。それゆえに,この展望室で少女の目の前にメガロドンが出現するシーンは圧巻だった(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 最新の海底展望室で少女に眼前に現れたのは……。構図が上手い。
 
 
  ■ 施設の外観や内部の描写にコストをかけられるのは,さすがワーナー作品だ。その他,グライダーと呼ばれる水中艇,救命艇等にも製作費がかかっているなと感じる。海の道具類の描写が,筆者のような海とは無縁の一般人には珍しく,楽しい。
 ■ 肝心の超巨大鮫メガロドンだが,海面に姿を現わし,ヘリと遭遇するシーンでその大きさが分かる(写真2)。まるで鯨だが,動きは遥かに敏捷だ。このシーンの海面処理も見事だった。勿論,ほぼすべてCGの産物であるが,俳優が絡む場面の撮影では,大型水槽を利用し,メガロドンの出現場所の確認用に実物大模型も使われたようだ(写真3)
 
 
 
 
 
写真2 サメの敏捷性が感じられる海面処理が見事だ
 
 
 
 
 
 
 
写真3 (上)大型水槽を使った撮影現場。船は一部しか作られていない。
(下)そこで使われたメガロドンの模型。後処理ですべてCGに置き換える。
 
 
  ■ 海中での描写はもっと素晴らしい。サメの質感,深海だと感じさせるVFX処理もかなり上質だ(写真4)。J・ステイサムの海中でのアクションシーンもしかりである。本当に水中で撮影したのか,普通のスタジオで撮影し,CGの海を重畳するVFX処理で海中に見せているだけなのか,全く区別かつかない。プレビズの威力が感じられるシーンの連続で,その点では立派にA級だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 こうやって見ると巨大さが実感できる。質感表現も素晴らしい。
 
 
  ■ VFX演出の上手さを感じたのは,海水浴場にメガロドンが出現する場面である(写真5)。海水用客の巨大鮫が静かに移動する様を上空から描いている。多分,ドローンを駆使した上空からの実写と,鮫の上部にはデジタル製の海水浴客を配して合成しただけだろうが,一瞬,どうやって撮ったのだろうかと思わせる見事なシーンだ。CG/VFXの主担当はScanline VFXで,他に Double Negative, SOHO VFX,Image Engine, Umediaが参加している。3D変換処理は,最近受注作品が増しているLegend 3D社が担当している。  
 
 
 
 
 
 
写真5 海水浴客の下を泳ぐ巨大鮫。大半がカラフルな浮輪を使っているのが演出くさいが…。
(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
 
 
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